看護学のコア解説
この問題は、
トリアージ (Triage)における
優先順位決定の原則を理解しているかを問うています。救急外来では限られたリソースを最も緊急性の高い患者に振り向ける必要があり、その判断基準は
一次救命処置 (BLS: Basic Life Support)の考え方、すなわち
ここがポイント! ABC(気道・呼吸・循環)の障害が生命への直接的な脅威となるという点に基づいています。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージの基本は、患者の状態を「生命の危機」「緊急」「準緊急」「非緊急」などに分類することです。国際的にも日本の救急現場でも広く用いられる基準では、
気道 (Airway) または呼吸 (Breathing) に障害がある患者は最優先(赤タグなど)となります。なぜなら、酸素化が数分間途絶えるだけで不可逆的な脳障害や心停止に直結するからです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の患者②は、「意識レベル低下 (Unconscious)」「呼吸数
8回/分(正常:
12-20回/分)」「チアノーゼ (Cyanosis)」という所見を示しています。これは明らかな
呼吸不全 (Respiratory failure)の状態です。意識レベル低下は気道確保が困難になるリスクも高めます。この患者は、直ちに
気道確保 (Airway management)、
補助換気 (Assisted ventilation)、酸素投与が必要であり、
ABCのうちA(気道)とB(呼吸)の両方に重大な問題があるため、最優先で対応すべきです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 他の選択肢は重要ですが、生命への直接的な脅威という点で②には劣ります。
① 45歳患者:血圧
90/60 mmHgは低血圧を示し、循環(C)の問題(例:消化管出血、腹膜炎による敗血症性ショック)が疑われます。しかし、「意識清明」であることが、現時点で脳への灌流が保たれていることを示唆し、呼吸(B)の問題よりは優先度が一段階下がります。
③ 65歳患者:
急性冠症候群 (Acute coronary syndrome)が強く疑われ、緊急性は非常に高いです。しかし、バイタルサインは比較的保たれており(SpO2 98%)、呼吸(B)に直ちに問題はないため、優先度は②の次になります。
④ 35歳患者:開放骨折は感染リスクや疼痛管理が必要ですが、
出血が圧迫でコントロールされている点が重要です。循環(C)の直接的な脅威は現時点では少なく、優先度は最も低くなります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージでは「見た目の重症度」ではなく「生理学的な安定性」を評価します。日本でよく使われる
日本版救急トリアージ (Japanese Triage and Acuity Scale: JTAS)や、災害時に用いる
START法 (Simple Triage and Rapid Treatment)も同様に、歩行の有無、呼吸、循環(脈拍・意識)、そして最後に傷病の詳細を確認する流れです。
概念のまとめ
トリアージ最優先(赤タグ/緊急度Ⅰ):
ABC(気道・呼吸・循環)のいずれかが直ちに脅かされている状態(例:呼吸停止、重度の呼吸困難、ショック、意識障害)。
一目で比較!
| 患者 | 主な問題 | ABC評価 | 優先度 | 理由 |
|---|
| ② 無意識、呼吸数8回/分 | 呼吸不全 | A(気道)・B(呼吸)障害 | 最優先 (1st) | 数分以内の対応が必要な生命危機 |
| ③ 胸痛、発汗 | 心筋虚血(循環) | C(循環)のリスク大 | 高優先 (2nd) | 心停止リスクはあるが、現時点でBは安定 |
| ① 腹痛、血圧低下 | ショック(循環) | C(循環)障害の初期 | 高優先 (2nd) | 意識清明なので、脳灌流はまだ保たれている |
| ④ 開放骨折 | 整形外科的緊急 | C(出血)はコントロール済み | 中優先 (3rd) | 生命の直接的な脅威ではない |
解剖生理と薬理のポイント
呼吸数8回/分は
徐呼吸 (Bradypnea)であり、脳幹の呼吸中枢の抑制(薬物過量、頭蓋内圧亢進など)や重度の低酸素血症を示唆します。チアノーゼは血液中の酸素化ヘモグロビンが減少し、還元ヘモグロビンが5 g/dL以上になった状態で現れ、末期のサインです。
暗記のコツとゴロ合わせ
優先順位は「
AB-C」で覚えよう! A(気道)とB(呼吸)の問題は、C(循環)の問題よりも常に最優先。ゴロ:「
あ(A)ぶ(B)れる(C)前に助けろ」。
国試頻出ポイント
トリアージの優先順位決定は
超頻出テーマです。複数の患者が提示され、「最初に看護師が対応すべきは誰か」「優先度が高い順に並べよ」という形で出題されます。必ず「ABCの障害」という視点で判断しましょう。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な症状比較から、より複雑なシナリオ(例:災害現場、小児患者、精神症状を伴う患者)での優先度判断へと発展しています。また、「バイタルサインのどの数値が最も緊急性を判断する根拠となるか」を問う問題も増えています。