大腿骨頸部骨折後、手術を受けた80歳の女性。術後3日目から離床を開始したが、立ち上がった直後にめまいと眼前暗黒感を訴えた… | MyMerci
運動機能の障害
問題

大腿骨頸部骨折後、手術を受けた80歳の女性。術後3日目から離床を開始したが、立ち上がった直後にめまいと眼前暗黒感を訴えた。この症状の原因として最も考えられるのはどれか。

解説
長期臥床後の離床時に生じるめまいや眼前暗黒感は、廃用性の起立性低血圧が最も考えられる。循環血液量の減少と血管調節機能の低下が原因であり、離床前に下肢の運動や弾性ストッキングの着用などの予防策が重要である。

詳細解説

核心解説 この問題は、長期臥床後の高齢患者が離床時に訴えるめまい・眼前暗黒感の原因を問うています。特に大腿骨頸部骨折術後という状況設定が重要で、術後3日間の安静臥床による身体機能の廃用が病態の背景にあります。ここでは、起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension)の病態生理と、それ以外の選択肢がなぜ否定的かを理解することが鍵となります。 正解の根拠 (Answer Rationale):
正解は④の廃用性の起立性低血圧 (Disuse Orthostatic Hypotension)です。長期臥床により、重力に抗して血液を心臓に戻すための下肢筋ポンプ作用 (Calf Muscle Pump)が低下し、さらに圧受容器反射 (Baroreceptor Reflex)の感受性も鈍化します。その結果、立ち上がった際に血液が下肢に貯留し、心拍出量 (Cardiac Output) が減少し、一過性の脳血流低下が生じてめまいや眼前暗黒感(いわゆる立ちくらみ)を引き起こします。術後3日目という離床開始時期と、症状が立ち上がった「直後」に出現する点が典型的です。 誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! 不整脈による失神(Adams-Stokes発作など)は、立ち上がりと無関係に突然の意識消失を起こします。また、症状が「めまい」と「眼前暗黒感」であり、完全な失神ではない点でも否定的です。術後患者では電解質異常による不整脈も考慮しますが、今回のタイミング(離床直後)からは起立性低血圧が優先されます。
② 脳血管障害の再発は、片麻痺や構音障害など局所神経症状を伴うのが典型的であり、めまい・眼前暗黒感のみでは考えにくいです。
③ 術後の出血性ショックは、術後3日目であればドレーン排液量増加や血圧低下・頻脈・皮膚湿潤など全身症状を伴います。立ち上がった直後の一過性症状という点で否定的です。
混同注意! 肺血栓塞栓症(Pulmonary Thromboembolism)は、術後安静による深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis) が原因で突然の呼吸困難・胸痛・チアノーゼを呈します。めまいはあっても呼吸器症状が主体であり、このケースでは症状が軽すぎるため否定的です。 関連概念の整理 (Related Concepts):
起立性低血圧の診断基準(収縮期血圧20mmHg以上または拡張期血圧10mmHg以上の低下)や、予防策(弾性ストッキング、下肢挙上、離床前の下肢運動、ゆっくりとした体位変換)も国試頻出です。また、高齢者は圧受容器反射の老化や、降圧薬・利尿薬の内服により起立性低血圧を起こしやすいことを押さえておきましょう。
概念整理:
状態病態生理予防策
長期臥床後の離床下肢筋力低下・循環血液量減少・圧受容器反射鈍化下肢運動・弾性ストッキング・緩徐な体位変換・十分な水分摂取
起立性低血圧発症時脳血流低下(めまい・眼前暗黒感・失神)すぐに座位または臥位をとる・下肢を挙上する・バイタルサイン測定

一目で比較!:
疾患主症状発症タイミング随伴症状
起立性低血圧めまい・眼前暗黒感立ち上がり直後血圧低下(一過性)
肺血栓塞栓症突然の呼吸困難・胸痛離床時・安静時問わず頻呼吸・チアノーゼ・SpO2低下
不整脈による失神突然の意識消失立ち上がりと無関係脈拍異常(徐脈・頻脈)
脳血管障害めまい+局所神経症状安静時・活動時問わず片麻痺・構音障害・半側空間無視

