85歳の女性。大腿骨頸部骨折術後2日目。ベッド上で安静指示が出ている。看護師が関節拘縮予防のために行う対応として適切なの… | MyMerci
治療を受ける高齢者への看護
問題

85歳の女性。大腿骨頸部骨折術後2日目。ベッド上で安静指示が出ている。看護師が関節拘縮予防のために行う対応として適切なのはどれか。

解説
術後安静中でも関節拘縮予防には、関節可動域訓練(ROM訓練)を定期的に行うことが重要である。特に股関節や膝関節の他動的運動は、関節包や靭帯の短縮を防ぐ効果がある。1は回数が不十分であり、2は拘縮を促進する。4は安静のみで予防効果は低い。5は持続伸展は拘縮予防ではなく拘縮治療に用いる方法である。

詳細解説

核心解説 この問題は、大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture) 術後の高齢患者における 関節拘縮 (Joint Contracture) 予防のための適切な看護介入を問うています。高齢者は術後安静による廃用症候群(Disuse Syndrome)のリスクが高く、特に 関節可動域訓練 (Range of Motion, ROM訓練) を計画的に実施することが重要です。この問題の核心は、「予防」の観点から、どのような介入が最も効果的かつ安全かを判断することです。最重要! 術後早期の安静指示下では、他動的関節可動域訓練 (Passive ROM Exercise) が基本となります。 正解の根拠 (Answer Rationale) 正解は④番です。大腿骨頸部骨折術後は、人工骨頭置換術やスクリュー固定など術式によりますが、一般的に術後早期は 股関節の脱臼予防創部の安静 が優先されます。しかし、完全な安静は 関節包や靭帯の短縮、筋萎縮、結合組織の線維化 を引き起こし、関節拘縮の原因となります。他動的ROM訓練(特に股関節の屈曲・伸展)を1日2回行うことは、関節の滑走性を維持し、拘縮予防に効果的です。ただし、この際、術式によっては 混同注意! 股関節の 90度以上の屈曲、内転、内旋 は脱臼を誘発するため禁忌であり、安全な可動域内で実施する必要があります。 誤答の分析 (Distractor Analysis) ①番:足関節に重錘を装着し持続的に伸展させる → 混同注意! これは 足関節拘縮の治療下垂足 (Foot Drop) の予防ではなく矯正目的で用いられることがありますが、予防の第一選択ではありません。また、持続的な伸展は筋の過緊張や血流障害を招くリスクがあります。 ②番:ベッド上で下肢全体を挙上したまま安静を保つ → これは 浮腫 (Edema) の軽減や 安静の維持 には有効ですが、関節拘縮の予防にはなりません。むしろ、長期間の安静は拘縮を促進します。 ③番:足関節の他動的背屈・底屈運動を1日1回行う → 回数が不十分です。拘縮予防には 1日2回以上、各関節を 全可動域 (Full ROM) で動かすことが推奨されます。 ⑤番:膝関節の完全伸展位での固定を継続する → 最も危険な選択肢です。 膝関節を伸展位で固定し続けると、膝窩筋やハムストリングスの短縮、関節包の癒着を引き起こし、強固な伸展拘縮を生じます。拘縮予防とは真逆の介入です。 関連概念の整理 (Related Concepts) 関節拘縮予防と 廃用症候群 (Disuse Syndrome) の予防は密接に関連します。予防策としては、他動的ROM訓練に加え、体位変換 (Positioning)良肢位の保持筋萎縮予防のための等尺性運動 (Isometric Exercise)(医師の指示に基づき)などが組み合わされます。また、高齢者の場合、せん妄 (Delirium)転倒リスク にも注意が必要です。 概念整理: 関節拘縮予防の基本は 1. 他動的ROM訓練(1日2回以上)2. 良肢位の保持 です。完全な安静は拘縮を促進するため、安静指示下でも可能な範囲で介入を計画します。
一目で比較!:
介入目的適否
他動的ROM訓練関節可動域維持・拘縮予防適切
持続的伸展装具既存の拘縮治療予防には不適切
完全固定・安静創部保護・疼痛緩和長期間は拘縮促進

