核心解説
この問題は、
腹膜透析 (Peritoneal Dialysis, PD) を導入中の患者に生じた
腹膜炎 (Peritonitis) の急性期対応を問うています。腹膜炎は
腹膜透析 (PD) の重篤な合併症 (Serious Complication) であり、放置するとカテーテル喪失や敗血症 (Sepsis) に至る可能性があります。患者は排液混濁、腹痛、発熱という
腹膜炎の三大徴候 (Classic Triad of Peritonitis) を示しており、迅速な診断と治療開始が求められます。
最重要! 治療の第一歩は、原因菌を特定し感受性のある抗生剤 (Antibiotics) を選択するための
排液の細菌培養検査 (Bacterial Culture of Effluent) です。培養結果が出るまでの初期治療として、経験的抗生剤 (Empiric Antibiotics) を透析液に混注するのが標準的プロトコルです。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ③番の「排液の細菌培養検査を依頼する」が最も優先されます。腹膜炎が疑われる場合、原因菌(多くは
表皮ブドウ球菌 (Staphylococcus epidermidis) や
黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus)、グラム陰性桿菌)を特定するための培養検査が不可欠です。排液を採取し、細胞数測定(白血球数 >100/μL、好中球優位)も同時に行い、診断を確定します。この検査結果に基づいて適切な抗生剤が選択されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 透析液への抗生剤追加(腹腔内投与)は腹膜炎の主要治療法ですが、培養検査を実施した後の処置です。まず原因菌を特定せずに抗生剤を投与することは、耐性菌 (Drug-Resistant Bacteria) を生むリスクがあり、優先順位として誤りです。
② 緊急血液透析への切り替えは、通常は行われません。腹膜炎の治療は、抗生剤の腹腔内投与を継続しながら腹膜透析を続けることが基本です。血液透析への変更は、腹膜炎が重症化し腹膜機能が著しく低下した場合などに限られます。
④ 鎮痛薬の投与は、腹痛の緩和には有効ですが、診断や治療の根本的な解決にはなりません。鎮痛薬投与により症状がマスクされ、病状の評価が遅れる可能性があるため、優先すべき対応ではありません。
⑤
混同注意! 透析液の注入を中止することは、通常は行いません。腹膜炎治療中も透析は継続し、透析液に抗生剤を混注して腹腔内を洗浄・治療するのが標準です。注入を中止すると、毒素や炎症物質の除去が行われず、状態悪化を招く恐れがあります。
関連概念の整理 (Related Concepts): 腹膜透析 (CAPD/APD) の合併症として、
出口部感染 (Exit-Site Infection) や
トンネル感染 (Tunnel Infection) も重要です。これらは排液混濁を伴わず、出口部の発赤・腫脹・排膿が特徴です。腹膜炎と異なり、局所の消毒や経口抗生剤で対応します。また、排液混濁の原因として、
フィブリン析出 (Fibrin Clot) も鑑別する必要があります(腹痛・発熱を伴わない)。
概念整理: 腹膜透析 (PD) 腹膜炎の病態生理は、カテーテルや透析液操作時の
細菌汚染 (Bacterial Contamination) により腹腔内に炎症が生じることです。排液の混濁は
白血球 (Leukocytes) の浸潤 によるものです。診断は排液の細胞数測定と細菌培養。治療は
経験的抗生剤の腹腔内投与 から開始し、培養結果で感受性抗生剤に変更します。
一目で比較!:
| 項目 | PD腹膜炎 | 出口部感染 | トンネル感染 |
|---|
| 症状 | 発熱、腹痛、排液混濁 | 出口部発赤・腫脹・排膿 | 皮下トンネルに沿った発赤・圧痛 |
| 診断 | 排液培養・細胞数 | 出口部スワブ培養 | 超音波検査 |
| 治療 | 腹腔内抗生剤 | 局所消毒 + 経口抗生剤 | 経口/静注抗生剤、時にカテーテル抜去 |
看護過程ポイント:
アセスメント: 排液の性状(色、混濁度、フィブリンの有無)、バイタルサイン(特に体温、血圧、心拍数)、腹痛の部位・程度・性質、出口部の観察。
看護診断: 感染リスク状態、急性疼痛、知識不足(透析手技の遵守)。
計画・介入: 医師の指示に基づき排液培養検体採取、抗生剤混注透析液の準備と投与、バイタルサインと排液性状の頻回観察、疼痛緩和、患者への病状説明と透析手技の再指導。
評価: 解熱、腹痛消失、排液清澄化、培養陰性化。
暗記のコツ: 「PDのトラブルは、
培養が最優先、中止はしない」と覚えましょう。排液が濁ったら「培養(検査)→抗生剤追加(治療)」の順序です。透析液注入中止は禁忌行動と心得てください。
国試頻出ポイント: PD腹膜炎の三大徴候(排液混濁、腹痛、発熱)と、最初に行うべき看護師の行動(排液培養検査の依頼)は頻出です。抗生剤投与や鎮痛よりも、診断確定のための検査が優先されることを押さえましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「腹膜炎の徴候は?」と問われるだけでなく、事例問題で「発熱と排液混濁がみられた。看護師の最初の対応は?」と発展します。状況設定問題では、培養検査依頼の具体的な手順や医師への報告内容(SBAR)を問われることもあります。