看護過程ポイント:
アセスメント (Assessment): 離床前後の血圧・脈拍の変化、症状の持続時間、体位との関連を評価します。特に臥位→座位→立位の各段階での血圧測定が重要です。
看護診断 (Nursing Diagnosis): 「廃用性症候群のリスク状態」または「身体可動性障害」と関連づけて、「活動不耐容 (Activity Intolerance)」が挙げられます。
計画・実施 (Planning & Implementation): 弾性ストッキング着用、ベッド上での下肢運動(足関節底屈・背屈)、段階的な離床(ギャッジアップ30°→座位→端座位→立位)、十分な水分摂取を指導します。
評価 (Evaluation): 立ち上がり後のめまいが消失したか、血圧の変動が改善したかを確認します。
暗記のコツ:
「起立性低血圧」は「立ち上がると低くなる血圧」と覚えましょう。キーワードは「離床直後」「一過性」「予防が大切」の3つです。弾性ストッキングは「足をギュッと締めて血液を戻す」イメージで連想してください。
国試頻出ポイント:
- 術後合併症としての起立性低血圧と肺血栓塞栓症の鑑別は毎年出題されやすいです。
- 「立ち上がった直後」→起立性低血圧、「突然の呼吸困難」→肺血栓塞栓症、という典型的な症状パターンを覚えれば確実に得点できます。
- 予防策(弾性ストッキング、下肢運動、緩徐な体位変換)も合わせて問われます。
出題パターン注意!:
単純な知識問題(原因を選ばせる)から、事例問題(「術後3日目、離床開始後にめまいを訴えた。まず行う看護はどれか」→バイタルサイン測定・座位保持・下肢挙上など)に発展することが多いです。また、高齢者に多い合併症として、せん妄 (Delirium) との関連(起立性低血圧による脳血流低下がせん妄誘因になる)も応用問題として出題される可能性があります。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド この知識は、実際の整形外科病棟や回復期リハビリテーション病棟で非常に頻繁に遭遇するシチュエーションです。 臨床シナリオ (Clinical Scenario):
80代女性、大腿骨頸部骨折で人工骨頭置換術(Bipolar Hip Arthroplasty)後3日目。担当看護師が離床介助を行い、ベッド端座位から立ち上がるのを支援したところ、患者さんが「先生、目がクラクラする…真っ暗になった」と訴え、顔色が蒼白になりました。バイタルサインは座位で血圧 110/70mmHg、脈拍 72回/分でしたが、立位では血圧 88/52mmHg、脈拍 96回/分に変化しました。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
最重要! まず、患者さんを安全にベッド上または椅子に座らせ、転倒を防止します。すぐにバイタルサイン(血圧、脈拍、SpO2)を測定し、臥位・座位・立位の血圧差を確認します。同時に、意識レベル、胸痛・呼吸困難の有無を評価して肺血栓塞栓症の可能性を除外します。SBAR報告(Situation: 離床直後にめまい、血圧低下あり。Background: 術後3日目、長期臥床。Assessment: 起立性低血圧疑い。Recommendation: 離床中断、経過観察、予防策の見直し)を医師に行います。その後、下肢を挙上し、水分摂取を促し、弾性ストッキングの装着を確認・指導します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 転倒・転落防止: めまい時の転倒は二次骨折や頭部外傷のリスクがあります。離床時は必ず2人介助または歩行器・車椅子を使用し、足元の安全を確保します。
- 肺血栓塞栓症の除外: めまいだけでなく、突然の呼吸困難や胸痛、SpO2低下があれば緊急対応が必要です。
- 高齢者では脱水や低栄養も起立性低血圧のリスク因子です。術後の経口摂取状況や尿量もアセスメントしましょう。
看護プロトコル:
観察項目: 離床前後のバイタルサイン(臥位・座位・立位)、症状の有無(めまい・動悸・冷や汗・吐き気)、意識レベル(JCS/ Glasgow Coma Scale)、SpO2、下肢の腫脹・疼痛の有無(深部静脈血栓症のスクリーニング)。
報告基準(SBAR): 立位で収縮期血圧20mmHg以上低下、または症状を伴う場合は医師に報告。SpO2 94%未満、胸痛・呼吸困難出現時は緊急報告。
記録のポイント: 離床開始時間、体位変換の段階、各体位での血圧値、症状の有無と程度、実施したケア(下肢挙上・水分摂取など)、医師への報告内容と指示。
先輩看護師の一言:
「高齢者の術後離床は、『焦らず、ゆっくり、段階を踏んで』が鉄則です。特に大腿骨頸部骨折の患者さんは術前から臥床時間が長く、廃用が進んでいることが多いので、離床前から下肢の運動や弾性ストッキングを徹底しましょう。めまいが起きたら『早く動かさなきゃ』と焦るのではなく、まずは患者さんの安全第一で、座らせてバイタルサインを測る。これが基本です!」

重要概念

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