大腿骨頸部骨折術後の患者に対する、座位での股関節屈曲可動域測定の正しい方法はどれか。 | MyMerci
運動機能障害のある患者の看護
問題

大腿骨頸部骨折術後の患者に対する、座位での股関節屈曲可動域測定の正しい方法はどれか。

患者は端座位をとり、膝関節は90度屈曲した状態である。
解説
座位での股関節屈曲可動域測定では、骨盤が後傾すると仙腸関節や腰椎の動きが代償され、真の股関節屈曲角度が測定できない。そのため、骨盤を後傾させないように固定(または母指で上前腸骨棘を触知して固定)した状態で、膝を胸に近づけるように股関節を他動的または自動的に屈曲させる。

詳細解説

核心解説 この問題は、大腿骨頸部骨折術後 (Femoral Neck Fracture Postoperative)の患者における、座位での股関節屈曲可動域測定 (Range of Motion, ROM) の正しい方法を問うています。術後の股関節可動域測定では、関節可動域制限の有無や程度を正確に評価することが重要です。
正しい測定の鍵は、骨盤の代償運動を制限することです。股関節を屈曲させる際に、骨盤が動いてしまうと、腰椎や仙腸関節の動きが含まれ、実際の股関節屈曲角度よりも大きな角度が測定されてしまいます(過大評価)。そのため、骨盤をしっかりと固定して測定する必要があります。
最重要! 座位での股関節屈曲測定では、骨盤が後傾 (Posterior Pelvic Tilt) するのを防ぐことが最も重要です。骨盤が後傾すると、腰椎が屈曲し、股関節が相対的に伸展した状態になります。これを防ぐために、骨盤(上前腸骨棘)を固定し、膝を胸に近づける方向に屈曲させます。膝関節は屈曲位を保つことで、ハムストリングスの緊張を緩め、純粋な股関節屈曲を引き出せます。 正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は②番の「骨盤を後傾させないように固定し、膝を胸に近づけるように股関節を屈曲させる」です。これにより、腰椎の屈曲や骨盤の後傾による代償を排除し、真の股関節屈曲可動域を測定できます。大腿骨頸部骨折術後は、股関節の可動域制限(特に屈曲・外旋・内転)が生じやすいため、正確な測定はリハビリテーションの評価に必須です。 誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番:骨盤を固定せずに、膝を胸に近づけるように股関節を屈曲させる
骨盤を固定しないと、骨盤が後傾しやすく、腰椎の動きが加わり、股関節の真の可動域を測定できません。誤った測定値につながるため不適切です。
③番:骨盤を前傾させないように固定し、膝を伸展させたまま股関節を屈曲させる
骨盤の前傾を防ぐことは、座位で股関節を伸展させる際には重要ですが、屈曲測定では後傾を防ぐことが優先です。また、膝を伸展させるとハムストリングスの緊張により股関節の屈曲が制限され、正しい可動域が測れません。膝は屈曲位を保つ必要があります。
④番:骨盤を固定せずに、体幹を後方に倒しながら股関節を屈曲させる
この方法では、体幹を後方に倒すことで股関節の屈曲とは逆の動き(伸展)が生じ、代償動作として骨盤の後傾をさらに助長します。測定方法として全く不適切です。
⑤番:骨盤を側方に傾けないように固定し、下肢を外側に開くように股関節を屈曲させる
これは股関節の外転 (Abduction) または外旋 (External Rotation)の測定方法に近く、股関節屈曲の測定方法ではありません。屈曲は矢状面上の動き(膝を胸に近づける)であり、外転・外旋は異なる動きです。 関連概念の整理 (Related Concepts)
大腿骨頸部骨折術後は、特に後方アプローチ(後側方進入)による人工骨頭置換術(Bipolar Hip Arthroplasty, BHA)や人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty, THA)で、脱臼予防のための可動域制限が重要です。術後早期は、股関節屈曲90度以内、内転・内旋制限(足を組まない、手術側に体をひねらないなど)の指導が必要になります。可動域測定は、これらの制限範囲を逸脱しないよう注意して実施します。 概念整理: 座位での股関節屈曲可動域測定では、骨盤の後傾を固定し、膝を屈曲させた状態で、膝を胸に近づけるように行う。これにより腰椎や骨盤の代償を排除し、真の股関節屈曲角度を測定できる。 一目で比較!:
測定動作代償動作(測定誤差の原因)正しい固定方法
股関節屈曲 (Hip Flexion)骨盤後傾 + 腰椎屈曲骨盤(上前腸骨棘)を後傾しないように固定
股関節伸展 (Hip Extension)骨盤前傾 + 腰椎伸展骨盤を前傾しないように固定
