82歳の女性。変形性膝関節症に対して人工膝関節全置換術を施行した。術後2日目、ドレーンは抜去され、創部の状態は良好である… | MyMerci
治療を受ける高齢者への看護
問題

82歳の女性。変形性膝関節症に対して人工膝関節全置換術を施行した。術後2日目、ドレーンは抜去され、創部の状態は良好である。膝関節の自動屈曲角度が50度である。この患者のリハビリテーションについて正しいのはどれか。

解説
人工膝関節全置換術後は、早期から自動関節可動域訓練を積極的に行うことで、屈曲拘縮を予防し、良好な可動域を獲得できる。術後2日目で自動屈曲50度であれば、さらなる可動域拡大を目指して訓練を進める。1は拘縮の原因となる。2はCPMは通常術後早期から使用し、自動運動が可能になっても継続することが多い。4は近年の術式では早期荷重が推奨される。5は屈曲制限は医師の指示に従う。

詳細解説

核心解説 この問題は、人工膝関節全置換術 (Total Knee Arthroplasty, TKA) の術後リハビリテーションについての正しい知識を問うています。TKA後は、関節の機能回復と拘縮予防が最大の目標であり、術後早期からの適切な可動域訓練と荷重開始が重要です。術後2日目で自動屈曲 (Active Flexion) が50度という状態は、リハビリが順調に進んでいることを示しています。 1. 正解の根拠 (Answer Rationale): ⑤ 最重要! 膝関節の自動屈曲訓練を積極的に進める TKA後は、早期から自動関節可動域訓練 (Active Range of Motion, AROM) を積極的に行うことで、関節包や靭帯の癒着を予防し、良好な最終可動域を獲得することができます。術後2日目で自動屈曲50度であれば、痛みや腫脹が許す範囲で、さらなる可動域拡大を目指して訓練を積極的に進めるのが標準的です。 2. 誤答の分析 (Distractor Analysis): - ① 混同注意! 「膝関節の屈曲は90度まで許可する」: 術直後は過度な屈曲を避ける時期もありますが、術後2日目で自動屈曲50度が達成できている患者に対し、無理に「90度まで」と制限する必要はありません。むしろ、痛みに応じて徐々に屈曲角度を拡大していくことが重要です。過度な制限は屈曲拘縮の原因となります。 - ② 「膝関節の完全伸展位での安静を指示する」: 完全伸展位での安静を指示すると、関節の固定が長引くことで関節包や軟部組織の癒着を招き、可動域制限や機能回復の遅れにつながります。術後は、自動・他動に関わらず、早期から可動域訓練を開始することが推奨されます。 - ③ 混同注意! 「荷重は術後4週間まで禁止する」: 近年のTKA手術では、強固な固定が得られるセメント固定やセメントレス固定が主流であり、術後早期(翌日~2日目)からの部分荷重や全荷重が推奨されています。4週間もの長期にわたる免荷は、筋力低下や廃用症候群を引き起こすため、現在の標準的ケアではありません。 - ④ 「持続的他動運動装置(CPM)を中止する」: CPM (Continuous Passive Motion) は術後早期の他動的可動域訓練に有効であり、自動運動が可能になった後も、可動域の維持・拡大のために継続して使用されることが一般的です。この患者では、自動屈曲50度の状態であり、CPMを積極的に活用することでさらなる可動域拡大を図るべきです。 3. 関連概念の整理 (Related Concepts): 人工膝関節全置換術 (TKA) の術後リハビリテーションの基本原則は「早期離床」と「早期可動域訓練」です。術直後からCPMによる他動運動を開始し、痛みが軽減したら自動運動へと移行します。荷重は、術式や患者の状態に応じて早期(翌日~2日目)から部分荷重を開始し、徐々に全荷重へと進めます。また、リハビリテーションは、理学療法士と連携し、患者の疼痛・腫脹・創部状態を評価しながら進めることが重要です。
概念整理: TKA術後リハビリテーションの原則
項目内容
目標疼痛除去、関節機能(可動域・筋力)の回復、ADLの早期自立
可動域訓練術翌日からCPM開始。自動運動が可能になったら積極的にAROM訓練を実施(痛みの範囲内で最大限の可動域獲得を目指す)
荷重開始術後1~2日目から歩行器や松葉杖を使用した部分荷重開始。術式や骨質により異なるが、早期荷重が標準
禁忌事項術後急性期の過度な屈曲・伸展(創離開や脱臼のリスク)、長期間の固定・安静

一目で比較!: TKA vs 人工股関節全置換術 (THA) のリハビリ比較
項目TKATHA
最大のリスク屈曲拘縮 (Flexion Contracture)脱臼 (Dislocation)
禁忌肢位特になし(ただし過伸展に注意)股関節の屈曲・内転・内旋の組み合わせ(L字型の姿勢)
可動域訓練の優先度屈曲訓練が最優先(伸展は比較的自動で獲得しやすい)股関節周囲筋(特に中殿筋)の筋力強化が優先
荷重制限早期全荷重が可能なことが多いセメントレスでは部分荷重期間あり

