看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
救急外来に、上記の4名の患者がほぼ同時に到着しました。あなたは最初に声をかけるトリアージナースです。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
初見評価 (Initial Impression): ①の患者に一目で「苦悶様顔貌」「冷や汗」「前かがみの姿勢」があれば、声をかけながらすぐに近づきます。「どうされましたか?」と聞きながら、同時に
ABCを評価します(気道は開通しているか、呼吸は苦しそうか、顔色は蒼白ではないか)。
2.
緊急呼び出しと酸素投与: 「胸が痛い」と訴えた時点で、大声で同僚に「心筋梗塞疑いです!モニターと酸素を持ってきてください!」と伝え、すぐに
酸素投与 (Oxygen administration)(鼻カニューラまたはマスク)を開始します。
3.
迅速なバイタルサイン測定と12誘導心電図: 血圧、脈拍、SpO2を測定すると同時に、
12誘導心電図 (12-lead ECG)の準備を依頼します。患者を安静臥床とし、衣服を緩めます。
4.
チーム連携: 医師に即時連絡し、鎮痛薬(モルヒネなど)や抗血小板薬の準備を進めます。カテーテル室への連絡が必要かどうか、チームで判断を始めます。
5.
他の患者への対応: ①の患者の初期対応を開始したら、他のスタッフに②〜④の患者の初期対応(②には圧迫止血、③④にはバイタル測定と簡単な問診)を依頼し、全体の管理を行います。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・心筋梗塞疑いの患者を一人にしない。不整脈発生に備え、除細動器をベッドサイドに準備する。
・疼痛に対しては医師の指示に基づき鎮静剤を投与するが、呼吸抑制や血圧低下に注意してモニタリングする。
・患者の不安が強いため、落ち着いた声で説明し、そばにいることで安心感を与える。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護師のアクション | 根拠と注意点 |
|---|
| 患者到着・トリアージ | 視診、簡易問診で「胸痛」「死の恐怖」を聞き取る。 | 生命危機の可能性を最優先でスクリーニング。 |
| 緊急対応開始 | 酸素投与、モニター装着、静脈路確保の準備。 | 低酸素状態の是正と急変時の薬剤投与路の確保。 |
| 医師診察・検査 | 12誘導心電図施行、血液検査(心筋トロポニンなど)採血。 | 心筋虚血・壊死の客観的証拠を迅速に得る。 |
| 治療開始 | 医師指示下で鎮痛薬、抗血小板薬(アスピリンなど)、抗凝固薬を投与。 | 疼痛軽減、血栓進展防止。出血リスクやアレルギーに注意。 |
先輩看護師からの一言
「救急では、『見て、聞いて、感じる』がすべてです。教科書的な症状をそのまま訴える患者ばかりではありません。『なんかおかしい』という看護師の直感は、経験に基づく重要なアセスメントツールです。今回の『死の恐怖』という訴えは、まさにそれ。この一言を軽く見過ごさず、『これはやばい』と瞬時に判断できる感性を、国試の勉強を通じて養ってください。優先順位を間違えなければ、多くの命を救えます!」