核心解説
この問題は、
慢性便秘症 (Chronic Constipation) の患者に生じた、
糞便性イレウス (Fecal Impaction / Obstructive Ileus) に対する看護師の初期対応を問うています。患者は下腹部膨満感、悪心を訴え、腹部X線検査で大量の糞便が確認されており、
腸閉塞 (Intestinal Obstruction) の状態と判断されます。腸閉塞が疑われる場合、腸管内圧が著しく上昇しているため、浣腸や摘便、経口下剤の投与は
腸穿孔 (Intestinal Perforation) のリスクを高める禁忌行為です。まずは
消化管の安静(絶食) と
水分・電解質の補正(経静脈輸液) が最優先され、その後の医師によるイレウス管挿入や外科的処置の準備を進める必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 腸閉塞が強く疑われる患者への初期対応の基本は、
「絶食(Nothing Per Os: NPO)」 と
「経静脈輸液(Intravenous Infusion)」 です。これにより、腸管への刺激を遮断し、腸管内圧の上昇を抑制します。同時に、嘔吐や腸管内への体液貯留による
脱水 (Dehydration) や電解質異常 (Electrolyte Imbalance) を補正します。この患者の症状(膨満感、悪心)と画像所見は、腸閉塞の典型的な兆候であり、まずは全身管理を優先します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
- **① グリセリン浣腸を実施する**:
混同注意! 通常の便秘に対するケアとして適切ですが、腸閉塞状態では浣腸による腸管内圧の急激な上昇が
腸穿孔 (Intestinal Perforation) を誘発する危険があります。絶対的禁忌行為です。
- **② 摘便を試みる**: 同様に、腸閉塞時には禁忌です。直腸内の便塊を無理に摘出しようとすると、腸壁を損傷するリスクが極めて高いです。
- **④ 腹部マッサージを指導する**: 腸蠕動を促進する目的で行われることがありますが、腸閉塞時には腸管をさらに刺激し、症状を悪化させる可能性があります。安全が確認されるまで控えるべきです。
- **⑤ 経口下剤の投与を開始する**:
混同注意! 腸管内で通過障害が起きている状態では、経口投与された下剤が腸管内容物を増やし、腸管内圧をさらに上昇させます。結果的に
腸破裂 (Rupture of Intestine) のリスクを高めるため禁忌です。
概念整理
- **糞便性イレウス (Fecal Impaction)**: 長期間の便秘により、硬くなった糞便が直腸やS状結腸に嵌頓し、通過障害を起こした状態。腸閉塞の一種。
- **腸閉塞 (Ileus) の基本治療**: ① 絶食(NPO)と持続的胃管吸引(イレウス管)、② 輸液による脱水・電解質補正、③ 原因に応じた治療(保存的治療 or 外科的治療)。浣腸・摘便・下剤は禁忌。
一目で比較!
| 状態 | 治療/ケアの優先順位 | 禁忌行為 |
|---|
| 通常の便秘 | 生活指導 経口下剤 浣腸 摘便 | 特になし(患者の状態に応じて選択) |
| 糞便性イレウス | 絶食 輸液 医師の処置(イレウス管など) | 浣腸 摘便 経口下剤 腹部マッサージ |
看護過程ポイント
- **アセスメント**: 腹部の状態(膨満、圧痛、蠕動音の有無)、バイタルサイン(血圧低下、脈拍増加は脱水やショックの兆候)、嘔気・嘔吐の有無、排便状況(最終排便日、性状)。
- **看護診断 (Nursing Diagnosis)**:
「便秘 (Constipation)」 ではなく、
「腸閉塞に関連する体液量不足リスク (Risk for Deficient Fluid Volume)」 や
「腸閉塞に関連する急性疼痛 (Acute Pain)」 が優先されます。
- **計画・実施**: 絶食の徹底、輸液ルートの確保と管理、医師への報告(SBAR:Situation「腸閉塞疑い」、Background「慢性便秘の既往」、Assessment「腹部膨満、悪心」、Recommendation「絶食・輸液の指示を仰ぎたい」)。
- **評価**: 腹部症状の改善、バイタルサインの安定、尿量の確保。
暗記のコツ
「腸が詰まったら(閉塞したら)、
『食べさせない(絶食)』『刺激しない(浣腸・下剤禁止)』『管で引く(イレウス管)』『点滴で補う(輸液)』」と覚えましょう。便秘のケアで覚えた浣腸や摘便は、あくまで「腸が動いている(蠕動がある)」ことが前提です。
国試頻出ポイント
この問題は、
混同注意! 「便秘」と「腸閉塞」の違いを正しく理解しているかを問う典型問題です。同じ「便が出ない」という症状でも、病態が全く異なるため、看護介入も真逆になります。国試では、状況設定問題(事例問題)の中で、患者のアセスメント(バイタルサイン、腹部所見、検査結果)から正しい介入を選択させる形で頻出します。
出題パターン注意!
単純な「腸閉塞の禁忌行為はどれか」という知識問題ではなく、上記のように「患者の症状と検査結果を読んで、どの対応が適切か」を判断させる応用問題として出題されます。事例の細かい情報(バイタルサイン、腹部単純X線の所見、既往歴など)を読み落とさないように注意しましょう。