看護学のコア解説
この問題は、
災害看護 (Disaster nursing)および
トリアージ (Triage)の基本原則を問うています。多数傷病者発生時 (Multi-casualty incident) における最優先の看護師の行動は何か、という臨床判断力を試しています。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージ (Triage)とは、限られた医療資源(人員、設備、時間)を最大限に活用し、
「最大多数に最大の利益をもたらす」ことを目的とした
優先順位付けのプロセス (Prioritization process)です。災害時や救急外来での混雑時に行われます。その核となるのは、
ここがポイント! 「治療の前に、まず全員を迅速に評価する」という原則です。いきなり一人の患者の治療を開始してしまうと、他のより重篤な患者を見逃し、全体の死亡率を高めてしまう可能性があります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は②「すべての患者を迅速に評価し、治療の優先順位を決定する」です。これが
トリアージの第一歩 (First step of triage)です。具体的には、
START法 (Simple Triage and Rapid Treatment)などの標準化された方法を用いて、呼吸、循環、意識レベルを数十秒で評価し、患者を「緊急(赤)」「準緊急(黄)」「軽症(緑)」「死亡・救命不能(黒)」などのカテゴリーに分類します。この全体的な評価が終わって初めて、誰をどの順番で治療するか、どの患者をどこに搬送するかという
資源配分 (Resource allocation)が可能になります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「最も重篤な患者の即時治療を開始する」:これは通常の救急対応では正しい行動ですが、
多数傷病者発生時には誤りです。一人に集中している間に、他の患者の状態が急変する可能性があり、全体の生存率を下げるリスクがあります。トリアージでは「治療」より「評価と優先順位付け」が先行します。
③「患者評価を始める前に追加の医療スタッフを要請する」:追加要請は重要ですが、
それを待っている間に患者評価を遅らせるべきではありません。到着した看護師は、まず可能な限りでトリアージを開始し、同時に要請を行うべきです。
④「各患者の負傷の詳細な記録を開始する」:詳細な記録は、
トリアージが完了し、治療が開始された後の段階で行うべきです。初期の貴重な時間を詳細な記録に費やすべきではありません。初期には、色分けタグへの簡単なメモなど、最小限の記録で済ませます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージには、災害現場で行う
一次トリアージ (Primary triage)と、病院到着後に行う
二次トリアージ (Secondary triage)があります。この問題は病院到着後のシナリオです。また、小児には
JumpSTART法が用いられます。トリアージの判断は、傷病者の
救命可能性 (Salvageability)に基づいて行われ、極めて重篤で救命に多大な資源を要する患者は、より多くの患者を救える可能性のある患者より優先度が下がることがあります。これは倫理的判断を伴う難しい側面です。
概念のまとめ
・トリアージの目的:限られた資源で最大多数を救う。
・トリアージの第一原則:治療より先に、全員の迅速な評価。
・トリアージの方法:START法(呼吸、循環、意識レベルを簡易評価)。
・優先順位カテゴリー:緊急(赤)→ 準緊急(黄)→ 軽症(緑)→ 死亡/救命不能(黒)。
一目で比較!
| 状況 | 看護師の最初の行動 | 理由 |
|---|
| 通常の救急患者1名 | 患者の即時評価と必要に応じた治療開始 | 資源が1人の患者に集中できるため |
| 多数傷病者発生時 (災害時) | 全患者の迅速な評価(トリアージ) | 限られた資源を最も効果的に配分するため |
解剖生理と薬理のポイント
トリアージ評価では、
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)が基本です。
・
気道 (Airway):開通しているか?
・
呼吸 (Breathing):呼吸回数(
正常: 12-20回/分)は?
・
循環 (Circulation):橈骨動脈の触知、毛細血管再充満時間(
正常: 2秒以内)、意識レベルは?
暗記のコツとゴロ合わせ
トリアージの順番は「
見て分けてから、手を付ける」。まず全体を「見て(評価して)」、重症度で「分けて(分類して)」、その後で治療に「手を付ける」。いきなり治療から始めてはいけません。
国試頻出ポイント
災害看護・トリアージは
国試必須の超重要領域です。特に「最初に取るべき行動」を問う問題が非常に多いです。キーワードは「
迅速な全体評価」と「
治療の優先順位決定」です。START法の具体的な評価基準(例:歩けるか、呼吸があるか、循環は?)も出題されます。
国試出題パターンの変化に注意!
単純に「トリアージで最初に行うことは?」と問うだけでなく、具体的なシナリオ(例:地震、交通事故、テロ事件)の中で、与えられた患者の症状からトリアージカテゴリー(赤・黄・緑・黒)を選択させる問題や、トリアージタグの色の意味を問う問題も頻出です。基本原理を理解していれば応用が利きます。