看護学のコア解説
この問題は、
トリアージ (Triage)の基本原則、特に
優先順位付け (Prioritization)の考え方を問うています。救急外来では限られたリソースを最も緊急性の高い患者に集中させる必要があり、その判断基準を理解することが看護師の重要な役割です。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージの核となる概念は、
ここがポイント!「生命の危険が切迫しているか、または放置すれば生命や四肢の機能に重大な影響を及ぼす可能性がある状態」を最優先に評価・介入することです。一般的に使用される
緊急度分類 (Emergency Severity Index, ESI など)では、
ABC(気道・呼吸・循環)の安定性が最優先の判断基準となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢③の患者(65歳、胸痛、発汗、呼吸困難)は、
急性冠症候群 (Acute Coronary Syndrome, ACS)、特に
急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction, AMI)が強く疑われる症状を示しています。胸痛、発汗(冷や汗)、呼吸困難は、心筋への血流が途絶え、
心不全 (Heart failure)を併発している可能性を示す「レッドフラッグ(危険信号)」です。これは
ABCの「循環(Circulation)」に直接関わる生命の危機であり、数分単位での対応が予後に直結するため、
最優先(赤タグ、カテゴリーⅠ)で評価すべきです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、緊急性が相対的に低い状態です。
① 骨折した腕の患者:意識清明、バイタルサイン安定。疼痛管理は必要ですが、生命の危険は切迫していません。通常、待機的対応(緑タグ、カテゴリーⅣ)となります。
② 腹痛・嘔吐の患者:症状は苦痛ですが、現時点で「激痛」「腹膜刺激症状」「ショック状態」などの記載がなく、バイタルサインの異常も示されていません。虫垂炎や腸閉塞などの可能性はありますが、緊急性は③より低く、迅速な評価(黄タグ、カテゴリーⅡ~Ⅲ)が必要なレベルです。
④ 前額部裂傷の患者:出血は圧迫でコントロールされています。創部の縫合は必要ですが、止血ができている限り、生命の危機はありません。待機的対応(緑タグ)となります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージでは「見た目の重症度」ではなく、「生理学的な安定度」と「放置した場合のリスク」で判断します。高齢者、基礎疾患のある患者は、症状が典型的でなくても重篤な病態が隠れていることが多いため、特に注意が必要です。
概念のまとめ
トリアージの最優先は「ABCの危機」。胸痛+発汗+呼吸困難は心筋梗塞の典型的三徴で、即時の対応が必要。
一目で比較!トリアージの優先順位(例)
| 優先度 | カテゴリー/色 | 状態の例 | 対応時間目標 |
|---|
| 最優先 | Ⅰ (赤) | 心肺停止、重度の呼吸困難、ショック、意識障害、大量出血 | 即時 |
| 高優先 | Ⅱ (黄) | 激しい腹痛、持続する胸痛(安定)、複雑骨折 | 15分以内 |
| 中優先 | Ⅲ (緑) | 軽度の外傷(捻挫、小裂傷)、発熱、慢性疾患の軽度増悪 | 60分以内 |
| 低優先 | Ⅳ (青) | 軽症、風邪症状、処方箋の再発行など | 120分以内以降 |
解剖生理と薬理のポイント
急性心筋梗塞では、冠動脈の閉塞により心筋が壊死します。壊死部位からはカテコラミンが放出され、発汗(冷や汗)や頻脈を引き起こします。また、左心室の機能低下により肺うっ血が生じ、呼吸困難の原因となります。最初の対応では、モニター監視、酸素投与、アスピリンやニトログリセリンなどの投与が重要です。
暗記のコツとゴロ合わせ
トリアージの優先順位を覚えるゴロ:「
あ(赤)せて、き(黄)もっちゃって、み(緑)んな青ざめた」 → 赤(最優先)→黄(高優先)→緑(中優先)→青(低優先)の順番です。
国試頻出ポイント
トリアージは毎年のように出題される超重要テーマです。特に「複数患者が同時に来院した場合、誰を最初に見るか?」という形式が典型的です。判断の根拠は必ず「生命の危険の切迫度」と「ABC」に立ち返りましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な症状比較から、より複雑なシナリオ(例:災害時トリアージ、小児や妊婦の特殊性を含む)や、優先順位決定後の「最初に行う看護ケア」を問う問題へと発展しています。基本原則を応用できる力が求められます。