核心解説
この問題は、
廃用症候群 (Disuse Syndrome) による呼吸器系の病態生理的変化を問うています。廃用症候群とは、長期臥床や活動低下によって全身の器官に生じる二次的障害の総称です。呼吸器系では、
横隔膜の可動域制限と換気量減少が基盤にあり、これにより
無気肺 (Atelectasis)や肺炎のリスクが上昇します。単なる「合併症の暗記」ではなく、「なぜ動かないと肺がつぶれるのか」という病態生理の連鎖を理解することが看護介入の根拠となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
廃用症候群の呼吸器系への影響は、
不動 (Immobility) → 換気量減少 → 分泌物貯留 → 無気肺・肺炎リスク上昇という流れで理解します。長期臥床では横隔膜の運動が制限され、肺底部の換気が特に低下。また、咳嗽 (Cough) も弱くなり、気道クリアランスが低下します。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
選択肢②「無気肺の発生リスク上昇」が正解です。
最重要! 不動により肺胞が虚脱し、無気肺が発生しやすくなります。これは術後や寝たきり患者の呼吸管理で最も注意すべき合併症の一つです。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①番「分泌物の排出促進」→ 逆に排出は低下します。咳嗽反射が弱まり、痰が溜まりやすくなります。
③番「肺活量の増加」→ 減少します。横隔膜の動きが制限され、肺活量 (Vital Capacity) は低下します。
④番「咳嗽反射の亢進」→ 亢進ではなく減弱します。不動による筋力低下で咳が弱くなります。
⑤番「一回換気量の増加」→ 減少します。一回換気量 (Tidal Volume) は浅くなります。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
混同注意! 廃用症候群は呼吸器系以外にも、循環器系(起立性低血圧・深部静脈血栓症)、筋骨格系(筋萎縮・関節拘縮)、消化器系(便秘・食欲低下)、皮膚系(褥瘡)など全身に影響します。呼吸器系の変化は「無気肺」と「肺炎(誤嚥性肺炎も含む)」をセットで覚えましょう。
概念整理: 廃用症候群の呼吸器系影響:
換気量減少 (↓肺活量・↓一回換気量) → 分泌物貯留 (↓咳嗽反射) → 無気肺リスク↑ → 肺炎リスク↑。全てが「低下・減少」方向です。
一目で比較!:
| 影響項目 | 廃用症候群での変化 | 正常時の役割 |
|---|
| 肺活量 | 低下 | 最大吸気から最大呼気までの空気量 |
| 一回換気量 | 低下(浅呼吸) | 安静時1回の呼吸で出入りする空気量 |
| 咳嗽反射 | 減弱 | 気道異物・分泌物を排出する防御反射 |
| 分泌物排出 | 低下 | 線毛運動と咳嗽によるクリアランス |
看護過程ポイント:
アセスメント: 呼吸音(特に肺底部のラ音・呼吸音減弱)、SpO2、咳嗽の強さ、痰の量と性状。
看護診断: 「気道クリアランスの低下 (Ineffective Airway Clearance)」「無気肺リスク状態 (Risk for Atelectasis)」。
介入: 体位変換(側臥位・腹臥位を含む体位ドレナージ)、深呼吸・咳嗽の促し(呼吸介助・スクイージング)、必要時吸引・加湿・インセンティブスパイロメトリー。
暗記のコツ: 「廃用=低下」。肺活量、一回換気量、咳嗽反射、分泌物排出は全て「下がる」。逆に「上がるリスク」は無気肺と肺炎。この原則を覚えれば、類似問題にも対応できます。
国試頻出ポイント: 廃用症候群は「予防が最善の治療」です。早期離床・体位変換・呼吸リハビリテーションの重要性が問われます。また、高齢者や術後患者の「なぜ動かさなければならないか」の根拠として頻出。
出題パターン注意!: 「廃用症候群の呼吸器系への影響として適切なもの」→「無気肺の発生リスク上昇」。発展問題として、「廃用症候群の予防で正しい看護介入は?」→「体位変換を2時間ごとに行う」「呼吸練習を促す」など。