看護学のコア解説
この問題は、
トリアージ (Triage)、特に
ここがポイント! 緊急度・重症度に基づく優先順位付けの核心を問うています。救急外来では限られたリソースを最も緊急性の高い患者に集中させる必要があり、その判断基準を理解することが看護師の重要な役割です。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージの基本原則は、生命の危険が切迫している患者を最優先にすることです。一般的に
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)に基づいて評価します。すなわち、気道(Airway)、呼吸(Breathing)、循環(Circulation)のいずれかに重大な問題がある、またはそのリスクが高い患者が最優先となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢③の患者は、
胸痛 (Chest pain)、
発汗 (Diaphoresis)、
呼吸困難 (Shortness of breath)という
急性冠症候群 (Acute Coronary Syndrome)や
肺塞栓症 (Pulmonary embolism)などを示唆する重篤な症状に加え、
血圧 90/60 mmHg(低血圧)、
心拍数 110 bpm(頻脈)という
循環動態の不安定さ (Hemodynamic instability)を示しています。これは「Circulation(循環)」に直接的な脅威がある状態であり、心停止に至る可能性が高いため、
最優先(緊急)での対応が必要です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は、生命の危険が切迫していない、または比較的安定している状態です。
① 骨折は疼痛管理が必要ですが、バイタルサインが安定しており、気道・呼吸・循環に直ちに影響を与える状態ではありません。通常は「待機的(遅延可能)」または「緊急度低」に分類されます。
② 激しい腹痛は苦痛が大きく、緊急性が高い場合もあります(例:腹部大動脈瘤破裂、絞扼性イレウス)。しかし、バイタルサインが正常範囲内であることから、現時点では循環動態が保たれており、③の患者と比較すると優先度は下がります。ただし、経過観察は必須です。
④ 活動性の出血は「Circulation(循環)」に関わる問題ですが、
圧迫によりコントロールされているという点が重要です。出血が持続的でコントロール不能であれば優先度は上がりますが、このケースでは一時的に安定しているため、③の患者よりは優先度が低くなります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
救急外来では、日本でも
日本版救急度・緊急度判定支援ツール (Japanese Triage and Acuity Scale: JTAS)などの標準化されたトリアージシステムが使用されることが増えています。これらのシステムでは、主観的な疼痛の強さだけでなく、客観的なバイタルサインや症状を組み合わせて、赤(救命)、黄(緊急)、緑(準緊急)、黒(死亡)などのカテゴリーに分類します。
概念のまとめ
トリアージの最優先は「生命の危機が切迫している患者」。判断の軸は
ABC(気道・呼吸・循環)の安定性。バイタルサインの異常(特に低血圧、頻脈、呼吸困難)は重篤なサイン。
一目で比較!
| 患者 | 主症状 | バイタルサイン | トリアージ優先度 | 理由 |
|---|
| ③ 62歳 | 胸痛、発汗、呼吸困難 | 血圧低下、頻脈 | 最優先(緊急) | 循環動態不安定。心停止リスク高。 |
| ② 28歳 | 激しい腹痛 | 正常 | 高(緊急)〜中 | 苦痛は大きいが、現時点で循環は安定。 |
| ④ 35歳 | 活動性出血(圧迫で制御) | 記載なし(安定と推定) | 中 | 出血は制御されているため、切迫性は低い。 |
| ① 45歳 | 骨折疑い | 安定 | 低(待機的) | 生命に直ちに危険はない。 |
解剖生理と薬理のポイント
胸痛・呼吸困難・発汗・低血圧・頻脈は、
心筋梗塞 (Myocardial Infarction)の典型的な症状です。心筋の虚血によりポンプ機能が低下し、
心拍出量 (Cardiac output)が減少することで血圧が低下します。身体は代償的に心拍数を上げようとします(頻脈)。この状態は
心原性ショック (Cardiogenic shock)への移行リスクが極めて高く、迅速な対応(酸素投与、モニター監視、アスピリンやニトログリセリンなどの投与、カテーテル治療の準備)が必要です。
暗記のコツとゴロ合わせ
優先順位の判断は「
ABCデス(ABC Death)」と覚えましょう。A(気道)、B(呼吸)、C(循環)のどれかが「Death(死)」に直結する危険がある患者が最優先です。
国試頻出ポイント
トリアージの優先順位は
超頻出テーマです。単に「どの症状が重いか」ではなく、「
バイタルサインの異常を伴っているかどうか」が最大の鑑別点です。疼痛の強さ(10段階中8など)だけでは判断せず、客観的データを重視するように出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単純なトリアージ順位付けから、より複合的なシナリオ(例:災害時トリアージ、小児や高齢者の非典型的症状を含むケース)や、優先順位決定後の「最初に行う看護ケア」を問う問題へと発展しています。常に「なぜこの患者が最優先なのか」の根拠を言語化できるようにしておきましょう。