核心解説
この問題は、各内分泌器官とそれらが分泌するホルモンの正しい組み合わせを問う、解剖学・生理学の基礎知識を確認するものです。看護師国家試験では、ホルモンの作用だけでなく、分泌異常による疾患(例:甲状腺機能亢進症、糖尿病、クッシング症候群など)と関連づけて出題されることが非常に多いため、しっかりと整理しておきましょう。
核心概念の分析 (Key Concept)
この問題の鍵は、各器官のどの細胞からどのホルモンが分泌されるかを正確に把握することです。特に、
混同注意!「皮質 vs 髄質」「前葉 vs 後葉」「β細胞 vs α細胞」といった、同じ器官内の異なる部位からの分泌ホルモンの違いが頻出ポイントです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢④の「甲状腺 - カルシトニン」が正解です。
最重要!甲状腺 (Thyroid Gland) は、濾胞細胞から
甲状腺ホルモン (T3・T4) を分泌するだけでなく、濾胞の間にある
傍濾胞細胞 (C細胞: Parafollicular Cells / C Cells) から
カルシトニン (Calcitonin) を分泌します。カルシトニンは血中カルシウム濃度を低下させる作用を持ち、骨吸収を抑制します。この組み合わせは正しいため、正解となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①
混同注意! 副腎髄質 - コルチゾール → 間違い。副腎髄質 (Adrenal Medulla) からは
アドレナリン (Epinephrine / Adrenaline) と
ノルアドレナリン (Norepinephrine / Noradrenaline) が分泌されます。
コルチゾール (Cortisol) は副腎皮質 (Adrenal Cortex) の束状帯から分泌されます。
②
混同注意! 下垂体後葉 - 成長ホルモン → 間違い。
成長ホルモン (Growth Hormone / GH) は下垂体前葉 (Anterior Pituitary) から分泌されます。下垂体後葉 (Posterior Pituitary) は、視床下部で産生された
バソプレシン (抗利尿ホルモン / ADH) と
オキシトシン (Oxytocin) を貯蔵・放出する器官です。
③
混同注意! 膵臓ランゲルハンス島β細胞 - グルカゴン → 間違い。膵臓ランゲルハンス島の
β細胞 (Beta Cells) からは
インスリン (Insulin) が分泌されます。一方、
グルカゴン (Glucagon) は
α細胞 (Alpha Cells) から分泌されます。
⑤
混同注意! 副腎皮質 - アドレナリン → 間違い。副腎皮質 (Adrenal Cortex) からは、
鉱質コルチコイド (アルドステロン)、
糖質コルチコイド (コルチゾール)、
副腎アンドロゲン の3種類のステロイドホルモンが分泌されます。
アドレナリン は副腎髄質から分泌されます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ホルモンの分泌部位と作用はセットで覚えることが重要です。例えば、カルシトニンは血中Ca²⁺を低下させますが、その作用は
副甲状腺ホルモン (PTH: Parathyroid Hormone) とは拮抗的です。PTHは血中Ca²⁺を上昇させるため、この2つのホルモンのバランスによってカルシウム恒常性が維持されています。
概念整理:
| 器官 | 部位/細胞 | 分泌ホルモン |
|---|
| 副腎 | 皮質 | アルドステロン、コルチゾール、副腎アンドロゲン |
| 副腎 | 髄質 | アドレナリン、ノルアドレナリン |
| 下垂体 | 前葉 | GH、ACTH、TSH、FSH、LH、プロラクチン、MSH |
| 下垂体 | 後葉 | バソプレシン(ADH)、オキシトシン |
| 膵臓 | ランゲルハンス島β細胞 | インスリン |
| 膵臓 | ランゲルハンス島α細胞 | グルカゴン |
| 甲状腺 | 濾胞細胞 | T3、T4 |
| 甲状腺 | 傍濾胞細胞(C細胞) | カルシトニン |
一目で比較!:
混同注意! 甲状腺 (カルシトニン) と副甲状腺 (PTH) はCa代謝で拮抗する。
看護過程ポイント: ホルモン分泌異常の患者をアセスメントする際は、まずどのホルモンの過剰/不足かを捉え、それに伴う全身の徴候(バイタルサイン、体液量、意識レベル、代謝状態など)を系統的に観察することが重要です。
暗記のコツ: 「皮質はステロイド、髄質はカテコールアミン」と覚えましょう。また、下垂体後葉は「お預かりホルモン(ADHとオキシトシン)」とイメージすると記憶に残りやすいです。
国試頻出ポイント: ホルモンと分泌器官の組み合わせは、ほぼ毎年1~2問出題される必須知識です。特に、副腎皮質/髄質、下垂体前葉/後葉の対比は頻出です。
出題パターン注意!: 単純な組み合わせ問題から、「クッシング症候群の患者で高値となるホルモンはどれか」といった病態と結びつけた問題や、「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)で分泌過剰となるホルモンはどれか」という臨床状況設定問題に発展します。