核心解説
この問題は、
甲状腺ホルモン (Thyroid Hormone, T3/T4) の分泌調節における
視床下部-下垂体-甲状腺軸 (Hypothalamic-Pituitary-Thyroid Axis, HPT Axis) の基本を問うています。視床下部は上位中枢として、末梢ホルモンの血中濃度を感知し、放出ホルモン (Releasing Hormones) を分泌して下垂体前葉を制御します。甲状腺ホルモンの分泌を促すための視床下部ホルモンは、
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH: Thyrotropin-Releasing Hormone) です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! TRH は視床下部で産生され、下垂体前葉の甲状腺刺激細胞に作用し、
甲状腺刺激ホルモン (TSH: Thyroid-Stimulating Hormone) の分泌を促進します。TSH は血中を循環し、甲状腺に到達して T3(トリヨードサイロニン)と T4(サイロキシン)の合成・分泌を促します。この一連の流れが陰性フィードバック調節を受けていることが、内分泌看護の基礎となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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① GHRH (成長ホルモン放出ホルモン): 混同注意! 視床下部から分泌されますが、標的は下垂体前葉の成長ホルモン分泌細胞です。成長ホルモン (GH) の分泌を促進し、主に骨や軟骨の成長、タンパク質合成を調節します。
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② CRH (副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン): 混同注意! ストレス応答に関わるホルモンで、下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) の分泌を促します。ACTH は副腎皮質に作用し、コルチゾールなどの副腎皮質ホルモンを分泌させます。
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③ PRH (プロラクチン放出ホルモン): 視床下部のホルモンとして存在しますが、プロラクチンの分泌調節は主に
ドパミン (PIF: Prolactin-Inhibiting Factor) による抑制性制御が主体です。PRH の実体は未だ議論がありますが、乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンとは無関係です。
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④ GnRH (性腺刺激ホルモン放出ホルモン): 視床下部から分泌され、下垂体前葉から黄体形成ホルモン (LH) と卵胞刺激ホルモン (FSH) の分泌を促進します。性腺(卵巣・精巣)の機能調節に必須です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
最重要! 甲状腺ホルモンの分泌調節は、
陰性フィードバック機構 (Negative Feedback) によって厳密に制御されています。血中の T3/T4 濃度が上昇すると、下垂体前葉での TSH 分泌が抑制され、同時に視床下部での TRH 分泌も抑制されます。これによりホルモン濃度が一定に保たれます。逆に、T3/T4 が低下すると、TRH と TSH の分泌が亢進します。この調節機構の破綻が、
甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism) や
甲状腺機能低下症 (Hypothyroidism) の病態となります。
概念整理
| ホルモン | 分泌部位 | 標的臓器 | 主な作用 |
| TRH | 視床下部 | 下垂体前葉 | TSH 分泌促進 |
| TSH | 下垂体前葉 | 甲状腺 | T3/T4 合成・分泌促進 |
| T3/T4 | 甲状腺 | 全身 | 代謝亢進、成長促進 |
一目で比較!
| 視床下部ホルモン | 下垂体前葉ホルモン | 標的ホルモン |
| TRH | TSH | T3/T4 |
| CRH | ACTH | コルチゾール |
| GnRH | LH / FSH | テストステロン / エストロゲン |
| GHRH | GH | IGF-1 |
暗記のコツ
「
視床下部(TRH)→ 下垂体前葉(TSH)→ 甲状腺(T3/T4)」の順番を、
「トリ(TRH)・ツー(TSH)・スリー(T3/T4)」の語呂合わせで覚えましょう!また、放出ホルモンには全て「R (Releasing Hormone)」がつくこと、そして標的ホルモンが何かをイメージしながら覚えると整理しやすいです。
国試頻出ポイント
このテーマは、
内分泌系 (Endocrine System) の基礎として毎年のように出題されます。特に、
「どのホルモンがどの臓器から分泌され、何を調節するか」という単純な組み合わせ問題や、
「フィードバック調節の破綻による病態(例:バセドウ病、橋本病)」 と関連付けた応用問題が出題されやすいです。
出題パターン注意!
例えば、
「甲状腺機能低下症の患者に、TRH負荷試験を行ったところ、TSHの反応が過剰に上昇した。この場合、病変部位はどこか?」 というように、病態生理を応用した問題に発展することがあります。TRH負荷試験では、
混同注意! 病変が視床下部にある場合は TSH は正常~低反応、下垂体にある場合は TSH は低反応、甲状腺にある場合は TSH は過剰反応となります。