ポジティブフィードバックによるホルモン分泌調節の代表的な例はどれか。 | MyMerci
内分泌系
問題

ポジティブフィードバックによるホルモン分泌調節の代表的な例はどれか。

解説
排卵前期にエストロゲン濃度が一定以上に上昇すると、視床下部-下垂体に促進的に作用し LH の急激な分泌 (LHサージ) を引き起こす。これはポジティブフィードバックの代表例である。1, 2, 4, 5 はすべてネガティブフィードバックの例である。

詳細解説

核心解説 この問題は、ホルモン分泌調節 (Hormonal Regulation) における フィードバック機構 (Feedback Mechanism) の理解を問うています。ホルモンの分泌調節には主に2つの様式があります。一つは、標的ホルモンの濃度が上昇するとその分泌を抑制する ネガティブフィードバック (Negative Feedback)、もう一つは、あるホルモンの分泌がさらにそのホルモンの分泌を促進する ポジティブフィードバック (Positive Feedback) です。大部分のホルモン調節はネガティブフィードバックで行われますが、ポジティブフィードバックは非常に限られた生理現象で見られます。

核心概念の分析 (Key Concept)
この問題の核心は、ポジティブフィードバックの代表例を正しく理解しているかどうかです。ポジティブフィードバックは、あるホルモンの分泌がさらにそのホルモンの分泌を促進する「促進の連鎖」を作り出し、急激なピークを形成するのに適しています。この代表例が、排卵前期の エストロゲン (Estrogen) による LH (黄体形成ホルモン, Luteinizing Hormone) の急激な分泌促進、すなわち LHサージ (LH Surge) です。

正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は ⑤ エストロゲンによる LH 分泌促進 (LHサージ) です。
排卵前期に、卵胞から分泌されるエストロゲン濃度が一定の閾値を超えると、それまでネガティブフィードバックで抑制していた視床下部-下垂体系に対して、逆に促進的に作用します。これにより、GnRH (性腺刺激ホルモン放出ホルモン) の分泌が増加し、結果として LH が急激に大量分泌されます。この現象を LHサージ (LH Surge) と呼び、排卵を誘発する重要なシグナルとなります。これはポジティブフィードバックの代表的な生理学的例です。

誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 選択肢①~④はすべて ネガティブフィードバック の例です。
  • ① カルシトニンによる PTH 分泌抑制: 血中カルシウム濃度が上昇すると、甲状腺傍濾胞細胞から カルシトニン (Calcitonin) が分泌され、骨吸収を抑制して血中カルシウムを低下させます。同時に、副甲状腺からの PTH (副甲状腺ホルモン) 分泌も抑制されます。これはネガティブフィードバックです。
  • ② 成長ホルモンによる GHRH 分泌抑制: 成長ホルモン (GH) が血中に増加すると、視床下部からの GHRH (成長ホルモン放出ホルモン) の分泌が抑制されます。これはネガティブフィードバックです。
  • ③ インスリンによるグルカゴン分泌抑制: 食後など血糖値が上昇すると、膵臓β細胞から インスリン (Insulin) が分泌されます。インスリンは血糖値を低下させる作用があり、同時に膵臓α細胞からの グルカゴン (Glucagon) 分泌を抑制します。これは血糖値の恒常性を保つためのネガティブフィードバックの一部です。
  • ④ 甲状腺ホルモンによる TSH 分泌抑制: 血中の 甲状腺ホルモン (T3/T4) 濃度が上昇すると、下垂体からの TSH (甲状腺刺激ホルモン) 分泌が抑制されます。これは最も典型的なネガティブフィードバックの例です。

関連概念の整理 (Related Concepts)
ポジティブフィードバックはホルモン調節以外にも見られます。例えば、分娩時の オキシトシン (Oxytocin) による子宮収縮の促進、また病態生理学的には、血液凝固カスケードや、神経系での活動電位の発生(脱分極によるNa+チャネルの開口)などもポジティブフィードバックの例です。一方、ネガティブフィードバックは体温調節、血糖調節、血圧調節など、生体の恒常性 (Homeostasis) を維持するための基本的な仕組みです。

