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治療を受ける高齢者への看護
79歳の女性。右片麻痺(Brunnstrom stage 上肢II、手指I、下肢III)で、車椅子での生活をしている。施設入所中である。この患者の関節拘縮予防のためのポジショニングとして適切なのはどれか。
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1
麻痺側肩関節は外転位に保持する
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2
麻痺側手指は伸展位で手掌を開いた状態を保つ
✓ 正解
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3
麻痺側上肢は肩関節を内旋位に保持する
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4
麻痺側手指は握らせたタオルを把持させる
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5
麻痺側肘関節は伸展位で固定する
解説
片麻痺患者の上肢は、屈筋優位の痙性が生じやすいため、手指は伸展位で手掌を開いた状態(手掌を上に向けた背屈位)を保つことで、手指の屈曲拘縮を予防できる。1は肩関節内旋位は拘縮を促進する。2はタオルを握らせると屈曲拘縮を助長する。3は肘関節は軽度屈曲位で保持することが多い。4は肩関節外転位は亜脱臼予防にはなるが、拘縮予防としては適切な肢位は中間位である。
同じテーマの次の問題85歳の女性。大腿骨頸部骨折術後2日目。ベッド上で安静指示が出ている。看護師が関節拘縮予防のために行う対応として適切なのはどれか。この問題が収録された問題集老年看護学KRW 12,900
核心解説
この問題は、脳血管障害 (Cerebrovascular Disease) による右片麻痺患者の 関節拘縮予防 (Contracture Prevention) における適切なポジショニングを問うています。ポイントは、痙性麻痺 (Spastic Paralysis) の特徴を理解することです。特に上肢は 屈筋優位 のパターン(肩関節内転・内旋、肘関節屈曲、手関節掌屈、手指屈曲)で拘縮しやすいため、その逆の肢位(抗痙性肢位)を保持することが予防につながります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②「麻痺側手指は伸展位で手掌を開いた状態を保つ」が正解です。手指の屈筋群は非常に強く、自然に手掌を握り込むような状態(把握反射 (Grasp Reflex) の亢進も関連)になりやすいため、手指伸展位・手掌開大位(手掌を上に向けた背屈位)を保持することで、手指の屈曲拘縮(いわゆる「こぶし」の状態)を効果的に予防できます。これは、徒手的なストレッチやスプリント療法の基本肢位と同じ考え方です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「麻痺側肩関節は外転位に保持する」は誤りです。肩関節の拘縮予防では、中間位(外転45度、軽度屈曲、軽度外旋)が推奨されます。過度な外転位はかえって関節包を緊張させ、痛みの原因や肩手症候群を誘発する可能性があります。また、亜脱臼予防としてのポジショニング(外転位)と混同しないでください。
③「麻痺側上肢は肩関節を内旋位に保持する」は誤りです。内旋位は痙性パターンを助長し、拘縮を促進します。保持すべきは外旋位です。
④「麻痺側手指は握らせたタオルを把持させる」は誤りです。混同注意! これは従来行われていた方法ですが、現在では 禁忌 とされています。タオルを握らせると、むしろ手指の屈曲拘縮を助長し、手掌の衛生状態も悪化させます。手掌を開いた状態を保つことが正しいです。
⑤「麻痺側肘関節は伸展位で固定する」は誤りです。肘関節は完全伸展位で固定すると拘縮リスクが高まります。また、ベッド上でのポジショニングでは 軽度屈曲位(約30度) を保ち、過伸展を防ぐことが重要です。完全伸展位は、筋緊張の強い患者では後方脱臼のリスクもあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
片麻痺患者のポジショニングは、Brunnstrom Stage に応じたアプローチが重要です。Stage II~III(共同運動の出現期)では痙性が強まるため、抗痙性肢位の保持が特に重要になります。また、車椅子上での姿勢では、骨盤の安定(前傾)、体幹の対称性、頭部の正中位保持も併せて評価する必要があります。拘縮予防は、単なる関節の角度だけでなく、定期的な体位変換(2時間毎)と他動的関節可動域訓練 (Passive Range of Motion, PROM) と組み合わせて実施することが看護の基本です。
概念整理: 片麻痺患者の拘縮予防は「痙性麻痺のパターン(屈筋優位)の逆方向へのポジショニング」が原則。上肢は伸展・外旋方向、手指は伸展・開大方向。
一目で比較!:
| 部位 | 適切な肢位(抗痙性肢位) | 避けるべき肢位(痙性促進) |
|---|
| 肩関節 | 中間位(外転45度・軽度屈曲・外旋) | 内転・内旋位 |
| 肘関節 | 軽度屈曲位(約30度) | 完全伸展位 |
| 手関節 | 軽度背屈位(伸展位) | 掌屈位 |
| 手指 | 伸展位・手掌開大 | 屈曲位・握り込み |
看護過程ポイント: アセスメント:Brunnstrom Stage、Modified Ashworth Scale(筋緊張評価)、関節可動域(ROM)の測定、皮膚の観察(発赤・損傷)。看護診断:「関節拘縮のリスク状態 (Risk for Contracture)」や「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」。計画・実施:ポジショニング計画の立案(車椅子・ベッド上)、他動的ROM訓練の実施、スプリント装具の適応判断。評価:ROM測定値の推移、疼痛の有無、皮膚トラブルの有無。
暗記のコツ: 「片麻痺の上肢は、『巻き込み』(内転・内旋・屈曲)を予防する!つまり、『開く』(外転・外旋・伸展)方向で保持する」と覚えましょう。特に手指は「タオルを握らせない=開いておく」が鉄則。
国試頻出ポイント: 拘縮予防のポジショニングは、脳血管障害 (Cerebrovascular Disease) の看護で毎年必ず出題される基本項目です。特に「タオルを握らせる」が禁忌であること、肩関節は中間位が基本であることは、誤答選択肢として頻出なので確実に押さえてください。
出題パターン注意!: 本問のような「適切なポジショニングはどれか」という基本的な知識問題に加え、近年は事例問題で「Brunnstrom Stage IIIの患者の夜間のポジショニング計画を立案せよ」という形で出題されることがあります。その場合、単に肢位だけでなく、体位変換の頻度やクッション・枕の使用方法も合わせて問われる可能性があります。
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario)あなたは介護老人保健施設(老健)で勤務する看護師です。79歳の女性(右片麻痺、Brunnstrom Stage 上肢II)が、昼食後に車椅子でリクライニングしている姿を観察しました。右手指が強く屈曲し、手掌は握り込まれた状態です。手掌に汗がたまり、発赤が認められます。あなたはどのようにアセスメントし、介入しますか?
