核心解説
この問題は、
脳梗塞 (Cerebral Infarction) 回復期におけるリハビリテーション看護の優先順位を問うています。ポイントは、
Brunnstrom stage (回復段階) と現在の機能レベル(座位安定、立位介助必要)から、患者の「できるADL」と「実際の生活場面で必要なADL」を結びつける看護計画を立てることです。単に運動機能の向上だけでなく、
日常生活動作 (ADL: Activities of Daily Living) の自立度を高めることが回復期リハビリテーションの核心目標です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 本患者は発症後3週間、回復期に移行した段階です。Brunnstrom stageは下肢IV(分離運動可能)、上肢III(共同運動パターン内で随意運動可能)、手指III(集団的把握可能)であり、座位は安定していますが立位は介助が必要です。このプロフィールから、
最も優先すべき課題は、生活の基盤となる移乗動作の獲得(ベッド⇔車椅子)であると判断できます。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 回復期リハビリテーションでは、病棟生活の質を高める「生活動作」の獲得が最優先です。座位が安定し下肢に分離運動が出現した本患者では、
車椅子への自力移乗動作の獲得は現実的かつ優先度の高い目標です。これにより、患者の活動範囲が広がり、意欲向上や社会参加への準備にもつながります。看護師は移乗動作の練習を安全に支援し、成功体験を積ませることが重要です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番(麻痺側上肢の装具作製):
混同注意! 上肢装具は回復が停滞した場合や、重度の麻痺で関節拘縮予防が必要な場合に検討します。本患者は上肢III(随意運動可能)であり、まずは運動機能訓練が優先され、装具は次の段階です。
- ②番(非麻痺側下肢の筋力増強訓練):非麻痺側の強化は重要ですが、
ADL獲得という具体的目標(移乗・歩行)を達成するための手段の一つであり、最優先の目標ではありません。
- ③番(関節可動域訓練の頻度減):これは誤りです。回復期では関節拘縮予防と廃用症候群防止のため、
週2回では不十分です。毎日継続的なROM訓練が必要です。
- ⑤番(麻痺側下肢への全荷重歩行訓練):
混同注意! 立位保持が介助必要な段階で全荷重歩行は危険です。転倒リスクが高く、まずは平行棒内での部分荷重訓練や立位バランス訓練から段階的に進めるべきです。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): Brunnstrom stageの各段階(弛緩期→痙性出現→共同運動→分離運動→協調運動)に応じたリハビリ目標と看護介入を理解しておきましょう。また、
回復期リハビリテーション病棟の特徴(多職種連携:PT・OT・ST・Ns・MSW、ADL訓練中心、在宅復帰支援)も併せて押さえてください。
概念整理: Brunnstrom stage 下肢IV(分離運動可能)+座位安定+立位介助必要 → 移乗動作獲得に最適な時期。この段階では「歩行」より「移乗」の自立が優先される。
一目で比較!:
| 段階 | 主な目標 | 看護介入例 |
| 急性期(発症~2週) | 生命維持・二次予防・拘縮予防 | ポジショニング、他動的ROM、嚥下評価 |
| 回復期(~6ヶ月) | ADL拡大・機能向上・在宅復帰 | 移乗訓練、起居動作、自主練習指導 |
| 維持期(6ヶ月~) | 生活の質維持・再発予防 | 生活指導、運動継続支援、社会資源活用 |
看護過程ポイント:
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アセスメント: Brunnstrom stage、筋力、バランス、感覚、高次脳機能、意欲・心理状態
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看護診断: 「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」、「セルフケア不足 (Self-Care Deficit)」、「転倒リスク (Risk for Falls)」
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計画・実施: 患者のペースに合わせた移乗練習の実施、安全な環境整備、成功体験の積み重ね
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評価: 移乗動作の自立度、転倒発生の有無、患者の満足度・意欲の変化
暗記のコツ: Brunnstrom stageは「下(下肢)が先に回復し、上(上肢)は遅れる」と覚えましょう。下肢IVなら「分離運動可能=一人で足を動かせる」→移乗の練習ができると連想。
国試頻出ポイント: 回復期リハビリテーション病棟での看護計画の優先順位(ADL獲得>機能訓練単独)、Brunnstrom stageと看護介入のマッチングが出題されます。事例問題でよく出るので、機能評価から優先介入を導く練習をしておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(「Brunnstrom stage IVで正しいのは?」)から、事例問題(「この患者の優先看護計画は?」)への発展が頻繁に見られます。機能評価を「生活動作にどう活かすか」の視点で捉えましょう。