看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
あなたは外科病棟の看護師です。糖尿病歴10年の68歳男性が、大腸癌による開腹手術を翌朝に控え入院しました。術前血糖値は180 mg/dLです。医師からは「経口薬(メトホルミン)は術前投与中止、血糖管理はインスリン持続静注で行う」との指示が出ています。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント: 現在の血糖値、糖尿病のタイプと治療歴、合併症(特に神経障害・腎症)、術前の栄養状態を確認します。
2.
計画と実施: 医師と協力し、インスリン持続静注(例:5%ブドウ糖液100mLにレギュラーインスリン10単位を混合など)を開始します。ポンプを使用し、一定速度(例:1-2単位/時間)で注入を開始。同時に、
ここがポイント! 頻回の血糖モニタリング(術前・術中・術後は1-2時間毎が望ましい)を実施します。モニタリング結果に基づき、プロトコルに沿ってインスリン注入速度を調整します。
3.
患者教育: 絶食の理由、インスリン注入と頻回の血糖測定の必要性、低血糖症状(発汗、動悸、ふるえ、意識レベルの変化)について説明します。
4.
評価: 血糖値が目標範囲内に保たれているか、低血糖や高度な高血糖のエピソードがないかを継続的に評価します。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
・
混同注意! 低血糖への警戒: 麻酔中は低血糖症状がマスクされます。術中の血糖値は特に注意深くモニタリングします。迅速に利用できるブドウ糖製剤を準備しておきます。
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ラインの確保: インスリン注入用の静脈ラインと、輸液用のラインは別に確保することが理想です。インスリン注入速度が変わらないように注意します。
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腎機能モニタリング: メトホルミン中止後も、術前・術後の腎機能(クレアチニン値)を確認します。
看護処置と与薬フロー
| 段階 | 看護ケア | 根拠・注意点 |
|---|
| 術前 | 経口血糖降下薬の中止確認。インスリン持続静注の開始と血糖頻回測定(1-2時間毎)。 | メトホルミンは乳酸アシドーシスリスクのため中止。厳格な血糖コントロールで術後合併症を予防。 |
| 術中 | 麻酔科医と連携し、血糖を30分-1時間毎に測定。インスリン注入速度を調整。 | ストレスホルモン分泌で血糖上昇。麻酔下では低血糖症状が現れないため、測定が唯一の判断材料。 |
| 術後 | 絶食解除まで継続。経口摂取開始後、経口薬への切り替えを医師と検討。血糖モニタリングを継続。 | 創傷治癒と感染予防のため、術後も血糖管理は継続が重要。食事量に応じてインスリン量を調整。 |
先輩看護師からの一言
「周術期の糖尿病患者さんは、『手術』と『糖尿病』という二つの大きなストレスに同時に立ち向かっています。看護師の役割は、血糖というバイタルサインの一つを“数値”として記録するだけでなく、その変動の“意味”を理解し、医師と連携して最適なコントロールを実現する“調整役”になることです。インスリン注入の速度を変えるたった0.1単位/時間の調整が、患者さんの術後の回復経路を大きく変える可能性があります。国試でも、『何を観察し、何を優先するか』という臨床判断が問われますよ!」