概念整理
項目ポジティブフィードバックネガティブフィードバック
定義出力(結果)が入力をさらに促進する出力(結果)が入力を抑制する
目的急激な変化・ピークを作り出す恒常性(一定範囲内)を維持する
生体内での頻度稀(限定的)非常に多い(大部分)
代表例LHサージ (排卵)、分娩 (オキシトシン)TSH-T3/T4 系、血糖調節、体温調節

一目で比較!
この問題では、①~④がネガティブフィードバック、⑤のみがポジティブフィードバックです。覚え方としては、「ほとんどのホルモン調節はネガティブフィードバック。例外は排卵と分娩(オキシトシン)」と覚えましょう。

暗記のコツ
ポジ(Positive)はプラス(促進)方向」「ネガ(Negative)はマイナス(抑制)方向」とイメージしましょう。ポジティブフィードバックの代表例であるLHサージは、「L(卵胞ホルモン=エストロゲン)がピークになると、H(LH)がサージ(急上昇)する」と覚えてください。

国試頻出ポイント
看護師国家試験では、この問題のように「ポジティブフィードバックの例はどれか」という直接的な知識問題が出題されます。また、母性看護学の分娩期の看護でオキシトシンの分泌機序を問う問題や、女性生殖器の機能(月経周期とホルモン変動)と関連付けた問題として出題されることもあります。選択肢に「LHサージ」と出たら、迷わずポジティブフィードバックと判断できるようにしておきましょう。

出題パターン注意!
単純な知識問題として出題される場合と、事例問題で「この患者さんのホルモン分泌はどのフィードバック機構で調節されているか」という形で応用力を問われる場合があります。特に、不妊治療で使用する hMG/hCG 製剤とLHサージの関係など、臨床応用に発展する問題も想定しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド
このフィードバック機構の知識は、特に 産婦人科内分泌内科 の臨床現場で重要です。

臨床シナリオ (Clinical Scenario)
30代女性、不妊治療中の患者さんが、採卵周期に入りました。経腟超音波検査で成熟卵胞が確認され、採血でエストロゲン値が急上昇していることが分かりました。医師から「hCG製剤(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を投与して、排卵を誘発します」と指示が出ました。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
この患者さんへの看護介入を考えてみましょう。
  1. 観察 (Observation): 患者さんに「今回、hCG製剤を投与して排卵を誘発します。これは、本来はエストロゲンがピークに達すると起こるLHサージ(ポジティブフィードバック)を、薬剤で人為的に起こす治療です」と説明します。また、hCG投与後の症状(腹痛、腹部膨満感、吐き気など)の有無を観察します。
  2. アセスメント (Assessment): この治療の背景には、正常な月経周期における エストロゲン のポジティブフィードバックによる LHサージ の知識が必要です。hCGはLHと類似した作用を持つため、LHサージを模倣して排卵を誘発します。看護師は、この薬理作用と病態生理を理解した上で、患者さんに説明できます。
  3. 介入 (Intervention): hCG投与後、約36~40時間後に排卵が起こるため、そのタイミングを考慮した指導(例えば、タイミング法や人工授精の予定)を医師と連携して行います。また、卵巣過剰刺激症候群 (OHSS) のリスクについても観察し、早期発見に努めます。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
この事例では、薬剤の誤投与(特にhCG製剤と他のホルモン剤の取り違え)や、OHSS発症時の急変対応が重要です。特に、OHSSは腹痛、腹部膨満、呼吸困難、乏尿などを呈し、重症化すると血栓症や腎不全を引き起こす可能性があるため、危険所見として早期に医師へ報告する必要があります。

看護プロトコル
【観察項目】hCG投与前後のバイタルサイン、腹部症状(痛み、張り)、体重増加、尿量、呼吸状態。
【報告基準 (SBAR)】Situation: 「hCG投与後○日目の患者さんです」、Background: 「採卵周期中で、本日エストロゲン値が○pg/mLでした」、Assessment: 「強い腹痛と腹部膨満、体重が○kg増加しています。OHSSの可能性を考えます」、Recommendation: 「緊急の医師の診察と、採血(エストロゲン値、凝固系)の指示をお願いします」。

先輩看護師の一言
「内分泌のフィードバック機構は、一見難しく感じるかもしれませんが、臨床では『なぜこのタイミングでこの検査をするのか』『なぜこの薬を使うのか』を理解するための基礎になります。ポジティブフィードバックの例外性を覚えておけば、国試でも実習でも自信を持って答えられますよ。頑張ってください!」

重要概念

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