核心解説
この問題は、
脊髄損傷 (Spinal Cord Injury, SCI) の残存機能レベルに応じた
機能的自立度評価法 (Functional Independence Measure, FIM) の運動項目評価を問うています。特に、
第6頸髄節 (C6レベル) の患者の残存機能と、それに基づく日常生活動作 (Activities of Daily Living, ADL) の自立度を正確に理解することが鍵となります。
C6レベルでは、
手関節背屈 (Wrist Extension) が可能です(長母指伸筋、橈側手根伸筋が機能)。これにより、手指の能動的な屈曲はできませんが、
最重要! テノデーシスアクション (Tenodesis Action) という受動的な把持機能を利用できます。これは、手関節を背屈すると手指が自動的に屈曲し、物を挟むことができる現象です。この機能を活用することで、更衣動作(特に上衣の着脱)を修正自立(修正具の使用や時間を要するが安全に行える)で遂行できる可能性が高いです。
正解の根拠 (Answer Rationale)
C6レベルの患者は、
三角筋 (Deltoid) と
上腕二頭筋 (Biceps Brachii) は機能しているため、肩の屈曲・外転、肘関節の屈曲が可能です。さらに、手関節背屈が可能でテノデーシスアクションにより物をつかむことができます。これらの組み合わせにより、
上衣の着脱は、ボタンやファスナーの操作に自助具(ボタンエイドなど)を用いたり、時間がかかったりするものの、安全に一人で行える修正自立レベルに達することができます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番が正解です。
②番
混同注意! 排尿管理(自己導尿):自己導尿のためには、手指の巧緻運動(器具の把持・操作)が必要です。C6レベルでは手指の能動的屈曲はできず、テノデーシスアクションでは器具を確実に操作することが難しいため、通常は介助が必要です。C7レベルで手指伸展が可能になると、自己導尿が可能になる場合があります。
③番 歩行:下肢の運動機能は麻痺しているため、歩行は不可能です。車椅子が主な移動手段となります。
④番 階段昇降:下肢機能がなく、C6レベルでは立位バランスの保持も困難なため、通常は不能です。
⑤番 移乗(ベッドと車椅子間):C6レベルでは、上半身の筋力はあるものの、体幹の安定性が低く、上肢で体重を支える力(特に肘伸展)が不十分です(上腕三頭筋は機能しない)。そのため、移乗動作には介助を要するか、スライディングボードなどの移乗板を使用しても完全自立は難しく、修正自立に至ることは少ないです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
脊髄損傷のレベルとADL自立度は、国家試験の頻出テーマです。各レベル(特にC5, C6, C7, Th1, L1)の残存筋と、それによって可能になる動作を整理しておきましょう。
| 脊髄損傷レベル | 残存する主な機能 | 可能な主な動作 |
|---|
| C5 | 肘関節屈曲 (上腕二頭筋) | 車椅子操作 (水平面)、食事動作 (自助具使用) |
| C6 | 手関節背屈 (橈側手根伸筋) | 更衣 (上衣)、テノデーシスグリップ利用 |
| C7 | 肘関節伸展 (上腕三頭筋) | 車椅子駆動 (長距離)、自己導尿、更衣 (下衣) |
| Th1 | 手指の細かい動き (手内筋) | 書字、ボタン操作、日常生活動作のほぼ自立 |
概念整理: C6脊髄損傷の核心は「
手関節背屈可能」と「
テノデーシスアクション」です。これにより、能動的な手指屈曲ができなくても、受動的に物を挟むことができ、更衣などの特定の動作が可能になります。
一目で比較!:
混同注意! C6 vs C7 レベルでは、
肘伸展の可否と
自己導尿の可否が大きな違いです。C6は肘伸展が不能なため、車椅子への体重移動(臀上げ)が難しく、移乗に介助が必要な場合が多いです。
看護過程ポイント:
アセスメントでは、残存筋力を正確に評価し、患者に可能な動作と困難な動作を把握します。
看護計画では、
テノデーシスアクションを最大化するための自助具の選定や、
環境調整(手すりの高さ、衣服の選択など)を含めます。
評価では、FIMスコアを用いて自立度の変化を客観的に評価します。
暗記のコツ: 「C6は手首パタパタ(背屈)、テノデーシスで更衣バッチリ!」と覚えましょう。数字が1つ上がるごとに、可能になる動作が増えていきます(C5→C6→C7)。
国試頻出ポイント: 脊髄損傷のレベルとADLの組合せは、毎年どこかで出題される可能性があります。特に、FIMの各項目(食事、更衣、移乗、移動など)と脊髄損傷レベルの対応関係は、事例問題で問われることが多いです。
出題パターン注意!: 「C6レベルの患者が、どの動作を修正自立で行えるか?」という単純な知識問題だけでなく、「C6レベルの患者が退院に向けて、まず練習すべき動作はどれか?」といった応用問題にも対応できるようにしましょう。