核心解説
この問題は、
脳血管障害 (Cerebrovascular Disease) による右片麻痺患者の
関節拘縮予防 (Contracture Prevention) における適切なポジショニングを問うています。ポイントは、
痙性麻痺 (Spastic Paralysis) の特徴を理解することです。特に上肢は
屈筋優位 のパターン(肩関節内転・内旋、肘関節屈曲、手関節掌屈、手指屈曲)で拘縮しやすいため、その逆の肢位(抗痙性肢位)を保持することが予防につながります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ②「麻痺側手指は伸展位で手掌を開いた状態を保つ」が正解です。手指の屈筋群は非常に強く、自然に手掌を握り込むような状態(
把握反射 (Grasp Reflex) の亢進も関連)になりやすいため、
手指伸展位・手掌開大位(手掌を上に向けた背屈位)を保持することで、手指の屈曲拘縮(いわゆる「こぶし」の状態)を効果的に予防できます。これは、徒手的なストレッチやスプリント療法の基本肢位と同じ考え方です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①「麻痺側肩関節は外転位に保持する」は誤りです。肩関節の拘縮予防では、
中間位(外転45度、軽度屈曲、軽度外旋)が推奨されます。過度な外転位はかえって関節包を緊張させ、痛みの原因や肩手症候群を誘発する可能性があります。また、亜脱臼予防としてのポジショニング(外転位)と混同しないでください。
③「麻痺側上肢は肩関節を内旋位に保持する」は誤りです。内旋位は痙性パターンを助長し、拘縮を促進します。保持すべきは外旋位です。
④「麻痺側手指は握らせたタオルを把持させる」は誤りです。
混同注意! これは従来行われていた方法ですが、現在では
禁忌 とされています。タオルを握らせると、むしろ手指の屈曲拘縮を助長し、手掌の衛生状態も悪化させます。手掌を開いた状態を保つことが正しいです。
⑤「麻痺側肘関節は伸展位で固定する」は誤りです。肘関節は完全伸展位で固定すると拘縮リスクが高まります。また、ベッド上でのポジショニングでは
軽度屈曲位(約30度) を保ち、過伸展を防ぐことが重要です。完全伸展位は、筋緊張の強い患者では後方脱臼のリスクもあります。
関連概念の整理 (Related Concepts)
片麻痺患者のポジショニングは、
Brunnstrom Stage に応じたアプローチが重要です。Stage II~III(共同運動の出現期)では痙性が強まるため、抗痙性肢位の保持が特に重要になります。また、
車椅子上での姿勢では、骨盤の安定(前傾)、体幹の対称性、頭部の正中位保持も併せて評価する必要があります。拘縮予防は、単なる関節の角度だけでなく、
定期的な体位変換(2時間毎)と他動的関節可動域訓練 (Passive Range of Motion, PROM) と組み合わせて実施することが看護の基本です。
概念整理: 片麻痺患者の拘縮予防は「痙性麻痺のパターン(屈筋優位)の逆方向へのポジショニング」が原則。上肢は伸展・外旋方向、手指は伸展・開大方向。
一目で比較!:
| 部位 | 適切な肢位(抗痙性肢位) | 避けるべき肢位(痙性促進) |
|---|
| 肩関節 | 中間位(外転45度・軽度屈曲・外旋) | 内転・内旋位 |
| 肘関節 | 軽度屈曲位(約30度) | 完全伸展位 |
| 手関節 | 軽度背屈位(伸展位) | 掌屈位 |
| 手指 | 伸展位・手掌開大 | 屈曲位・握り込み |
看護過程ポイント:
アセスメント:Brunnstrom Stage、Modified Ashworth Scale(筋緊張評価)、関節可動域(ROM)の測定、皮膚の観察(発赤・損傷)。
看護診断:「関節拘縮のリスク状態 (Risk for Contracture)」や「身体可動性障害 (Impaired Physical Mobility)」。
計画・実施:ポジショニング計画の立案(車椅子・ベッド上)、他動的ROM訓練の実施、スプリント装具の適応判断。
評価:ROM測定値の推移、疼痛の有無、皮膚トラブルの有無。
暗記のコツ: 「片麻痺の上肢は、
『巻き込み』(内転・内旋・屈曲)を予防する!つまり、
『開く』(外転・外旋・伸展)方向で保持する」と覚えましょう。特に手指は「タオルを握らせない=開いておく」が鉄則。
国試頻出ポイント: 拘縮予防のポジショニングは、
脳血管障害 (Cerebrovascular Disease) の看護で毎年必ず出題される基本項目です。特に「タオルを握らせる」が禁忌であること、肩関節は中間位が基本であることは、誤答選択肢として頻出なので確実に押さえてください。
出題パターン注意!: 本問のような「適切なポジショニングはどれか」という基本的な知識問題に加え、近年は事例問題で「Brunnstrom Stage IIIの患者の夜間のポジショニング計画を立案せよ」という形で出題されることがあります。その場合、単に肢位だけでなく、体位変換の頻度やクッション・枕の使用方法も合わせて問われる可能性があります。