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)- 1観察(Assessment)まず、手指の屈曲の程度(Modified Ashworth Scaleで評価)、皮膚の状態(発赤・びらん・悪臭の有無)、疼痛の有無を確認します。手掌の衛生状態は不良で、汗によるマセレーション(浸軟)が認められます。
- 2アセスメント(Analysis)痙性麻痺による屈曲拘縮が進行しつつあり、適切なポジショニングが行われていないと判断します。放置すると、不可逆的な拘縮や手掌の皮膚潰瘍(感染リスク)につながります。
- 3報告(Report to MD/PT)医師や理学療法士(PT)にSBARで報告します。「S(状況): 右片麻痺の患者様で、手指の屈曲拘縮が進行しています。B(背景): Brunnstrom Stage IIで、日中車椅子上で手掌を握り込んでいる状態が続いています。A(アセスメント): 拘縮予防と皮膚保護のためにポジショニングの見直しが必要です。R(提案): 手指伸展用のスプリント(オットーボックなど)の処方と、ポジショニング計画の再評価をお願いします。」
- 4介入(Intervention)直ちに手指を優しく他動的に伸展し、手掌を清潔に拭きます。その後、手指伸展位を保持するクッション(手掌サポート)を装着します。車椅子の肘掛けの高さも調整し、肩関節が内転・内旋しないように注意します。また、2時間毎の体位変換時に、手指のポジショニングも必ず確認するよう、ケアスタッフに申し送ります。
- 5評価(Evaluation)1週間後、手指の屈曲角度が改善し、手掌の発赤は消失しました。ケアスタッフ全員が正しいポジショニングを実施できるよう、マニュアルの見直しと勉強会を実施しました。
看護プロトコル: 観察項目:手指の屈曲角度(関節可動域測定)、皮膚の色調・湿潤・発赤・びらん、疼痛の有無(フェイススケールなど)。報告基準(SBAR):上記シナリオ参照。記録のポイント:ポジショニングの方法、実施時刻、患者の反応(疼痛の有無)、皮膚の状態変化、介入後の経過。家族への説明:「お母様の手指が曲がったままにならないように、日中はこのようなクッションで開いた状態を保ちます。握らせたタオルは逆効果なので、絶対に使用しないでください。」
先輩看護師の一言: 「拘縮予防の看護は、地味だけど患者さんの一生のQOLを左右する超重要なケアです!『タオルを握らせる』という昔の間違った知識がまだ現場に残っていることもあるので、『なぜタオルがダメで、なぜ開いておくのか』を根拠をもって新人さんや介護スタッフに教えられる看護師になりましょう。国試でも『手指伸展位』が正解だとしっかり覚えておいてくださいね!」
- 痙性麻痺 (Spastic Paralysis) — 上位運動ニューロン障害により生じる筋緊張亢進状態。腱反射亢進とクローヌスを伴い、特に上肢屈筋群、下肢伸筋群に優位に現れる。関節拘縮の主要因。
- 関節拘縮 (Joint Contracture) — 関節周囲の軟部組織(皮膚、筋肉、腱、靭帯)の短縮により、関節の可動域が制限された状態。予防には早期からの他動的関節可動域訓練と適切なポジショニングが不可欠。
- Brunnstrom Stage — 脳卒中後の運動回復段階を6段階で評価する指標。Stage I(弛緩性麻痺)→ II(共同運動の出現)→ III(共同運動が最強)→ IV(共同運動からの分離)→ V(分離運動)→ VI(ほぼ正常)。痙性はStage II~IIIで最も強い。
- 抗痙性肢位 (Anti-Spastic Posture) — 痙性麻痺のパターン(屈筋優位)とは逆方向の肢位を意図的に保持すること。上肢では伸展・外旋、手指では伸展・開大が基本。拘縮予防の根幹。
- 他動的関節可動域訓練 (Passive Range of Motion, PROM) — 患者自身の筋力を使わず、他者が関節を動かす訓練。関節拘縮予防、筋緊張の軽減、固有感覚の入力に有効。片麻痺患者では特に麻痺側に、痛みのない範囲でゆっくりと行う。
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