核心解説
この問題は、生体のストレス応答における重要な内分泌経路である
視床下部-下垂体-副腎皮質系 (HPA axis: Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis)の最終産物を問うています。ストレス刺激が加わると、まず視床下部 (Hypothalamus) から
副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH: Corticotropin-Releasing Hormone)が分泌され、これが下垂体前葉を刺激して
副腎皮質刺激ホルモン (ACTH: Adrenocorticotropic Hormone)を放出させます。ACTHは血流に乗って副腎皮質に作用し、最終的に
コルチゾール (Cortisol)の分泌を促進します。コルチゾールは糖質コルチコイドの一種で、血糖上昇、抗炎症作用、免疫抑制など、生体がストレスに適応するための重要な働きを担います。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! HPA系の最終段階で分泌されるホルモンは
コルチゾール (Cortisol)です。ストレスに適応するため、生体はこの経路を活性化させ、エネルギー代謝を亢進します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
1. ノルアドレナリン (Noradrenaline/Norepinephrine):
混同注意! これは主に
交感神経終末から放出される神経伝達物質であり、HPA系ではなく、
交感神経-副腎髄質系 (SAM系)に属します。急性ストレス反応(闘争か逃走反応)に関与します。
3. バソプレシン (ADH: Antidiuretic Hormone): これは視床下部で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンです。HPA系(下垂体前葉経由)とは異なり、主に水分代謝と血圧調節に関わります。CRHと協調してACTH分泌を促進する作用もありますが、HPA系の主要経路の最終産物ではありません。
4. アドレナリン (Adrenaline/Epinephrine):
混同注意! ノルアドレナリンと同様に、副腎髄質から分泌されるカテコールアミンで、
SAM系の最終産物です。HPA系とは別のストレス応答経路です。
5. アルドステロン (Aldosterone): これは副腎皮質から分泌されるホルモンですが、
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 (RAAS: Renin-Angiotensin-Aldosterone System)の一部であり、主に電解質と血圧の調節に関与します。HPA系の最終産物ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
ストレス応答には大きく2つの経路があります。
1.
HPA系 (視床下部-下垂体-副腎皮質系): 反応は遅いが持続的で、コルチゾールを分泌。長期的ストレスや慢性的適応に関与。
2.
SAM系 (交感神経-副腎髄質系): 反応は迅速で短時間。アドレナリンとノルアドレナリンを分泌し、急性ストレス(闘争か逃走反応)に関与。
概念整理: HPA系の流れ: ストレス → 視床下部 (CRH) → 下垂体前葉 (ACTH) → 副腎皮質 (コルチゾール)。最終ホルモンは
コルチゾールです。
一目で比較!:
| 経路 | 主なホルモン | 分泌部位 | 反応速度 |
|---|
| HPA系 | コルチゾール | 副腎皮質 | 遅い (持続的) |
| SAM系 | アドレナリン / ノルアドレナリン | 副腎髄質 / 交感神経終末 | 速い (一過性) |
看護過程ポイント: ストレス反応の評価では、患者のバイタルサイン(心拍数、血圧上昇: SAM系)、血糖値上昇や免疫能低下(コルチゾール: HPA系)の両方を観察することが重要です。長期的なストレスによるクッシング症候群(コルチゾール過剰)や副腎不全(コルチゾール低下)のリスクも考慮します。
暗記のコツ: 「HPA = Head (視床下部) → Pituitary (下垂体) → Adrenal (副腎)」と覚え、「最終的には『皮質』から『コルチゾール』!」と唱えましょう。「コルチゾール」と「副腎皮質」で「コル(コルチゾール)とヒ(皮質)はお友達」とイメージすると忘れにくいです。
国試頻出ポイント: HPA系とSAM系の比較は毎年のように出題されます。特に「どちらの経路か」「最終ホルモンは何か」を正しく区別できるようにしておきましょう。また、ステロイド薬(コルチゾール類似薬)の副作用と看護(感染リスク、血糖上昇)も頻出です。
出題パターン注意!: 単純なホルモン名を問う問題から、「ストレス下の患者の血糖値が上昇した理由を問う」ような応用問題に発展します。HPA系の活性化が糖新生を促進するという病態生理まで理解しておくことが重要です。