核心解説
この問題は、
心肺蘇生法 (Cardiopulmonary Resuscitation, CPR) の中核技術である胸骨圧迫 (Chest Compression) の適切な深度を問うています。
胸骨圧迫は、心臓を圧迫することで血液を全身に送り出す人工的なポンプ機能であり、その深さが不十分だと
心拍出量 (Cardiac Output) が確保できず、蘇生成功率が低下します。2020年以降の日本救急医学会・日本循環器学会が推奨する「一次救命処置 (BLS) ガイドライン」では、成人に対しては
約5cm の深さでの圧迫が推奨されています。この深さは、効果的な心拍出量を生み出すために必要十分な深度であり、過度な深さは肋骨骨折や内臓損傷のリスクを高めます。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 成人の胸骨圧迫は、
少なくとも5cm (約5cm) の深さで行うことが国際的なコンセンサスです。この深度により、胸骨と脊椎の間で心臓が圧迫され、心室からの血液駆出が促進され、脳や冠動脈への血流が維持されます。深さ5cm未満では十分な心拍出量が得られず、蘇生効果が著しく低下します。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①
約2cm や ②
約1cm は、かつてのガイドライン(旧式)や新生児・乳児に対する推奨深度と混同しやすい値です。成人には不十分です。また、④
約8cm は過度な深さであり、肋骨骨折や肝損傷などの合併症リスクを高めるため推奨されません。⑤
約3cm も、効果的な心拍出量を得るには不十分な深さです。正しい深さは
約5cm です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
胸骨圧迫の質を左右する要素は、深さ以外にも重要です。テンポは
毎分100~120回、圧迫と解除の比は
1:1(解除時は完全に胸壁を元の高さに戻す)、
中断時間は最小限(10秒以内)に抑えることが求められます。これらを総合して、質の高いCPRを実施します。また、小児(1歳~思春期)では約5cm、乳児(1歳未満)では約4cmが推奨されており、年齢による違いも併せて覚えておきましょう。
概念整理:
胸骨圧迫 (Chest Compression) は、心停止状態の心臓に代わって人工的に血液循環を維持するための最重要手技。深さ5cmは成人の平均的な胸郭前後径の約1/3に相当し、これにより心室内圧が上昇し、血液が大動脈へ駆出される。
一目で比較!:
| 対象 | 胸骨圧迫の深さ |
|---|
| 成人 (Adult) | 約5cm (少なくとも5cm) |
| 小児 (Child / 1歳~思春期) | 約5cm (胸郭の1/3) |
| 乳児 (Infant / 1歳未満) | 約4cm (胸郭の1/3) |
| 新生児 (Neonate) | 約3~4cm |
看護過程ポイント:
アセスメント: 患者の意識・呼吸の確認後、胸骨圧迫の適応(頸動脈触知不可)を判断。
介入: 肘を伸ばし、体重をかけて垂直に圧迫。圧迫部位は胸骨下半分(剣状突起の2横指上)。
評価: 圧迫の深さ・テンポ・リコイル(解除)の適切性を継続的に評価。AED装着後はリズム解析に従い、必要に応じて圧迫を再開する。
暗記のコツ: 「成人の胸骨圧迫深さ5cm」は「5(ゴ)シン(心)臓を押せ!」と覚えましょう。「5」が深さ、「シン」が心臓(心拍出量)を意味します。テンポの120回/分は「イチ、ニ、サン」とリズムを取るより、ビートルズの「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」のテンポがちょうど良いとされます。
国試頻出ポイント: 胸骨圧迫の深さ・テンポ・部位・圧迫解除の完全性(リコイル)は、毎年必ず出題される超頻出項目です。特に「成人」「小児」「乳児」の違いを比較する問題や、ガイドライン改正点(旧ガイドラインの4~5cmから5cm以上への変更)を意識した出題がよく見られます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題として「成人の胸骨圧迫の深さは?」と直接問うだけでなく、事例問題「心停止患者が搬送された。CPRを開始する看護師の行動として適切なのはどれか。」の中で、深さやテンポの選択肢が混在して出題されるパターンが非常に多いです。