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排泄機能障害のある患者の看護
80歳の男性。前立腺肥大症に対し経尿道的前立腺切除術(TURP)後、3wayフォーリーカテーテルが留置され、持続膀胱洗浄が行われている。洗浄液の色が鮮紅色から変化せず、凝血塊が認められる。看護師の対応として適切なのはどれか。
-
1
カテーテルのバルーンを増量する
-
2
カテーテルを生理食塩液で用手洗浄する
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3
カテーテルを抜去する
-
4
患者に安静臥床を指示する
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5
洗浄液の注入速度を速める
✓ 正解
解説
TURP術後は、持続膀胱洗浄で膀胱内の凝血塊を洗い流し、カテーテルの閉塞を予防する。洗浄液が持続して鮮紅色で凝血塊がある場合、洗浄液の注入速度を速めて洗浄効果を高める。用手洗浄は医師の指示が必要であり、カテーテル抜去は禁忌である。
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核心解説
この問題は、経尿道的前立腺切除術 (Transurethral Resection of the Prostate, TURP) 術後の出血管理と 持続膀胱洗浄 (Continuous Bladder Irrigation, CBI) の看護を問うています。TURPでは切除した前立腺組織の静脈洞が開放するため、術後は持続的に出血が起こります。この出血を洗い流し、凝血塊によるカテーテル閉塞を予防するためにCBIが行われます。洗浄液が持続的に 鮮紅色 (Bright Red) で凝血塊が認められる 状態は、出血量が洗浄能力を上回っていることを示しており、閉塞リスクが高いとアセスメントします。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 洗浄液が鮮紅色で凝血塊が認められる場合、まず行うべき対応は 洗浄液の注入速度を速める ことです。これにより、膀胱内の血液と凝血塊をより効果的に洗い流し、カテーテルの閉塞を予防します。閉塞が生じると膀胱内に血液が貯留し、膀胱タンポナーデ (Bladder Tamponade) という重篤な状態を引き起こす可能性があります。洗浄速度の増加は、医師の指示の範囲内(多くの場合、術後指示で「出血時は増量可」と規定されている)で看護師が判断・実施できる対応です。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
- ① カテーテルのバルーンを増量する: バルーンはカテーテルの留置と止血のために用いられますが、術後出血に対してバルーンを増量することは医師の判断が必要であり、かつ膀胱頸部を圧迫して止血を図る目的で行われます。洗浄液の色が鮮紅色であることへの第一選択の対応ではありません。
- ② カテーテルを生理食塩液で用手洗浄する: 用手洗浄 (Manual Irrigation) はカテーテルが凝血塊で閉塞した場合に、医師の指示のもとで行う処置です。洗浄液の色が鮮紅色であるだけで、まだカテーテルの排液が確保されている状態では、まずは注入速度の調整を試みます。用手洗浄は閉塞時に行う手技です。
- ③ カテーテルを抜去する: カテーテル抜去は絶対に禁忌 です。カテーテルは止血と排液のルートを確保しており、抜去すると出血をコントロールできず、膀胱内に血液が充満し、緊急手術が必要になる可能性があります。
- ④ 患者に安静臥床を指示する: 安静臥床は出血を促進する要因(体動、怒責など)を避けるために重要ですが、活動性出血が持続している状態では、安静のみでは止血効果は不十分です。洗浄速度の調整と併用する必要があります。単独の対応としては適切ではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts):
TURP術後は、術後出血の評価(洗浄液の色調、凝血塊の有無)、カテーテル閉塞の予防と早期発見、膀胱タンポナーデの徴候(下腹部膨満、疼痛、排液不良)の観察が重要です。また、TURP症候群 (TURP Syndrome) という稀な合併症もあり、これは洗浄液(通常は生理食塩液)が血管内に吸収されることで起こる低ナトリウム血症 (Hyponatremia) と循環血液量増加を特徴とします。
概念整理: TURP術後は前立腺静脈洞からの持続出血を洗い流すためCBIを実施。洗浄液色調の観察(淡赤→鮮紅→凝血塊)が出血評価の指標となる。洗浄液が鮮紅色で凝血塊がある → 洗浄速度を速める(閉塞予防)。閉塞が生じた → 用手洗浄(医師指示)。カテーテル抜去は絶対禁忌。
一目で比較!:
| 状態 | 洗浄液の色調 | 看護介入 |
|---|
| 正常(軽度出血) | 淡赤色~ピンク色 | 現状維持(通常速度) |
| 中等度出血 | 鮮紅色(持続) | 洗浄速度を速める(医師指示範囲内) |
| 閉塞(膀胱タンポナーデ) | 排液なし / 凝血塊で充満 | 用手洗浄(医師指示) / 医師報告 |
看護過程ポイント:
- アセスメント: バイタルサイン(血圧低下、脈拍増加は出血性ショックの徴候)、洗浄液の色調と量、排液の性状(凝血塊の有無と大きさ)、下腹部の膨満・疼痛、SpO2低下(TURP症候群)。
- 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「出血リスク状態 (Risk for Bleeding)」または「体液量不足リスク状態 (Risk for Deficient Fluid Volume)」(出血による)。
