核心解説
この問題は、
心肺蘇生法(Cardiopulmonary Resuscitation, CPR)の基本手技である胸骨圧迫と人工呼吸の比率(レシオ)を問うています。これは、2025年現在も有効な日本蘇生協議会(JRC)および国際蘇生連絡委員会(ILCOR)のガイドラインに基づく必須知識です。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 成人の一次救命処置(BLS)では、
胸骨圧迫の質と中断時間の最小化が脳と心臓への血流維持に最も重要です。そのため、胸骨圧迫30回に対して人工呼吸2回(30:2)が標準プロトコルとして確立されています。この比率は、圧迫による血流を確保しつつ、最小限の中断で換気を行うために最適化されています。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は⑤番の
30:2です。これは、全ての年齢層(新生児を除く)の成人および小児の一次救命処置(BLS)で推奨される標準比率です。
最重要! この比率の根拠は、30回の圧迫で冠灌流圧(Coronary Perfusion Pressure, CPP)を十分に高めた後、2回の人工呼吸で酸素化を行うことで、蘇生効果を最大化することにあります。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
- ①番(15:2): これは過去のガイドライン(2005年以前)で使用されていた比率です。現在は、圧迫の中断時間を短縮するため、より多くの圧迫を連続して行う30:2が標準となりました。特に、気道確保(エアウェイ挿入)や除細動(Defibrillation)の準備による中断を考慮し、圧迫を優先する思想に変わったためです。
- ②番(30:1): 人工呼吸の回数が少なすぎます。2回の人工呼吸により、十分な一回換気量(約500〜600ml)を確保し、酸素化と二酸化炭素の排泄を行う必要があります。1回では不十分です。
- ③番(5:1)と④番(3:1): これらは新生児・乳児の蘇生で用いられる比率です。新生児では、肺の虚脱(無気肺)を防ぐために高い換気回数が優先されるため、3:1(または5:1)の比率が推奨されます。
混同注意! 成人と新生児で蘇生の優先順位が異なる点を必ず区別してください。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): この比率はあくまで「気道確保していない状態(バッグバルブマスクを用いた2人法など)」の基本です。気管挿管後や声門上器具(ラリンジアルマスクなど)が挿入された場合は、胸骨圧迫は連続(1分間に100〜120回)で行い、人工呼吸は1分間に10回(6秒に1回)で非同期的に行います。また、除細動器(AED)が到着したら、まずは心電図解析と必要に応じた電気ショックを優先することも併せて押さえておきましょう。
概念整理:
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胸骨圧迫の役割: 心臓を機械的に圧迫し、脳と冠動脈に血流を送る(人工心臓の役割)。
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人工呼吸の役割: 肺に空気(酸素)を送り込み、血液の酸素化を行う(人工肺の役割)。
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30:2の根拠: 十分な血流(30回の圧迫)と、適切な換気(2回の呼吸)のバランス。
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小児・乳児との違い: 成人は心原性(心室細動など)が多いため除細動と圧迫が優先。小児・乳児は呼吸原性(窒息など)が多いため、まずは5回の人工呼吸(レスキュー呼吸)から開始し、その後30:2(小児の場合は15:2の場合もあるが、講習会によっては30:2で統一されることもある)。
一目で比較!
| 対象 | 胸骨圧迫:人工呼吸 | 蘇生の優先順位 |
| 成人(8歳以上) | 30:2 | 胸骨圧迫 → 電気ショック → 人工呼吸 |
| 小児(1歳〜8歳) | 30:2(または15:2) | 胸骨圧迫 → 電気ショック(可能なら) |
| 乳児(1歳未満) | 3:1 | 人工呼吸(5回) → 胸骨圧迫 |
| 新生児(産科) | 3:1 | 人工呼吸(換気確立が最優先) |
看護過程ポイント:
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アセスメント: 患者の反応(意識)の確認、呼吸の確認(普段通りの呼吸か、死戦期呼吸(Agonal Respiration)か)、頸動脈触知(10秒以内)。
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看護診断 (Nursing Diagnosis): 「非効果的脳組織灌流(Ineffective Cerebral Tissue Perfusion)」リスク状態 / 「非効果的呼吸パターン(Ineffective Breathing Pattern)」 / 「心肺蘇生に関連する知識不足(Deficient Knowledge)」
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計画・実施: BLSプロトコル(C-A-B: Circulation-Airway-Breathing)の手順を遵守。胸骨圧迫は「強く(5〜6cm)」「速く(100〜120回/分)」「絶え間なく(中断を10秒以内)」。圧迫のリコイル(完全に胸が戻ること)を確認。
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評価: 胸骨圧迫の有効性(頸動脈拍動の触知、SpO2波形の改善、呼気二酸化炭素濃度(ETCO2)の上昇など)。蘇生後の神経学的評価。
暗記のコツ:
「大人は30:2!赤ちゃんは3:1!」とリズムで覚えましょう。CPRのテンポは「♪アンパンマンのマーチ」のリズム(約100〜120拍/分)が目安です。また、30:2の「30」は「30秒間の圧迫」ではなく「30回の圧迫」です。中断を最小限にすることが最重要というメッセージを忘れずに。
国試頻出ポイント:
この問題は、看護師国家試験で
頻出(High Yield)です。単純な比率の暗記だけでなく、「なぜ30:2なのか」という根拠(病態生理:冠灌流圧の維持)と、「小児・新生児との違い」「気管挿管後の非同期的な換気」との関連が問われます。事例問題(「突然倒れた患者さんを発見した」など)で、手順と併せて出題されることが多いです。
出題パターン注意!
近年の国試では、単純な知識問題から「状況設定問題」へと発展しています。例えば「病棟で患者が心肺停止となった。看護師2人で蘇生を行う場合、どのような手順で行うか?」という問題では、最初に「応援を呼ぶ(コール)」「胸骨圧迫を開始する」という行動の優先順位が問われます。単なる比率暗記ではなく、チーム蘇生(Team CPR)全体の流れをイメージできるようにしておきましょう。