核心解説
この問題は、ベッド上安静などの不動状態が長期化することで生じる
廃用症候群 (Disuse Syndrome) の代表的な症状を問うています。廃用症候群とは、病気やケガの治療に伴う安静や活動量の低下が原因で、全身の臓器や器官に生じる二次的な障害の総称です。看護師は、予防的視点からこれらの症状を理解し、早期離床や関節可動域訓練 (ROM訓練) などの介入を計画する必要があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 正解は
⑤ 筋萎縮と関節拘縮 です。不動状態が続くと、筋肉は使われないことで萎縮 (Atrophy) し、関節は動かさないことで関節包や靭帯が短縮・癒着し、関節拘縮 (Joint Contracture) を生じます。これらは廃用症候群の中でも最も基本的かつ頻度の高い症状であり、予防的看護介入の優先度が非常に高い項目です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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混同注意! ① 深部静脈血栓症のリスク低下 → 誤り。逆に、不動による血流うっ滞は
深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT) のリスクを
上昇 させます。廃用症候群の一症状です。
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② 骨密度の増加 → 誤り。骨に適切な負荷(荷重や筋収縮)がかからなくなると、骨吸収が促進され
骨密度は減少 します(骨萎縮/骨粗鬆症)。
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③ 食欲亢進と体重増加 → 誤り。活動量が低下すると、消費エネルギーが減少するため、多くの場合
食欲不振と体重減少 が生じます。ただし、心理的要因による過食が起きる場合もありますが、代表的な症状ではありません。
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④ 高血圧と頻脈 → 誤り。長期臥床により、循環血液量の減少や血管調節機能の低下が生じ、特に
起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) が特徴的です。安静時の心拍数はむしろ増加する場合がありますが、廃用症候群の必須症状としての高血圧は該当しません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
廃用症候群は全身に及びます。主な系統別症状を整理しておきましょう。
| 系統 | 代表的な症状 |
| 筋・骨格系 | 筋萎縮、関節拘縮、骨萎縮(骨粗鬆症) |
| 循環器系 | 起立性低血圧、深部静脈血栓症 (DVT)、心肺予備能低下 |
| 呼吸器系 | 無気肺、肺炎(嚥下性肺炎含む)、換気量低下 |
| 消化器系 | 食欲不振、便秘、低栄養 |
| 泌尿器系 | 尿路結石、尿路感染 |
| 皮膚・感覚器 | 褥瘡 (Pressure Ulcer)、感覚鈍麻 |
| 精神・神経系 | うつ状態、せん妄、認知機能低下、睡眠障害 |
概念整理: 廃用症候群は、安静・不動による「使わなさすぎ」で生じる全身性の二次的障害です。予防には、可能な範囲での早期離床、体位変換、関節可動域訓練、栄養管理が重要です。
一目で比較!:
混同注意! 廃用症候群と
サルコペニア (Sarcopenia) は類似しますが、サルコペニアは加齢による筋肉量・筋力の低下に焦点を当てた概念です。廃用症候群は「原因(不動)」が明確な点で異なります。
看護過程ポイント:
アセスメント:患者のADL、筋力(握力・下肢筋力)、関節可動域、皮膚の状態を評価。
看護診断:例)「活動耐性低下 (Decreased Activity Tolerance)」「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」「自己不全感のリスク (Risk for Powerlessness)」。
計画・実施:予防的ROM訓練、ベッド上での能動的運動指導、早期離床計画の立案、栄養(特にたんぱく質)の確保。
評価:筋力維持・向上、関節拘縮の発生予防・進行抑制、ADLの維持・改善。
暗記のコツ: 「寝たきりで起こる悪いこと全部」が廃用症候群です。「筋(萎縮)・骨(萎縮)・関節(拘縮)・血(DVT)・肺(肺炎)・心(低血圧)・腸(便秘)・皮(褥瘡)・脳(うつ・せん妄)」と頭文字で覚えましょう。
国試頻出ポイント: 廃用症候群の症状として「筋萎縮と関節拘縮」は毎年必ずと言っていいほど出題されます。また、予防策としての「早期離床」や「関節可動域訓練」の重要性も頻出です。
出題パターン注意!: 単純な症状の列挙問題だけでなく、「脳卒中後の片麻痺患者」「大腿骨頸部骨折術後患者」など、具体的な事例の中で「この患者に生じやすい廃用症候群の症状はどれか」という形で出題されることが多いです。病態と結びつけて考えましょう。