核心解説
この問題は、
大腿骨頸部骨折術後 (Femoral Neck Fracture Postoperative)の患者における、
座位での股関節屈曲可動域測定 (Range of Motion, ROM) の正しい方法を問うています。術後の股関節可動域測定では、関節可動域制限の有無や程度を正確に評価することが重要です。
正しい測定の鍵は、
骨盤の代償運動を制限することです。股関節を屈曲させる際に、骨盤が動いてしまうと、腰椎や仙腸関節の動きが含まれ、実際の股関節屈曲角度よりも大きな角度が測定されてしまいます(過大評価)。そのため、骨盤をしっかりと固定して測定する必要があります。
最重要! 座位での股関節屈曲測定では、
骨盤が後傾 (Posterior Pelvic Tilt) するのを防ぐことが最も重要です。骨盤が後傾すると、腰椎が屈曲し、股関節が相対的に伸展した状態になります。これを防ぐために、骨盤(上前腸骨棘)を固定し、膝を胸に近づける方向に屈曲させます。膝関節は屈曲位を保つことで、ハムストリングスの緊張を緩め、純粋な股関節屈曲を引き出せます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は②番の「
骨盤を後傾させないように固定し、膝を胸に近づけるように股関節を屈曲させる」です。これにより、腰椎の屈曲や骨盤の後傾による代償を排除し、真の股関節屈曲可動域を測定できます。大腿骨頸部骨折術後は、股関節の可動域制限(特に屈曲・外旋・内転)が生じやすいため、正確な測定はリハビリテーションの評価に必須です。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番:
骨盤を固定せずに、膝を胸に近づけるように股関節を屈曲させる。
骨盤を固定しないと、骨盤が後傾しやすく、腰椎の動きが加わり、股関節の真の可動域を測定できません。誤った測定値につながるため不適切です。
③番:
骨盤を前傾させないように固定し、膝を伸展させたまま股関節を屈曲させる。
骨盤の前傾を防ぐことは、座位で股関節を伸展させる際には重要ですが、屈曲測定では後傾を防ぐことが優先です。また、膝を伸展させるとハムストリングスの緊張により股関節の屈曲が制限され、正しい可動域が測れません。膝は屈曲位を保つ必要があります。
④番:
骨盤を固定せずに、体幹を後方に倒しながら股関節を屈曲させる。
この方法では、体幹を後方に倒すことで股関節の屈曲とは逆の動き(伸展)が生じ、代償動作として骨盤の後傾をさらに助長します。測定方法として全く不適切です。
⑤番:
骨盤を側方に傾けないように固定し、下肢を外側に開くように股関節を屈曲させる。
これは股関節の
外転 (Abduction) または
外旋 (External Rotation)の測定方法に近く、股関節屈曲の測定方法ではありません。屈曲は矢状面上の動き(膝を胸に近づける)であり、外転・外旋は異なる動きです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
大腿骨頸部骨折術後は、特に
後方アプローチ(後側方進入)による人工骨頭置換術(Bipolar Hip Arthroplasty, BHA)や人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty, THA)で、脱臼予防のための可動域制限が重要です。術後早期は、股関節屈曲90度以内、内転・内旋制限(足を組まない、手術側に体をひねらないなど)の指導が必要になります。可動域測定は、これらの制限範囲を逸脱しないよう注意して実施します。
概念整理: 座位での股関節屈曲可動域測定では、
骨盤の後傾を固定し、
膝を屈曲させた状態で、
膝を胸に近づけるように行う。これにより腰椎や骨盤の代償を排除し、真の股関節屈曲角度を測定できる。
一目で比較!:
| 測定動作 | 代償動作(測定誤差の原因) | 正しい固定方法 |
|---|
| 股関節屈曲 (Hip Flexion) | 骨盤後傾 + 腰椎屈曲 | 骨盤(上前腸骨棘)を後傾しないように固定 |
| 股関節伸展 (Hip Extension) | 骨盤前傾 + 腰椎伸展 | 骨盤を前傾しないように固定 |
| 股関節外転 (Hip Abduction) | 骨盤側方傾斜 | 骨盤の側方傾斜を防止 |
看護過程ポイント:
アセスメント (Assessment): 術後の疼痛、腫脹、可動域制限の有無、歩行状態を評価。測定時は疼痛の増強に注意し、無理に行わない。
計画 (Planning): 医師の指示に基づき、許可された可動域内で測定を実施。術後早期は脱臼リスクが高いため、禁忌肢位(股関節90度以上の屈曲、内転、内旋)を避ける計画を立案する。
実施 (Implementation): 患者に測定の目的と方法を説明し、協力を得る。痛みがある場合は中止する。骨盤の固定は検者がしっかりと行う。
評価 (Evaluation): 測定値が正確か確認する。経時的な変化を記録し、リハビリテーションの効果判定に役立てる。
暗記のコツ: 「股関節を曲げたいなら、骨盤の後ろ(後傾)をガード!」と覚えましょう。骨盤が後ろに倒れるのを指で押さえて固定するイメージです。
国試頻出ポイント: 大腿骨頸部骨折術後の患者への具体的な動作指導(「足を組まない」「しゃがまない」「前かがみにならない」)と、その根拠(脱臼予防)は頻出です。可動域測定の方法も、基礎看護技術の「関節可動域測定」の一環として出題されることがあります。
出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「大腿骨頸部骨折術後の患者へのリハビリ指導で正しいのはどれか」という状況設定問題(事例問題)で出題されることが多いです。