看護学のコア解説
この問題は、
災害時トリアージ (Disaster Triage)における
患者の優先順位付け (Patient Prioritization)の原則を問うています。通常の救急対応とは異なり、
限られた医療資源で最大多数の命を救うことが目的です。そのため、
ここがポイント!「救命可能で、直ちに処置をしなければ死亡する可能性が高い患者」が最優先(赤タグ)となります。
重要概念の分析 (Key Concept)
災害トリアージでは、
START法 (Simple Triage and Rapid Treatment)や
ジャパン・トリアージ・タッグ (Japan Triage Tag)が用いられます。評価は「歩行可能か」「呼吸があるか」「循環(脈拍・毛細血管再充満時間)は保たれているか」「意識レベルはどうか」の順で迅速に行い、患者を以下の4色に分類します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の④「25歳女性、呼吸困難、右側呼吸音減弱、頻呼吸」は、
緊張性気胸 (Tension pneumothorax)や
血胸 (Hemothorax)を疑わせる所見です。これは気道(Airway)と呼吸(Breathing)の障害、つまり
ABCの優先順位で最上位の問題です。直ちに胸腔穿刺や胸腔ドレナージなどの処置を行えば救命可能であるため、
赤タグ(最優先)に分類されます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①「45歳男性、開放性大腿骨骨折、バイタルサイン安定、意識清明」:バイタルサインが安定しており、直ちに生命の危険はありません。大量出血のリスクはありますが、現時点では安定しているため、
黄タグ(待機的治療)となります。
②「30歳女性、多発性擦過傷、激痛、バイタルサイン安定」:痛みは強いですが、バイタルサインが安定しており生命の危険は切迫していません。
緑タグ(軽症)に分類される可能性が高いです。
③「60歳男性、心停止15分、脈拍なし」:災害トリアージでは、
混同注意! 限られたリソースを「救命可能な患者」に集中させるため、明らかに救命の見込みがない患者(例:長時間の心停止)は、
黒タグ(死亡または救命不能)に分類され、最優先治療の対象外となります。通常の心肺蘇生(CPR)の優先順位とは根本的に異なる考え方です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージは状況によって優先順位が変わります。通常の救急外来では、心停止患者が最優先です。また、
MCI (Mass Casualty Incident)では、
CSCATTT (Command, Safety, Communication, Assessment, Triage, Treatment, Transport)という組織的な対応フレームワークが重要です。
概念のまとめ
| トリアージタグ | 色 | 意味 | 処置優先度 | 例 |
|---|
| I (第一優先) | 赤 | 緊急治療が必要で救命可能 | 最優先 | 気道閉塞、緊張性気胸、大出血 |
| II (第二優先) | 黄 | 治療は必要だが、多少の待機が可能 | 次 | 安定した開放骨折、管理された出血 |
| III (第三優先) | 緑 | 軽症、歩行可能 | 最後 | 軽い擦過傷、捻挫 |
| 0 (死亡/救命不能) | 黒 | 死亡または救命の見込みなし | 対象外 | 明らかな死亡、長時間の心停止 |
一目で比較!
| 評価項目 | 赤タグ(最優先)の所見 | 黒タグ(救命不能)の判断基準 |
|---|
| 呼吸 | なし、または毎分30回以上 | 気道確保後も呼吸なし |
| 循環 | 脈拍なし、または毛細血管再充満時間2秒以上 | 循環サインなし |
| 意識 | 簡単な命令に従えない(JCSで100以上) | - |
解剖生理と薬理のポイント
緊張性気胸では、損傷部が弁のように働き、胸腔内に空気がたまり続けます。これにより
縦隔偏位 (Mediastinal shift)が起こり、反対側の肺や心臓大血管を圧迫し、急速に呼吸循環不全をきたします。最優先の処置は、
針脱気 (Needle decompression)または
胸腔ドレナージ (Chest tube drainage)です。
暗記のコツとゴロ合わせ
トリアージの優先順位は「
赤黄緑黒」の順。覚え方は「
赤信号、止まれ(最優先で止めて処置)。黄は待て。緑は進め(後回し)。黒は…もうだめ」。START法の評価順序は「
歩けますか?→ 息してますか?→ 脈は?→ 意識は?」と流れで覚えましょう。
国試頻出ポイント
災害看護では、
「通常時」と「災害時(MCI)」のトリアージ原則の違いが頻出です。特に「救命可能な患者を最優先とする」「長時間の心停止患者は最優先ではない」という点は、直感に反するため試験で引っ掛けられやすいです。常に「
限られた資源で最大多数を救う」という災害トリアージの根本目的を思い出しましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
単にトリアージの色を選ばせる問題から、具体的な傷病者の症状を提示され「最優先で処置すべきは誰か」「トリアージナースの最初の行動は何か」といった応用問題へと変化しています。傷病者の症状から、
ABC(気道、呼吸、循環)のどれが障害されているかを瞬時に判断する力が求められます。