核心解説
この問題は、生体の恒常性 (Homeostasis) 維持における重要な調節機構である
ネガティブフィードバック (Negative Feedback)と
ポジティブフィードバック (Positive Feedback)の違いを正しく理解しているかを問うものです。ネガティブフィードバックは、ある物質の濃度や作用が上昇したときに、その上昇を打ち消す方向に調節が働く仕組みです。一方、ポジティブフィードバックは、ある変化がさらに同じ方向への変化を促進する、いわゆる「雪だるま式」の調節機構です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、
ネガティブフィードバック (Negative Feedback)の定義と、その代表的な例を、ホルモンの調節機構(視床下部-下垂体-標的器官系)から選択できるかどうかです。特に、標的ホルモンが上昇した際に、上位中枢(視床下部や下垂体)の分泌を抑制するのがネガティブフィードバックです。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): ③番の「血中コルチゾール濃度上昇が視床下部からの
CRH (副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン) 分泌を抑制する」は、まさにネガティブフィードバックの典型例です。ストレスなどで副腎皮質から
コルチゾール (Cortisol)が過剰に分泌されると、その過剰を感知した視床下部がCRHの分泌を抑制し、結果的に副腎皮質からのコルチゾール分泌が低下します。これにより、血中コルチゾール濃度が一定に保たれます。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①「乳汁分泌刺激がプロラクチン分泌を促進し、さらに乳汁分泌が促進される」: これは
ポジティブフィードバックの例です。乳児の吸啜刺激がプロラクチン分泌を促し、さらに乳汁産生が増えるという、変化を増幅させる方向に働いています。
- ②「分娩時のオキシトシン分泌増加が子宮収縮を促進し、さらにオキシトシン分泌が増加する」: これも
ポジティブフィードバックの代表例です。子宮収縮が強まると、それが刺激となってさらにオキシトシン分泌が促進され、収縮がより強くなります。分娩の進行に必須の機構です。
- ④「甲状腺ホルモン低下が
TSH (甲状腺刺激ホルモン) 分泌を抑制する」: これは、標的ホルモン(甲状腺ホルモン)が低下している時に、それを促進するはずのTSHが抑制されるという
混同注意!逆の関係になっています。正しくは「甲状腺ホルモン上昇がTSH分泌を抑制する」がネガティブフィードバックです。
- ⑤「排卵前のエストロゲン上昇が
LH (黄体形成ホルモン) サージを誘発する」: これも
ポジティブフィードバックの例です。成熟した卵胞から分泌されるエストロゲンが高濃度になると、それが引き金となりLHが急激に大量放出(LHサージ)され、排卵が誘発されます。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): ネガティブフィードバックとポジティブフィードバックは、生体の調節機構の両輪です。恒常性維持にはネガティブフィードバックが主に関与し、ポジティブフィードバックは分娩や血液凝固、活動電位の発生など、一過性かつ決定的なイベントを完了させるために用いられます。また、ネガティブフィードバックには「長 loop フィードバック(標的ホルモン→上位中枢)」「短 loop フィードバック(下垂体ホルモン→視床下部)」「超短 loop フィードバック(自己調節)」の3種類があることも押さえておきましょう。
概念整理
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ネガティブフィードバック (Negative Feedback): 変化を打ち消す方向に働く調節。恒常性維持の基本。例:コルチゾール↑ → CRH↓、体温上昇 → 発汗・血管拡張。
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ポジティブフィードバック (Positive Feedback): 変化を増幅する方向に働く調節。一過性のイベント完了に必要。例:分娩時のオキシトシン分泌、排卵前のLHサージ、血液凝固カスケード。
一目で比較!
| 項目 | ネガティブフィードバック | ポジティブフィードバック |
|---|
| 方向性 | 変化を打ち消す(抑制) | 変化を増幅する(促進) |
| 目的 | 恒常性維持 (Homeostasis) | 生理的イベント完了 |
| 代表的ホルモン | コルチゾール、甲状腺ホルモン、性ホルモン(基礎分泌) | オキシトシン、LH(サージ)、エストロゲン(排卵前) |
看護過程ポイント
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アセスメント (Assessment): ホルモン補充療法中の患者では、外因性ホルモンによるネガティブフィードバックで内因性分泌が抑制される「薬剤性副腎不全」や「続発性甲状腺機能低下症」などのリスクをアセスメントする必要があります。
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看護診断 (Nursing Diagnosis): ホルモン調節異常に関連する「非効果的健康維持」「危険性のある体液量不足(ADH異常分泌時)」などが考えられます。
国試頻出ポイント
ネガティブフィードバックは、視床下部-下垂体-標的器官の軸(HPA軸、HPT軸、HPG軸)とセットで出題されることが非常に多いです。「コルチゾール上昇 → CRH・ACTH低下」「甲状腺ホルモン上昇 → TRH・TSH低下」のように、どこで抑制がかかるかを正確に覚えておきましょう。また、ネガティブフィードバックの破綻がクッシング症候群やアジソン病などの内分泌疾患の病態理解の鍵となります。
暗記のコツ
「ネガティブ = 否定 = ブレーキ」とイメージしましょう。エアコンの温度設定のように「設定温度より高くなったら冷やす、低くなったら温める」という仕組みです。ポジティブは「アクセル全開!」で、分娩が始まったらどんどん収縮が強まるイメージを持つと覚えやすいです。