股関節外転 (Hip Abduction)骨盤側方傾斜骨盤の側方傾斜を防止
看護過程ポイント: アセスメント (Assessment): 術後の疼痛、腫脹、可動域制限の有無、歩行状態を評価。測定時は疼痛の増強に注意し、無理に行わない。計画 (Planning): 医師の指示に基づき、許可された可動域内で測定を実施。術後早期は脱臼リスクが高いため、禁忌肢位(股関節90度以上の屈曲、内転、内旋)を避ける計画を立案する。実施 (Implementation): 患者に測定の目的と方法を説明し、協力を得る。痛みがある場合は中止する。骨盤の固定は検者がしっかりと行う。評価 (Evaluation): 測定値が正確か確認する。経時的な変化を記録し、リハビリテーションの効果判定に役立てる。 暗記のコツ: 「股関節を曲げたいなら、骨盤の後ろ(後傾)をガード!」と覚えましょう。骨盤が後ろに倒れるのを指で押さえて固定するイメージです。 国試頻出ポイント: 大腿骨頸部骨折術後の患者への具体的な動作指導(「足を組まない」「しゃがまない」「前かがみにならない」)と、その根拠(脱臼予防)は頻出です。可動域測定の方法も、基礎看護技術の「関節可動域測定」の一環として出題されることがあります。 出題パターン注意!: 単純な知識問題に加え、「大腿骨頸部骨折術後の患者へのリハビリ指導で正しいのはどれか」という状況設定問題(事例問題)で出題されることが多いです。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 70代女性、転倒による右大腿骨頸部骨折で、人工骨頭置換術(BHA)後3日目。ベッド上安静から、理学療法士の指導のもと車椅子移乗練習が始まりました。看護師が病棟で、座位での股関節可動域測定を行い、退院指導に役立てる必要があります。患者は「まだ足が痛くて、あまり曲げられない」と話しています。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 最重要! 測定前に、患者の術創部の状態(ドレーン、腫脹、発赤)、疼痛の程度(Numerical Rating Scale, NRS)、そして医師の指示で許可されている可動域制限(例:屈曲90度以内)を必ず確認します。
1. 観察 (Observation): 座位での姿勢(骨盤の傾き、腰痛の有無)を観察。2. アセスメント (Assessment): 骨盤の後傾がないか、代償動作(腰椎を丸めるなど)が見られないか確認。3. 報告 (Reporting): 測定中に患者が「ズキンと痛む」と訴えた場合は、すぐに中止し、疼痛の程度と可動域制限の状況を記録。医師や理学療法士へSBAR(状況-背景-アセスメント-推奨)で報告します。4. 介入 (Intervention): 片手で患者の骨盤(上前腸骨棘)を固定し、もう一方の手で患者の膝を支えながら、痛みのない範囲でゆっくりと股関節を屈曲させます。膝は常に屈曲位を保ちます。5. 評価 (Evaluation): 測定された角度(例:70度)を記録。疼痛や違和感の有無も合わせて評価します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 絶対に禁忌! 術後早期に、許可された範囲を超えた可動域測定(特に90度以上の屈曲、内転、内旋)は脱臼のリスクがあります。測定中に患者が不意に動かないよう、声かけを行いながらゆっくりと実施します。疼痛が強い場合は無理に行わず、医師に相談します。 看護プロトコル: 観察項目: 疼痛(NRS)、術創部の発赤・腫脹・ドレーン排液の性状、股関節可動域(屈曲・伸展・外転・内旋・外旋)、歩行状態。 報告基準 (SBAR): S(状況):「〇〇様、術後3日目、座位での股関節屈曲可動域測定中です」、B(背景):「術創部に異常なく、疼痛はNRS 3/10」、A(アセスメント):「現在の可動域は屈曲60度で、骨盤の代償が少し見られます」、R(推奨):「理学療法士に測定結果を共有し、リハビリ計画の調整をお願いします」。 記録のポイント: 測定方法(座位、骨盤固定の有無)、測定値、患者の反応(疼痛の有無)、代償動作の有無を詳細に記録します。 先輩看護師の一言: 「可動域測定は、単なる数値の確認ではありません!患者さんが『どこまで動かせるか』を把握することは、安全な日常生活動作(ADL)拡大の第一歩です。特に大腿骨頸部骨折術後は、脱臼という重大なアクシデントを防ぐためにも、この『正しい測定方法』をしっかりマスターしましょう。国試でも現場でも、必ず役立つ知識ですよ!」

重要概念

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