看護学のコア解説
この問題は、
トリアージ (Triage)の基本原則、特に
優先順位 (Priority setting)の判断について問うています。救急外来では限られたリソースを最も緊急性の高い患者に振り向けることが、患者の生命予後を左右する重要な看護判断です。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージとは、患者の重症度と緊急性に基づいて治療や処置の優先順位を決定するプロセスです。一般的に、
ここがポイント! 生命の危機に直結する状態(
ABC(気道・呼吸・循環)の障害)が最優先(赤タグ、即時対応)となります。その次に、放置すれば重篤化する可能性のある状態(黄タグ、待機時間短縮)、そして軽症で待機可能な状態(緑タグ)が続きます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢①の患者は、「圧迫感のある胸痛」「発汗」「呼吸困難」という症状を示しています。これは典型的な
急性冠症候群 (Acute Coronary Syndrome, ACS)、特に
急性心筋梗塞 (Acute Myocardial Infarction, AMI)を強く示唆する症状です。心筋梗塞は、
冠動脈の閉塞により心筋が壊死に陥る緊急事態であり、
致死性不整脈 (Lethal arrhythmia)や
心原性ショック (Cardiogenic shock)を引き起こし、直ちに生命を脅かします。したがって、
ABCの障害(特に循環)が疑われる最も緊急性の高い患者として、最初にアセスメントすべきです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②の「前腕の深い裂傷と中等度の出血」は、
出血管理 (Hemorrhage control)が必要ですが、直接圧迫などで一時的に止血可能であり、生命の危機は切迫していません。③の「激しい腹痛と吐き気」は、
虫垂炎 (Appendicitis)や
腸閉塞 (Ileus)など重篤な疾患の可能性はありますが、症状発現から6時間経過しており、直ちにABCが崩壊する危険性は①より低いと判断されます。④の「足首骨折の疑いと中等度の疼痛」は、明らかに待機可能な状態(緑タグ)です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージには様々なシステムがありますが、日本の救急現場でも広く用いられているのが
日本版救急トリアージ (Japanese Triage and Acuity Scale, JTAS)や
START法 (Simple Triage and Rapid Treatment)です。いずれも「歩けるか」「呼吸はあるか」「循環(脈拍・出血)はどうか」「意識レベルはどうか」という簡易評価から始め、赤(最優先)~緑(待機可能)に分類します。
概念のまとめ
トリアージの最優先は「生命の危機(ABC障害)」。胸痛+呼吸困難+発汗は心筋梗塞の典型症状で、直ちに循環動態が崩壊する危険性が高い。
一目で比較!
| 優先度 | 色タグ | 状態の例 | 対応 |
|---|
| 最優先 (Immediate) | 赤 | 気道閉塞、呼吸停止、重度のショック、大量出血、意識障害、心筋梗塞症状 | 即時治療 |
| 高優先 (Delayed) | 黄 | 複雑骨折、中等度の出血(制御可能)、激しい腹痛 | 待機時間短縮(1時間以内) |
| 低優先 (Minimal) | 緑 | 軽度の切り傷、捻挫、慢性疾患の軽微な悪化 | 待機可能 |
解剖生理と薬理のポイント
急性心筋梗塞では、冠動脈のプラーク破綻と血栓形成により心筋への血流が途絶え、心筋細胞が壊死します。これにより、
心拍出量 (Cardiac output)が急激に低下し、全身への酸素供給が不足します。疼痛と不安はカテコラミン分泌を促し、心臓の仕事量と酸素需要をさらに増大させ、悪循環に陥ります。最優先の治療は、閉塞血管の再開通(
経皮的冠動脈インターベンション (PCI)や血栓溶解療法)です。
暗記のコツとゴロ合わせ
トリアージの優先順位判断は「
ABCファースト」が鉄則です。また、心筋梗塞の3大症状は「
胸痛・冷や汗・呼吸苦」と覚えましょう。これらが揃った患者は「赤フラグ」です。
国試頻出ポイント
トリアージと優先順位決定は、
ここがポイント! 看護師国家試験の超頻出領域です。特に「複数患者が同時に来院した場合、誰を最初に見るか?」という形式で出題されます。常に「生命の危機に直結するABCの異常」を最優先で探す思考プロセスが試されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単純な症状の列挙から、「バイタルサインの数値(血圧低下、頻脈、SpO2低下など)」が加わった複合的な判断を求められる問題が増えています。また、小児や高齢者では典型的な症状が出にくい(無痛性心筋梗塞など)という点も出題される可能性があります。