- 計画・実施: 洗浄速度調整(通常は1分間40~60滴程度を基準に、出血に応じて調整)、カテーテル排液の定時観察(1時間ごと)、患者への安静指導(怒責・体動を避ける)。
- 評価: 洗浄液が淡赤色~ピンク色に変化、凝血塊の消失、バイタルサイン安定。
暗記のコツ: 「TURP術後は、『赤い=速度アップ』、『詰まった=用手洗浄』、『抜いたらダメ』」と覚えましょう。「赤いのに速度を上げない」と閉塞し、「抜く」と大出血に繋がる、とイメージすると記憶に残りやすいです。
国試頻出ポイント: TURP術後の出血管理(洗浄速度調整)は頻出テーマです。特に「洗浄液が鮮紅色で凝血塊あり」→「洗浄速度を速める」という直接的な対応を問う問題は必ず押さえておきましょう。TURP症候群(低Na血症)の症状(悪心、頭痛、意識障害、痙攣)と併せて学習すると、より深い理解が得られます。
出題パターン注意!: 事例問題で「患者の洗浄液が鮮紅色から変わらず、凝血塊が混じっている」と出たら、まず「閉塞のリスクが高い」とアセスメントし、「洗浄速度を速める」を選びます。「用手洗浄」は「排液が全く出なくなった」時の次の一手です。状況設定を正確に読み取ることが重要です。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): 80歳男性、TURP術後1日目、3wayフォーリーカテーテル(22Fr、バルーン30ml)留置、持続膀胱洗浄(生理食塩液、40滴/分)実施中。夜間勤務の看護師が定時観察で、洗浄液の色が一時間前のピンク色から鮮紅色に変化し、排液チューブ内に小さな凝血塊が数個見えることを発見しました。患者は「お腹が少し張る感じがする」と訴えています。看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):- 1観察 (Observe)まず バイタルサイン(血圧、脈拍、SpO2)と 腹部の視診・触診(膨満の有無、圧痛)を確認。カテーテルの排液がスムーズか、閉塞していないか(滴下が止まっていないか)を確認します。
- 2アセスメント (Assess)排液は確保されているため閉塞はないが、出血量が増加していると判断。洗浄速度の増加が必要とアセスメントします。
- 3報告 (Report) - SBAR「S(状況): TURP術後1日目の〇〇様、20時頃より洗浄液が鮮紅色に変化し、小凝血塊が認められます。B(背景): 術後経過は良好でしたが、夜間になり出血が増加した可能性があります。A(アセスメント): 現在排液は確保されており閉塞はありませんが、このままでは閉塞リスクが高いと考えます。R(提案): 洗浄速度を40滴/分から60滴/分に増加する指示をいただけますか?」
- 4介入 (Intervene)医師の指示(または術後指示の範囲内)で、洗浄液の注入速度を速めます。通常は1分間60~80滴程度に調整。患者には「出血が増えているので、洗浄を強くして血液を洗い流しますね。楽な姿勢で安静にしていてください」と説明します。
- 5評価 (Evaluate)30分~1時間後に再度観察。洗浄液の色調が淡赤色に戻り、凝血塊が消失していれば対応は成功。改善がなければ、再度医師へ報告(用手洗浄の必要性を検討)。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- カテーテル抜去は絶対に禁忌。患者に「自分で抜かないでください」と説明し、必要に応じて抑制を検討(高齢者は特に注意)。
- 閉塞時(排液が全く出ない)は、用手洗浄を行う前に必ず医師へ報告し指示を受ける。
- 洗浄液は必ず 生理食塩液 (Normal Saline) を使用。蒸留水は溶血を起こすため禁忌。
- 高齢者では TURP症候群(低Na血症、循環血液量増加)のリスクが高い。洗浄速度を速めた後は、呼吸状態(SpO2、呼吸音)、意識状態(見当識、眠気)の観察も忘れずに行う。 看護プロトコル: 観察頻度は術後24時間は1時間ごと(洗浄液色調、排液性状、バイタルサイン、腹部症状)。SBARで報告する際は「色調変化」「凝血塊の有無」「排液の状態(スムーズか閉塞か)」を具体的に伝える。記録には「洗浄液色調(例:鮮紅色)、凝血塊の有無と大きさ、洗浄速度変更の指示内容と実施時刻、変更後の患者の反応」を漏れなく記載する。
先輩看護師の一言:
「TURP術後のCBIは、まさに『目で見る出血コントロール』です。洗浄液の色が『ピンク』から『赤』に変わったら、閉塞を予防するための最初の一手として『速度アップ』をためらわずに。『詰まったらどうしよう』と心配するよりも、詰まらせないために何ができるかを考えることが大切です。国試でも現場でも、この『早めの速度調整』が合併症予防の鍵だと覚えておいてください!」
- 経尿道的前立腺切除術 — 前立腺肥大症に対して、内視鏡を尿道から挿入し前立腺組織を切除する術式。開放された静脈洞からの持続出血が術後管理の焦点となる。
- 持続膀胱洗浄 — TURP術後などに3wayフォーリーカテーテルを用いて生理食塩液を膀胱内に持続的に注入・排液し、血液や凝血塊を洗い流す処置。カテーテル閉塞予防が目的。
- 膀胱タンポナーデ — 膀胱内に血液や凝血塊が充満し、カテーテル排液が不能となった状態。緊急処置が必要で、用手洗浄や場合によっては再手術が必要となる。
- TURP症候群 — TURP術中の洗浄液(生理食塩液)が血管内に吸収されることで起こる希薄性低ナトリウム血症。症状は悪心、頭痛、意識障害、痙攣、重症では心肺停止。
- 用手洗浄 (Manual Irrigation) — カテーテルが凝血塊で閉塞した際に、医師の指示のもとでシリンジを用いて生理食塩液を注入・吸引し、閉塞を解除する処置。
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