91歳の女性。要介護3で特別養護老人ホームに入所している。両膝の変形性関節症があり、歩行は伝い歩き程度である。最近、車椅… | MyMerci
治療を受ける高齢者への看護
問題

91歳の女性。要介護3で特別養護老人ホームに入所している。両膝の変形性関節症があり、歩行は伝い歩き程度である。最近、車椅子からの立ち上がりが困難になってきた。この入所者のリハビリテーションに関する看護師の対応で最も適切なのはどれか。

解説
高齢者の立ち上がり動作の困難さは、車椅子の座面が低すぎることが原因の一つである。座面高を調整することで、立ち上がりに必要な筋力負担を軽減でき、動作の改善が期待できる。1は安静により廃用症候群を進行させる。2は看護師も日常生活動作の維持・向上に積極的に関与すべきである。4は立ち上がり動作には下肢筋力も重要である。5は動作が困難だからといってすぐに使用を中止するのではなく、環境調整や訓練で改善を図る。

詳細解説

核心解説 この問題は、高齢者の日常生活動作(ADL)維持・向上における看護師の役割、特に「廃用症候群の予防」と「環境調整による自立支援」の原則を問うています。対象は要介護3の91歳女性で、変形性関節症 (Osteoarthritis)により立ち上がり動作が困難になっています。看護師は、機能訓練を専門職に丸投げするのではなく、生活環境の調整 (Environmental Modification)や安全な動作の誘導を通じて、残存機能を最大限に活かす支援を行うことが求められます。単に「できない」と諦めるのではなく、なぜ困難になったのかをアセスメントし、介入することが重要です。 正解の根拠 (Answer Rationale) 最重要! 立ち上がり動作が困難になった原因の一つに、車椅子の座面高 (Seat Height)が低すぎることが挙げられます。座面が低いと、立ち上がるために必要な股関節・膝関節の屈曲角度が大きくなり、筋力への負担が増大します。座面高を調整して足裏がしっかり地面に着き、膝関節が90度程度になる高さに設定することで、立ち上がりに必要な下肢筋力の負担が軽減され、動作の改善が期待できます。これは、高齢者の生活機能を維持するための基本的かつ効果的な看護介入です。 誤答の分析 (Distractor Analysis) 1. 立ち上がり動作訓練は理学療法士に任せ、看護師は関与しない誤り。看護師は、リハビリテーションの専門職と連携しつつ、日常生活のあらゆる場面(移乗、食事、排泄など)でADL訓練を支援する役割があります。訓練を任せきりにすることは、看護師の役割放棄にあたります。 2. 立ち上がり動作は無理に行わせず、ベッド上安静を指示する誤り。安静は廃用症候群 (Disuse Syndrome)を進行させ、筋力低下や関節拘縮、生活意欲の低下を招きます。可能な限り自立した動作を促す方向で支援すべきです。 3. 立ち上がり動作の代わりに、上肢のみの筋力訓練を指導する誤り。立ち上がり動作には下肢筋力(特に大腿四頭筋・臀筋)が不可欠です。上肢訓練のみでは立ち上がり動作の改善には直結せず、全体的な機能維持のバランスを欠きます。 5. 立ち上がり動作が困難になったため、ポータブルトイレの使用を中止する誤り。動作が困難になったからといって、すぐに使用を中止するのは「諦めの介護」です。まずは原因を探り(座面高、足元の滑り止め、疼痛の有無など)、環境調整や補助具の活用、動作指導で改善を図るべきです。中止は最終手段です。 概念整理: この問題の核心は「高齢者のADL維持と環境調整」。廃用症候群を予防し、QOLを維持するために、看護師は生活環境を評価し、安全で自立した動作を支援する。車椅子のフィッティング(座面高、座面奥行き、フットレストの高さ)は基本的な看護技術の一つです。 一目で比較!:
項目誤った対応適切な対応
動作困難への対応安静指示 / 中止原因分析 + 環境調整
リハビリへの関与専門職任せ多職種連携 + 生活場面での支援
訓練の内容上肢のみ下肢を含めた全体的な機能維持