看護過程ポイント:
アセスメント: 術後2日目の創部状態(発赤・腫脹・排液・疼痛)、バイタルサイン、下肢の血行状態(皮膚色・温度・末梢動脈触知)、自動屈曲角度、患者の痛みの程度(NRS: Numeric Rating Scale)と疲労度を評価。
看護診断: 「術後の可動域制限リスク状態 (Risk for Impaired Physical Mobility)」、「急性疼痛 (Acute Pain)」、「セルフケア不足(入浴・更衣など)リスク状態」
計画・実施: 医師の指示のもと、理学療法士と連携し、CPMの設定角度・時間、自動運動の方法(座位での膝屈伸訓練、ベッド上での膝伸展訓練など)を計画。疼痛時は鎮痛薬投与のタイミングを調整し、リハビリが効果的に進むよう支援。患者に訓練の意義を説明し、自主訓練の動機づけを行う。
評価: 自動屈曲角度の経時的変化(目標: 退院時90度以上)、疼痛の程度、ADL自立度(歩行・トイレ・更衣など)を評価。
暗記のコツ: TKA術後のリハビリは「3つのE」で覚えよう!
- Early (早期) : 早期離床、早期可動域訓練
- Extension (伸展) + Flexion (屈曲) : 特に屈曲訓練が重要。伸展は自動で獲得しやすい。
- Exercise (運動) : 自動運動が基本。CPMは補助的に使用。
国試頻出ポイント: TKA術後は、「早期からの自動可動域訓練の積極的実施」が繰り返し出題されます。また、THAとの比較(特に禁忌肢位や荷重制限の違い)も頻出なので、必ず整理しておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(例:TKA術後リハビリで正しいのはどれか)から、事例問題(例:術後3日目の患者、自動屈曲60度、CPM設定中、痛みの訴えあり→看護師の対応で適切なのはどれか)へ発展します。患者の状態とリハビリの段階を結びつけて考えられるようにしておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド この概念が実際の整形外科病棟でどのように適用されるかをリアルに説明します。 - 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 「82歳女性、TKA術後2日目。ドレーン抜去。創部は乾燥し発赤・腫脹は軽度。自動屈曲50度。CPMは90度に設定され、午前・午後各2時間使用中。患者は『膝が曲がらなくなるのが怖い』と不安を訴えています。本日より歩行器歩行を開始する予定です。看護師として、どのようなリハビリ指導とケアを提供すべきでしょうか?」 - 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察・アセスメント: まず、患者のバイタルサイン、創部の状態(発赤・腫脹・滲出液の有無)、疼痛レベル(NRS)、末梢循環状態(足背動脈の触知、皮膚色、感覚)を確認。痛みが強い場合は、リハビリ前に鎮痛薬を投与するよう医師に相談する。患者の不安の内容(痛みへの恐怖、可動域制限への不安)を傾聴する。 2. 報告・指示受け (SBAR): 理学療法士(PT)と情報共有。「S: 患者は自動屈曲50度、疼痛NRS 3/10。B: 術後2日目のTKA。A: 歩行器歩行開始。R: リハビリ中の疼痛管理と安全な移動方法について指導をお願いします。」 3. 介入・指導: 最重要! 患者に「膝は曲げないと固まってしまいます。今日から少しずつ自分で曲げる練習をしていきましょう。無理は禁物ですが、痛み止めを使って積極的に動かすことが回復への近道です。」と説明し、自主訓練(座位での膝の屈伸運動、仰臥位での踵滑り運動など)を指導する。CPMは継続し、角度をPTと相談しながら徐々に拡大する。歩行器歩行は、PTと協力し、安全な立ち上がり動作と歩行方法を指導する。転倒予防のため、歩行器の高さ調整と周囲の環境整備(コード類の整理、スリッパではなく靴の着用)を行う。 4. 評価: リハビリ後の疼痛の変化、自動屈曲角度の推移、歩行の安定性を評価。患者の不安が軽減し、自主訓練に積極的に取り組めるよう支援する。 - 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): - 転倒・転落リスク (Fall Risk): 高齢者で術後は筋力低下やバランス障害があり、歩行器歩行開始時は特に注意。ナースコールの位置確認と使用指導、ベッド柵の使用を徹底。 - 創部感染リスク (Surgical Site Infection Risk): 創部の発赤、腫脹、滲出液の増加、発熱の有無を観察。ドレーン抜去後も創部の清潔を保つよう指導。 - 深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis, DVT): TKA術後はDVTの高リスク。下肢の腫脹・疼痛・発赤(Homan's徴候)の観察、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置(IPC)の装着、早期離床による予防が重要。 - 疼痛管理: リハビリの妨げにならないよう、適切な鎮痛薬の投与(定期・頓用)を医師と調整する。患者が痛みを我慢しすぎないよう指導。
看護プロトコル:
- 観察項目: バイタルサイン、創部状態(創部長・ドレーン排液・縫合糸の状態)、下肢の血行状態、自動・他動可動域、疼痛レベル(NRS)、ADL自立度(歩行・トイレ・更衣)、患者の心理状態(不安・意欲)
- 報告基準 (SBAR):
S (Situation): 「〇〇患者さん、TKA術後2日目です。自動屈曲が50度で、昨日より10度改善しました。」
B (Background): 「創部に問題はなく、疼痛コントロールは良好です。」
A (Assessment): 「本日より歩行器歩行を開始予定です。転倒予防とDVT予防に注意が必要です。」
R (Recommendation): 「リハビリ中の疼痛管理と安全な移動方法について、PTと連携して進めていきます。」
- 記録のポイント: 自動屈曲角度、疼痛スケール、CPMの設定角度と使用時間、歩行の自立度(見守り・一部介助・自立)、患者のリハビリに対する反応(意欲・不安の有無)
先輩看護師の一言: 「TKAの患者さんは、『痛いから動かしたくない』と言うことが多いですが、私たち看護師が『動かさないと固まってしまうよ』と根拠を説明し、勇気づけることがとても大切です。リハビリは理学療法士と協力して、患者さんが安心して取り組める環境を作ってあげてくださいね。患者さんの『膝が曲がるようになった!』という笑顔が、何よりのやりがいになります!」

重要概念

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