看護学のコア解説
この問題は、
トリアージ (Triage)、特に
緊急度・重症度の優先順位付け (Prioritization)の基本原則を問うています。救急外来では限られたリソースで複数の患者を同時に受け入れるため、
ここがポイント!「最も生命の危機に瀕している患者から優先的に処置する」という鉄則が適用されます。その判断の基盤となるのが、
一次救命処置 (BLS: Basic Life Support)の基本である
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)です。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージの優先順位は、一般的に以下のカテゴリーに分類されます。
1.
緊急 (Immediate / Red tag):生命の危機が切迫しており、直ちに処置が必要。
2.
準緊急 (Delayed / Yellow tag):重篤だが、処置を少し待っても生命に直ちに危険が及ばない。
3.
軽症 (Minimal / Green tag):歩行可能で、処置を長く待つことができる軽症者。
4.
待機的 (Expectant / Black tag):救命の見込みが極めて低く、限られたリソースを他の患者に集中させる必要がある場合(倫理的判断を伴う)。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の患者④「意識消失し浅い呼吸をしている22歳の学生」は、
ABCアプローチの観点から、
緊急 (Immediate)カテゴリーに該当します。
-
気道 (Airway):意識レベルが低下しているため、舌根沈下や嘔吐物による気道閉塞のリスクが極めて高い。
-
呼吸 (Breathing):「浅い呼吸」とあるため、
呼吸不全 (Respiratory failure)に陥る可能性があり、直ちに酸素投与や補助換気が必要です。
この患者は、
気道確保 (Airway management)と呼吸管理が最優先であり、数分の遅れが死に直結する可能性があります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の患者は緊急度が高いものの、患者④に比べると「直ちに」という緊急性が一段階低い、または異なるリスクを有しています。
① 前腕の深い裂傷で中等度の出血:
循環 (Circulation)の問題です。出血は確かに重要ですが、「中等度」とあるため、直接圧迫止血などの一時的処置でコントロール可能な可能性が高く、気道・呼吸の確保よりも優先度は下がります。
② 激しい腹痛(8/10)と嘔吐:非常に苦痛が強く、
急性腹症 (Acute abdomen)の可能性があり緊急です。しかし、現時点で気道・呼吸・循環(バイタルサインの記載なし)に明らかな異常がなく、生命の直接的な脅威とは断定しにくいため、準緊急(Delayed)と判断されます。
③ 胸部不快感と軽度の呼吸困難の65歳男性:
急性冠症候群 (Acute coronary syndrome)や
肺塞栓症 (Pulmonary embolism)の可能性があり、
極めて危険な状態です。問題文に「バイタルサイン安定」とあるため、直ちに気道・呼吸の管理が必要な患者④よりは優先度が下がると判断されますが、
ここがポイント! 実際の臨床では、この患者も「緊急」カテゴリーに入り、迅速な
12誘導心電図 (12-lead ECG)とモニタリングが必要です。この問題では、意識レベルと呼吸状態の異常が「最も切迫した生命危機」と定義されています。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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JCS (Japan Coma Scale) / GCS (Glasgow Coma Scale):意識レベルの客観的評価ツール。この患者の評価に必須です。
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一次評価 (Primary survey):ABCDEアプローチ(気道、呼吸、循環、神経学的障害、全身露出)を用いて、生命を脅かす問題を迅速に発見・処置すること。
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二次評価 (Secondary survey):一次評価で安定化させた後に行う、頭のてっぺんからつま先までの詳細な全身評価。
概念のまとめ
トリアージの第一原則は「生命の危機が切迫しているかどうか」。その判断には
ABC (気道・呼吸・循環)の順番で評価する。意識障害と呼吸異常は、気道閉塞と呼吸不全という二重のリスクを意味するため、最優先となる。
一目で比較!
| 患者 | 主な問題 | ABC評価 | トリアージカテゴリー | 優先順位の理由 |
|---|
| ④ 意識消失・浅い呼吸 | 頭部外傷?薬物? 気道・呼吸の危機 | 気道(A)・呼吸(B)に重大な問題 | 緊急 (Immediate) | 数分の遅れが死に直結 |
| ③ 胸痛・呼吸困難 | 心筋梗塞?肺塞栓? | 循環(C)に潜在的重大問題 呼吸(B)軽度異常 | 緊急 (Immediate) ※本問では準緊急扱い | 生命危機だが、気道・呼吸の直接的管理よりは時間的余裕がある場合がある |
| ② 激しい腹痛 | 急性腹症(虫垂炎など) | 現時点でABCに明らかな異常なし | 準緊急 (Delayed) | 苦痛は強いが、直ちに生命に危険が及ぶ状態ではない |
| ① 中等度出血 | 外傷・出血 | 循環(C)に問題 | 準緊急 (Delayed) | 直接圧迫で一時的にコントロール可能 |
解剖生理と薬理のポイント
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気道確保:頭部後屈あご先挙上法(頸椎損傷が疑われなければ)、または
下顎挙上法 (Jaw thrust maneuver)(頸椎損傷疑い時)が基本。必要に応じて
気管挿管 (Endotracheal intubation)へ。
-
呼吸補助:バッグバルブマスク(BVM)による補助換気、酸素投与。
- 意識レベルの低下は、
脳幹網様体賦活系 (Reticular activating system)の機能障害を示唆する。
暗記のコツとゴロ合わせ
優先順位の原則は「
ABC」!「
気がついたら
息してない、
血も流れてない」と覚える。A(気道)とB(呼吸)の問題は、C(循環)の問題よりも
数分単位で急速に致命傷になり得ます。
国試頻出ポイント
トリアージと優先順位付けは、救急看護、災害看護、複数患者のシナリオ問題で
超頻出です。常に「生命の直接的な脅威は何か?」「ABCのどれが侵害されているか?」という視点で選択肢を比較しましょう。意識レベル、呼吸状態、大量出血の有無が最大のヒントになります。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な「どれが一番危ない?」という問い方から、「看護師が最初に行うべき行動は?」「最初に確認すべきバイタルサインは?」というように、優先順位に基づいた
看護介入の順序を問う問題へと発展しています。基本のABCの原則が理解できていれば、どのような聞かれ方にも対応できます。