看護過程ポイント: - アセスメント (Assessment): なぜ立ち上がれないのか?筋力低下、関節痛、バランス障害、環境要因(車椅子の高さ、床の滑りやすさ)、心理的要因(転倒恐怖)の多角的評価。 - 看護診断 (Nursing Diagnosis): 「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」関連因子:変形性関節症による疼痛・筋力低下、環境調整不足。 - 計画・実施 (Planning & Implementation): 車椅子の座面高調整、足元の安全確保(滑り止めマット)、移乗動作の指導、疼痛コントロール、理学療法士との連携。 - 評価 (Evaluation): 立ち上がり動作の自立度、転倒発生の有無、疼痛の程度、本人の満足度。 暗記のコツ: 「できない理由を探せ!」と覚えましょう。高齢者が何かできなくなった時は、「もう歳だから」と諦める前に、「なぜできないのか」を環境・身体・心理の3つの視点で探すのが看護師の役目です。車椅子の座面高は「足裏がベッタリ、膝は90度」が基本。 国試頻出ポイント: 高齢者のADL低下への対応は頻出。特に「車椅子の座面高調整」「移乗動作の介助方法」「転倒予防のための環境整備」「廃用症候群予防」は、事例問題で必ずと言っていいほど問われます。「できないからやらせない」ではなく、「できるように環境を整える」という発想が問われます。 出題パターン注意!: 単純な知識問題から、「この患者さんに適切な車椅子の高さは何cmか?」といった具体的な数値問題や、「事例を読んで、看護師が最初に行うべき対応はどれか?」という判断を問う状況設定問題に発展します。常に「なぜこの介入が必要か」を考えましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 特別養護老人ホームで勤務する看護師のあなた。夜勤明けの朝、92歳の入所者Aさん(要介護4、車椅子使用)が「トイレに行きたい」とナースコールを押しました。車椅子から立ち上がろうとしますが、ふらつきが強く、立ち上がれそうにありません。Aさんは「昨日まではできたのに…」と落ち込んでいます。あなたはどのようにアセスメントし、対応しますか? 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察 (Observe): バイタルサイン(血圧、脈拍)、意識レベル、疼痛の有無、車椅子の座面高と足の位置、床の状態、Aさんの表情。 2. アセスメント (Assess): 「座面が低すぎて立ち上がれないのではないか?」「昨晩の睡眠不足で疲労が溜まっているかも?」「変形性関節症の痛みが増強していないか?」と仮説を立てる。 3. 報告・相談 (Report/Consult): 座面高が明らかに低いと判断した場合、まずはその場で調整可能なクッションや高さ調整機能で対応。調整後も困難であれば、理学療法士やケアマネジャーに相談し、車椅子の買い替えや座位保持装置の検討を行う。 4. 介入 (Intervene): 最重要! 車椅子の座面に厚めのクッションを敷き、足底がしっかり床に着くように調整します。Aさんの腰を支えながら、「一緒にやってみましょう」と声をかけ、立ち上がりのタイミングを合わせます。転倒に備えて、立ち上がったらすぐに車椅子のストッパーとフットレストが安全であることを確認します。 5. 評価 (Evaluate): 調整後、Aさんは「さっきより立ちやすいわ」と笑顔でトイレに行くことができました。この経験を基に、Aさんに合った車椅子の高さを記録し、ケアカンファレンスで情報共有します。 看護プロトコル: 観察項目:車椅子の座面高(膝関節角度が90度か)、足底接地の状態、立ち上がり時のバランス、疼痛の有無(Numerical Rating Scaleなど)、転倒リスク評価(STRATIFYなど)。報告基準(SBAR):S(状況)「Aさん、車椅子からの立ち上がりが困難です」、B(背景)「変形性関節症があり、座面が低い可能性があります」、A(アセスメント)「座面調整で改善する可能性があります」、R(提案)「クッションで高さを調整し、経過観察します」。 先輩看護師の一言: 「高齢者の『できない』は、身体の衰えだけが原因じゃないんです。環境が合っていない、痛みがある、気持ちが落ち込んでいる…いろんな理由が隠れています。私たち看護師は、その『理由探し』のプロ。車椅子の高さ一つ変えるだけで、笑顔が戻る患者さんをたくさん見てきました。国試でも現場でも、『なぜできないんだろう?』と考えるクセをつけてくださいね!」

重要概念

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