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排泄機能障害のある患者の看護
65歳の女性。直腸癌に対して低位前方切除術と一時的回腸ストーマ造設術が予定されている。手術前日にストーマサイトマーキングを行う際の看護師の対応で適切なのはどれか。
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1
マーキング後は患者に位置を確認させない
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2
手術当日の朝にマーキングを行う
-
3
皮膚のひだやくぼみを避けてマーキングする
✓ 正解
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4
患者が立位の状態でマーキングを行う
-
5
マーキング位置は肋骨のすぐ下とする
解説
ストーマサイトマーキングは、皮膚のひだ、くぼみ、骨の突出部、瘢痕などを避け、平坦で健康な皮膚面に設定する。これにより装具の密着性が高まり、漏れや皮膚トラブルを予防できる。マーキングは患者が座位・立位・臥位の状態で腹部の形状を確認しながら行うことが推奨される。
同じテーマの次の問題70歳の男性。大腸癌による人工肛門(ストーマ)造設術後3日目。ストーマの色が暗紫色で、周囲の皮膚に発赤とびらんが認められる。この患者への看護師の対応として最も適切なのはどれか。この問題が収録された問題集成人看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、ストーマサイトマーキング (Stoma Site Marking) の手順と看護師の役割を問うています。ストーマ造設術において、術前に最適な位置にマーキングすることは、術後の装具装着の適合性向上と皮膚トラブルの予防に直結する極めて重要な看護行為です。正解は③です。
1. 核心概念の分析 (Key Concept): ストーマサイトマーキングは、患者が自力でストーマケアを行えること、装具が確実に密着し漏れないこと、皮膚トラブル(ストーマ周囲皮膚炎 (Peristomal Dermatitis) など)を予防することを目的とします。そのため、平坦で健康な皮膚面を選ぶことが必須です。最重要!皮膚のひだ(皺)、くぼみ(陥凹)、骨の突出部(腸骨稜、肋骨弓)、瘢痕(手術痕)、へそ、ウエストラインは避けるべき部位です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale): ③「皮膚のひだやくぼみを避けてマーキングする」が正解です。これらの部位にストーマが造設されると、装具の密着が不完全になり、便が漏れ出し(漏れの問題)、皮膚が排泄物に曝露されてびらんや潰瘍を形成するリスクが高まります。平坦でなめらかな皮膚を選ぶことが基本原則です。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①マーキング後は患者に位置を確認させない → 誤り。患者自身が自分のストーマの位置を認識し、術後のセルフケアに備えるために、マーキング後は鏡などで位置を確認してもらい、納得してもらうことが重要です。
- ②手術当日の朝にマーキングを行う → 誤り。マーキングは原則として手術前日またはそれ以前(外来受診時など)に行います。手術当日は、患者の緊張や処置前の準備(浣腸、下剤内服など)で腹部の形状が変化している可能性があり、適切な位置の判断が難しくなります。
- ④患者が立位の状態でマーキングを行う → 誤り。マーキングは、患者の座位、立位、臥位の複数の体位で腹部の形状を観察し、どの体位でも皮膚のひだが生じない平坦な部位を選ぶことが推奨されます。立位のみでは不十分です。
- ⑤マーキング位置は肋骨のすぐ下とする → 誤り。肋骨のすぐ下は骨突出部であり、呼吸や体動により装具がずれやすく、患者にも違和感を与えます。ストーマは通常、腹直筋(Rectus Abdominis Muscle)を貫通する位置(臍の高さよりもやや下方)に設定されることが多いです。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts): ストーマサイトマーキングは、WOC(創傷・オストミー・失禁)看護の専門知識を要する手技です。看護師は医師と協働して、患者の体型、生活様式(ベルトの位置、ズボンのウエスト位置など)、手術の種類(下行結腸か回腸かなど)を考慮して最適な位置を決定します。マーキングには油性ペンや専用のマーキングペンを使用し、消えないように保護フィルムで覆うこともあります。
概念整理: ストーマサイトマーキングの目的は、①患者のセルフケア自立支援、②装具の確実な装着と漏れ防止、③皮膚トラブルの予防、の3点。避けるべき部位:皮膚ひだ・くぼみ・骨突出部・瘢痕・へそ・ウエストライン。推奨される部位:腹直筋上で平坦な皮膚、患者が視認しやすい位置。
一目で比較!:
| 項目 | ストーマサイトマーキング | CVポート挿入部位決定 |
| 目的 | 装具適合と皮膚保護 | 長期輸液療法のアクセス確保 |
