看護臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)
72歳、2型糖尿病の患者さんが、糖尿病性壊疽による膝下切断術(BKA)の予定で入院しています。前日深夜から絶食(NPO)で、術朝6時の血糖値は180 mg/dLでした。患者さんは不安そうで、「お腹も空くし、手術が怖い」と訴えています。
看護介入戦略 (Nursing Intervention)
1.
アセスメント:バイタルサイン(特に意識レベル)、血糖値の推移(1-2時間ごとのモニタリングが望ましい)、口渇、多尿、発汗、手指の震え、脱力感などの低血糖・高血糖症状を観察します。
2.
モニタリングと報告:血糖値が
250 mg/dLを超える、または
70 mg/dLを下回るなどの異常値や、急激な変動を認めた場合は、直ちに医師に報告します。施設のプロトコルに従い、スライディングスケールによるインスリン投与の指示があるか確認します。
3.
安全確保:低血糖リスクが高い場合は、ブドウ糖製剤をベッドサイドに準備します。高血糖が持続する場合は、医師の指示に基づき、インスリン持続静注や補正投与が行われることがあります。
4.
心理的サポート:血糖値が安定してきた段階で、手術の流れや術後のリハビリテーションについて、簡潔でわかりやすい言葉で説明し、不安の軽減に努めます。
患者の安全と注意事項 (Precautions)
絶食(NPO)指示は、麻酔導入時の誤嚥防止のために厳守しなければなりません。たとえ血糖コントロールのためであっても、看護師の判断で水分や食物を許可してはいけません。インスリン投与は、必ず最新の血糖値と医師の調整された指示に基づいて行います。
看護処置と与薬フロー
| 状況 | 看護のポイント | 報告・連絡の目安 |
|---|
| 血糖値モニタリング | 術前は1-2時間毎が理想。穿刺部位をローテーション。結果は直ちに記録。 | 血糖値 250 mg/dL、急激な変動時は医師へ報告。 |
| インスリン投与時 | 絶食中は持効型インスリンのみ継続、超速効型/速効型は調整が必要な場合が多い。投与前の血糖値確認は必須。 | 投与量に疑問がある場合、低血糖症状が出現した場合は直ちに報告。 |
| 低血糖対応 | 意識あり:経口ブドウ糖またはジュース。 意識障害:グルカゴン筋注またはブドウ糖静注(医師の指示に従う)。 | 低血糖発生時、対応後は必ず医師に報告し、原因検討と再発防止策を協議。 |
先輩看護師からの一言
「糖尿病の患者さんの周術期管理で一番怖いのは、『想定外の血糖変動』です。手術という大きなストレスがかかっているのだから、血糖は乱れるものだ、と覚悟を持って頻回にチェックしましょう。数値の変化は、患者さんの体内で起きているストレス反応を教えてくれる『サイン』です。そのサインを見逃さず、早めに医療チームに共有することが、術中の安全と術後の合併症予防に直結します。国試でも『優先順位』を問う問題は多いですが、それは臨床でも同じ。『今、この患者さんにとって最も危険なことは何か?』を常に考えて行動できる看護師になってくださいね!」