看護過程ポイント: アセスメント:術式と安静度制限、患者の年齢・全身状態・疼痛レベルを確認。計画:医師の指示範囲内で、安全なROM訓練の回数・可動域・時間を計画。実施:痛みが出現しない範囲で、ゆっくりと他動的運動を実施。介助量や患者の反応を評価。評価:関節可動域の維持・改善、疼痛の有無、拘縮の兆候(抵抗感・可動域減少)の有無。
暗記のコツ: 「動かさなければ固まる(拘縮)」と覚えましょう。「関節は使わなければ固まる」→ 「不動による拘縮」。予防には 「動かすこと(ROM訓練)」 が必須です。
国試頻出ポイント: 大腿骨頸部骨折術後、人工股関節全置換術(THA)後、脳卒中後の片麻痺など、不動状態が続く患者の拘縮予防・廃用症候群予防の介入が頻出です。特に「他動的ROM訓練」「体位変換」「良肢位」の3点はセットで覚えましょう。
出題パターン注意!: 単純な「ROM訓練の目的」を問う問題から、事例問題(例:「術後3日目、疼痛が強いためROM訓練を拒否する患者への対応」)への発展型が出題されます。安全と予防のバランスが問われます。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 85歳女性、転倒による左大腿骨頸部骨折(人工骨頭置換術後1日目)。術後安静指示(股関節90度以上の屈曲・内転・内旋は禁止)。創部痛はあるが、バイタルサインは安定。夜間、患者から「足が動かしづらい、固まっている感じがする」と訴えあり。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): まずは 最重要! 観察:バイタルサイン、創部の状態(出血・腫脹・疼痛)、下肢の色調・温感・知覚・動き(末梢循環評価)。次に アセスメント:安静による筋緊張亢進や関節のこわばりが疑われる。医師の指示範囲内で、他動的ROM訓練(股関節屈曲・伸展、膝関節屈曲・伸展、足関節背屈・底屈) を1日2回計画し実施。疼痛が強い場合は鎮痛薬(例:アセトアミノフェン)の投与を医師に相談してから実施。実施中は 「痛みが出たらすぐ教えてくださいね」 と声をかけ、患者の表情や発言に注意。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 絶対禁忌動作:股関節90度以上の屈曲(深く腰掛ける、しゃがむ)、内転(足を組む)、内旋(つま先を内側に向ける)。脱臼の危険徴候:急な股関節痛、脚長差の出現、下肢の外旋位固定。これらを認めた場合は直ちに医師へ報告し、患肢の安静を保持。転倒転落予防:ベッド柵の使用、ナースコールの手元配置、必要時は抑制具の使用を検討(ただし倫理的に慎重に)。
看護プロトコル: 観察項目:術創部の疼痛(NRS: Numeric Rating Scale)、下肢の腫脹・発赤・熱感、末梢動脈の触知(足背動脈)、感覚(しびれの有無)、自動運動の可否。**報告基準(SBAR)**:S:「〇〇患者、術後2日目、安静指示中」B:「夜間、『足が固まっている』と訴えあり」A:「拘縮予防のためのROM訓練を実施したが、股関節の可動域に制限感あり」R:「訓練の継続可否と回数増加の指示を仰ぎたい」。**記録**:訓練の内容(他動/自動、関節名、可動域角度)、患者の反応(疼痛の有無、表情、拒否の有無)。
先輩看護師の一言: 「拘縮予防は『動かさないことのリスク』を理解することがスタートです。特に高齢者は1日の安静で関節が固まり始めます。『痛いから動かさない』ではなく、『安全に動かす方法』を考えましょう。術後の安静指示をしっかり把握し、禁忌動作を外さない範囲で、積極的に関節を動かしてあげてください。患者さんの『動かしづらい』というサインを見逃さないことが、プロの看護師です!」

重要概念

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