| 優先されるアセスメント | 皮膚の平坦さ・筋の位置 | 血管の走行・感染リスク・患者の利き手 |
| 患者体位 | 座位・立位・臥位の複数体位 | 主に臥位(鎖骨下静脈アプローチなど) |
看護過程ポイント:
- アセスメント: 腹部全体の視診・触診。皮膚性状(発赤、湿疹、瘢痕の有無)、腹部膨満の程度、腹直筋の触知、患者の体型と生活様式の聴取。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「スキン・インテグリティ障害(皮膚統合性障害)リスク状態」「セルフケア不足(更衣・トイレ動作)リスク状態」「知識不足(ストーマケア技術)」
- 計画・実施: 術前日までに患者・家族とともに最適位置を決定。マーキング後はその部位を清潔に保ち、消さないよう指導。術後は実際に装具を装着し、漏れや皮膚の状態を評価。
- 評価: 術後、マーキングした位置にストーマが造設され、装具が適合しているか、皮膚トラブルがないかを確認。
暗記のコツ: 「ひだ・くぼみ・骨・瘢痕(キズアト)は避けるべし!」と唱えましょう。「平らでツルツルな場所に付ける」が基本です。さらに「腹直筋の上(お腹の筋肉の上)がベスト」も合わせて覚えましょう。
国試頻出ポイント: ストーマサイトマーキングの禁忌部位(皮膚のひだ、瘢痕、骨突出部)は毎年と言って良いほど頻出です。また、マーキングのタイミングは「手術前日」であること、患者にも確認してもらうこと、の2点も合わせて押さえておきましょう。状況設定問題では、ストーマ周囲皮膚炎の原因として、マーキング位置の不良が問われることがあります。
臨床実践ガイド- 臨床シナリオ (Clinical Scenario)あなたは消化器外科病棟の看護師。65歳女性、直腸癌で低位前方切除術と一時的回腸ストーマ造設術が予定されています。術前日、ストーマサイトマーキングを行います。患者さんは「ストーマの場所はどこになるんですか?自分で見えるところがいいです。でも、ズボンのベルトの位置だと邪魔になりませんか?」と質問しました。
- 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
- 1観察・聴取まず患者を座位で腹部を露出してもらい、皮膚の状態(ひだ、瘢痕の有無)を観察。次に立位になってもらい、ウエストライン(ズボンのベルトが当たる位置)を確認。最後に臥位で腹直筋を触知。
- 2アセスメント患者の希望(見える位置)と身体的条件(腹直筋上、平坦な皮膚)を総合的に判断。ベルトの位置は避けつつ、患者が容易に視認できる右下腹部(回腸ストーマの標準位置)が適切と判断。
- 3報告・連携決定した位置を医師に報告し、マーキングの承諾を得る。
- 4介入油性マーカーで患者が鏡で見やすいように印を付け、「ここがストーマになる予定の場所です。手術の後は、ここに袋(装具)を貼ります。自分で見てケアができますね」と説明。患者に確認してもらう。
- 5評価患者が納得し、「よく見えます。ここなら自分でお手入れできそうです」と発言。マーキングが消えないよう保護フィルムを貼付。
- 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)最重要!マーキング後の入浴は、マーキングが消える可能性があるため、手術当日まで避けるか、防水フィルムで保護するよう指導します。また、患者が自分でマーキングを触って消してしまわないよう、注意を促します。
看護プロトコル: マーキングに使用するペンは、手術時の消毒で消えない油性ペン(皮膚用マーカー)を使用。マーキング位置はカルテに記録し、術前に医師とダブルチェック。
先輩看護師の一言: 「マーキングは、患者さんが術後初めてストーマを目にする瞬間の位置を決める、とても責任のある大切な看護技術です。『なぜこの場所がベストなのか』を患者さんに説明できるように、解剖や装具の知識をしっかり身につけましょう!患者さんの生活スタイルまで考慮した『個別性のあるマーキング』が、術後のQOL向上に直結しますよ!」
- ストーマサイトマーキング — 人工肛門または人工膀胱の造設予定部位を、術前に皮膚にマーキングすること。装具適合性の向上と皮膚トラブル予防を目的とする。
- 腹直筋 (Rectus Abdominis Muscle) — 腹部前面を縦に走る筋。ストーマはこの筋を貫通する位置に造設することで、腹圧時(咳嗽、怒責)のストーマ脱出や傍ストーマヘルニアの予防になる。
- ストーマ周囲皮膚炎 (Peristomal Dermatitis) — ストーマ周囲の皮膚に生じる炎症。便や尿の漏れ、装具の刺激、アレルギーなどが原因。マーキング不良はその主要な原因の一つ。
- 装具 (Pouch / Appliance) — ストーマに装着する袋(パウチ)と皮膚に貼る面板(フランジ)の総称。皮膚面への密着性が重要。
- 低位前方切除術 (Low Anterior Resection, LAR) — 直腸癌に対する手術で、肛門を温存し直腸を切除する術式。吻合部を保護する目的で一時的回腸ストーマを造設することが多い。
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