核心解説
この問題は、
大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture) 術後の高齢患者における
関節拘縮 (Joint Contracture) 予防のための適切な看護介入を問うています。高齢者は術後安静による廃用症候群(Disuse Syndrome)のリスクが高く、特に
関節可動域訓練 (Range of Motion, ROM訓練) を計画的に実施することが重要です。この問題の核心は、「予防」の観点から、どのような介入が最も効果的かつ安全かを判断することです。
最重要! 術後早期の安静指示下では、
他動的関節可動域訓練 (Passive ROM Exercise) が基本となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は④番です。大腿骨頸部骨折術後は、人工骨頭置換術やスクリュー固定など術式によりますが、一般的に術後早期は
股関節の脱臼予防 や
創部の安静 が優先されます。しかし、完全な安静は
関節包や靭帯の短縮、筋萎縮、結合組織の線維化 を引き起こし、関節拘縮の原因となります。他動的ROM訓練(特に股関節の屈曲・伸展)を1日2回行うことは、関節の滑走性を維持し、拘縮予防に効果的です。ただし、この際、術式によっては
混同注意! 股関節の
90度以上の屈曲、内転、内旋 は脱臼を誘発するため禁忌であり、安全な可動域内で実施する必要があります。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番:足関節に重錘を装着し持続的に伸展させる →
混同注意! これは
足関節拘縮の治療 や
下垂足 (Foot Drop) の予防ではなく矯正目的で用いられることがありますが、予防の第一選択ではありません。また、持続的な伸展は筋の過緊張や血流障害を招くリスクがあります。
②番:ベッド上で下肢全体を挙上したまま安静を保つ → これは
浮腫 (Edema) の軽減や
安静の維持 には有効ですが、関節拘縮の予防にはなりません。むしろ、長期間の安静は拘縮を促進します。
③番:足関節の他動的背屈・底屈運動を1日1回行う → 回数が不十分です。拘縮予防には
1日2回以上、各関節を
全可動域 (Full ROM) で動かすことが推奨されます。
⑤番:膝関節の完全伸展位での固定を継続する →
最も危険な選択肢です。 膝関節を伸展位で固定し続けると、膝窩筋やハムストリングスの短縮、関節包の癒着を引き起こし、強固な伸展拘縮を生じます。拘縮予防とは真逆の介入です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
関節拘縮予防と
廃用症候群 (Disuse Syndrome) の予防は密接に関連します。予防策としては、他動的ROM訓練に加え、
体位変換 (Positioning)、
良肢位の保持、
筋萎縮予防のための等尺性運動 (Isometric Exercise)(医師の指示に基づき)などが組み合わされます。また、高齢者の場合、
せん妄 (Delirium) や
転倒リスク にも注意が必要です。
概念整理: 関節拘縮予防の基本は
1. 他動的ROM訓練(1日2回以上) と
2. 良肢位の保持 です。完全な安静は拘縮を促進するため、安静指示下でも可能な範囲で介入を計画します。
一目で比較!:
| 介入 | 目的 | 適否 |
|---|
| 他動的ROM訓練 | 関節可動域維持・拘縮予防 | 適切 |
| 持続的伸展装具 | 既存の拘縮治療 | 予防には不適切 |
| 完全固定・安静 | 創部保護・疼痛緩和 | 長期間は拘縮促進 |
看護過程ポイント:
アセスメント:術式と安静度制限、患者の年齢・全身状態・疼痛レベルを確認。
計画:医師の指示範囲内で、安全なROM訓練の回数・可動域・時間を計画。
実施:痛みが出現しない範囲で、ゆっくりと他動的運動を実施。介助量や患者の反応を評価。
評価:関節可動域の維持・改善、疼痛の有無、拘縮の兆候(抵抗感・可動域減少)の有無。
暗記のコツ: 「動かさなければ固まる(拘縮)」と覚えましょう。「関節は使わなければ固まる」→
「不動による拘縮」。予防には
「動かすこと(ROM訓練)」 が必須です。
国試頻出ポイント: 大腿骨頸部骨折術後、人工股関節全置換術(THA)後、脳卒中後の片麻痺など、不動状態が続く患者の拘縮予防・廃用症候群予防の介入が頻出です。特に「他動的ROM訓練」「体位変換」「良肢位」の3点はセットで覚えましょう。
出題パターン注意!: 単純な「ROM訓練の目的」を問う問題から、事例問題(例:「術後3日目、疼痛が強いためROM訓練を拒否する患者への対応」)への発展型が出題されます。安全と予防のバランスが問われます。