核心解説
この問題は、
内分泌系 (Endocrine System) におけるホルモン分泌の日内変動(サーカディアンリズム)に関する知識を問うものです。日内変動とは、約24時間周期で生体内で繰り返される生理的変動のことで、視交叉上核 (Suprachiasmatic Nucleus, SCN) に存在する体内時計によって制御されています。各ホルモンの分泌パターンを理解することが、正解を導く鍵となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): この問題の核心は、「
副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) と
コルチゾール (Cortisol) の分泌に最も顕著な日内変動が認められる」という点です。ACTHとコルチゾールは、覚醒・活動に向けて体内を準備するため、朝方(6~8時頃)に分泌がピークに達し、夜間(0~2時頃)に最低値となる明確なリズムを持ちます。これは「
視床下部-下垂体-副腎皮質系 (Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis, HPA axis)」の活動リズムを反映しています。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢3「
副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) とコルチゾール」が正解です。
最重要! この2つのホルモンは、日内変動の典型例として看護師国家試験でも頻出です。ACTHの変動に約5~10分遅れてコルチゾールの分泌が変動するため、両者はほぼ同様のパターンを示します。このリズムは、ステロイド療法の際に副作用を軽減するための「朝1回投与」という投与方法の根拠にもなっています。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
-
① 成長ホルモン (GH):
混同注意! 成長ホルモンは、主に深い睡眠(ノンレム睡眠、特に徐波睡眠)の開始時に分泌が促進されるという特徴を持ちます。日内変動はありますが、ACTH/コルチゾールほどの規則正しいリズムではなく、睡眠のタイミングに大きく依存します。
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② 甲状腺刺激ホルモン (TSH): TSHは日内変動を示しますが、その振幅はACTH/コルチゾールに比べて小さく、ピークは夜間~深夜(22時~2時頃)に認められます。よって、「最も顕著」とまでは言えません。
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④ プロラクチン (Prolactin): プロラクチンは、睡眠中に分泌が亢進し、起床時に低下するという日内変動を持ちますが、ACTH/コルチゾールほどの顕著な振幅ではありません。また、ストレスや授乳による影響も強く受けます。
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⑤ インスリン (Insulin): インスリンの分泌は、食事(特に糖質摂取)による血糖値の上昇に応じて変動するため、日内変動というよりは「食事誘発性の変動」が主体です。空腹時には基底分泌が維持されます。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 日内変動と混同しやすい概念として、
睡眠時分泌 (Sleep-related secretion) があります。成長ホルモンやプロラクチンは睡眠の影響を強く受けますが、ACTH/コルチゾールは体内時計の支配を強く受け、睡眠とはある程度独立したリズムを示します。また、コルチゾールの日内変動の消失は、
クッシング症候群 (Cushing's Syndrome) や
副腎不全 (Adrenal Insufficiency) の診断に利用される重要な検査所見です。
概念整理: 日内変動(サーカディアンリズム)が顕著なホルモンはACTHとコルチゾール。朝にピーク、夜間に最低値。ステロイド療法の投与タイミング(朝1回)の根拠となる。
一目で比較!:
| ホルモン | 分泌パターン | 主な調節因子 |
| ACTH / コルチゾール | 朝ピーク、夜間最低値(顕著な日内変動) | 体内時計(視交叉上核) |
| 成長ホルモン | 睡眠開始時に分泌亢進 | 睡眠(徐波睡眠) |
| TSH | 夜間~深夜にピーク | 体内時計、負のフィードバック |
| プロラクチン | 睡眠中に分泌亢進 | 睡眠、ストレス |
| インスリン | 食後に分泌亢進 | 血糖値 |
看護過程ポイント:
アセスメント:副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロンなど)を内服中の患者では、コルチゾールの日内変動が抑制され、副作用(感染症リスク増大、高血糖、骨粗鬆症など)が出現しやすい。投与時刻と患者の状態(発熱、血糖値、血圧)を関連付けて観察する。
看護介入:医師の指示に基づき、ステロイドは朝食後1回投与が原則。急な中止は避け、漸減する必要性を患者に説明する。
暗記のコツ: 「朝(AM)に活動するため、ACTHとコルチゾールは朝(AM)にピーク!」と覚えましょう。「A (ACTH) と C (Cortisol) は、朝 (Asa / Morning) に高い」と語呂合わせも有効です。
国試頻出ポイント: 日内変動を示すホルモンは毎年のように出題されます。特にACTHとコルチゾールは必須。また、選択肢にある他のホルモンの分泌パターン(睡眠時分泌、食事誘発性分泌)と混同しないように、比較整理して覚えましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「クッシング症候群の患者の看護」や「長期ステロイド療法中の患者の看護」といった状況設定問題の中で、コルチゾールの日内変動を踏まえた観察項目(例えば、深夜の不眠や易感染性)を問う形式で出題されることがあります。