看護学のコア解説
この問題は、
災害時トリアージ (Disaster Triage)、特に
優先順位決定 (Priority Setting)の基本原則を問うています。緊急時に複数の患者が同時に搬送された場合、看護師は
一次アセスメント (Primary Assessment)を用いて、生命の危機に瀕している患者を迅速に見分け、最優先で処置を開始しなければなりません。
重要概念の分析 (Key Concept)
トリアージの基本は、
ここがポイント!「最も多くの命を救うために、限られたリソースを最も効果的に配分する」ことです。そのために、
ABCアプローチ (Airway, Breathing, Circulation)に基づいた迅速な評価が行われます。この問題では、
JPTT (Japan Prehospital Trauma Triage) や START法 (Simple Triage and Rapid Treatment)の考え方に基づき、
「呼吸」「循環」「意識レベル」に異常がある患者が最優先(赤タグ)となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解の患者①は、
開放性大腿骨骨折 (Open femur fracture)に加え、
血圧 90/60 mmHg(低血圧)、
心拍数 120 bpm(頻脈)、
意識レベル変容 (Altered mental status)を示しています。これは典型的な
出血性ショック (Hemorrhagic shock)の兆候です。大腿骨骨折は大量出血のリスクが高く、低血圧、頻脈は循環不全、意識変容は脳への灌流不足を示しており、
ここがポイント! 直ちに
輸液蘇生 (Fluid resuscitation)や出血コントロールを行わなければ、死に至る可能性が極めて高い状態です。したがって、最優先(赤タグ)となります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ②の患者:
表在性裂傷 (Superficial lacerations)でバイタルサイン安定、意識清明です。これは治療を待つことができる「軽症(緑タグ)」に分類されます。
混同注意! ③の患者:胸痛と呼吸困難がありますが、酸素飽和度が
98%と正常でバイタルサインも安定しています。緊張性気胸や心タンポナーデなど、直ちに致死的となる状態の可能性は低く、二次評価を要する「中等症(黄タグ)」と判断されます。
混同注意! ④の患者:
手関節骨折の疑い (Suspected wrist fracture)で疼痛は強いですが、バイタルサインは正常範囲内です。生命の危険はなく、治療は後回しにできる「軽症(緑タグ)」です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
トリアージタグの色分けを覚えましょう。
赤(最優先):直ちに処置しないと死亡する可能性が高い。
黄(待機的処置):重篤だが、処置が少し遅れても致命的ではない。
緑(軽症):歩行可能で、治療を待つことができる。
黒(死亡/救命不能):呼吸や脈拍がなく、蘇生の見込みがない。
概念のまとめ
・トリアージの目的:限られた資源で最大多数の命を救う。
・優先順位決定の基本:ABC(気道、呼吸、循環)と意識レベルの評価。
・ショックの兆候:低血圧、頻脈、意識変容は危険信号。
一目で比較!
| 患者 | 主な所見 | トリアージ色 | 優先度と理由 |
|---|
| ① 45歳 | 開放骨折、低血圧、頻脈、意識変容 | 赤 (最優先) | 出血性ショックの疑い。直ちに循環を確保しないと死亡リスクが極めて高い。 |
| ③ 25歳 | 胸痛、呼吸困難、SpO2正常 | 黄 (待機的処置) | 致死的状態の可能性は低いが、精査と経過観測が必要な中等症。 |
| ② 30歳 / ④ 60歳 | 表在裂傷 / 単純骨折、バイタル安定 | 緑 (軽症) | 生命に危険はなく、治療を待つことができる。 |
解剖生理と薬理のポイント
・
大腿骨骨折:人体で最も長い骨。骨折により
大腿動脈 (Femoral artery)や周囲の血管を損傷しやすく、
1,000-1,500mLもの大量出血を起こす可能性があります。
・
出血性ショックの病態生理:循環血液量の急激な減少→心拍出量低下→血圧低下→組織灌流不全(特に脳、心臓、腎臓)→意識変容、臓器障害へと進行します。
暗記のコツとゴロ合わせ
トリアージの優先順位は「
赤黄緑黒」の信号機の順番で覚えましょう。また、最優先(赤)の判断基準は「
ABCがヤバイ」とまとめられます。A(気道確保が必要)、B(呼吸が止まっている/極めて浅い)、C(脈が触知できない/極端に弱い)、そして「意識がない」です。
国試頻出ポイント
トリアージと優先順位決定は、
成人看護学(救急)と
基礎看護学(安全の確保)の頻出テーマです。単に「どの患者が重症か」を選ぶだけでなく、「なぜその患者が最優先なのか」を
病態生理 (Pathophysiology)に基づいて説明できるようにしておくことが重要です。
国試出題パターンの変化に注意!
同じ「優先順位」の問題でも、
内科的緊急(心筋梗塞、脳卒中、アナフィラキシーなど)と
外科的・外傷的緊急(骨折、出血、熱傷など)が混在したシナリオで出題されることがあります。常に「生命維持に直結するABCの異常」を第一に探すという基本原則は変わりません。