核心解説
この問題は、
腰椎椎間板ヘルニア (Lumbar Disc Herniation)の診察に用いられる身体所見である
ラセーグ徴候 (Lasegue Sign) の知識を問うています。患者は重量物を持ち上げたという動作歴があり、これは腰椎に急激な負荷がかかり、
椎間板の後方突出 (Posterior Disc Protrusion) を引き起こす典型的な原因です。右下肢後面への放散痛(坐骨神経痛;Sciatica)と、仰臥位で患側下肢を伸展挙上した際に60度で痛みが再現されたという所見が、この徴候の定義に合致します。この検査は、神経根の圧迫や炎症の有無を評価するための重要な徒手検査法です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! ラセーグ徴候は、仰臥位で患者の下肢を膝伸展位のまま他動的に挙上する検査です。通常、
70度以上挙上しても痛みは生じませんが、腰椎椎間板ヘルニアなどで神経根(特にL4-S1)が圧迫されている場合、下肢後面(坐骨神経領域)に放散痛が出現します。本症例では60度で痛みが再現されており、陽性と判断されます。これは神経根が椎間板や靭帯に圧迫され、下肢挙上による坐骨神経の伸展で疼痛が誘発されるためです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各選択肢は、神経学的・整形外科的徴候として似た名称を持ちますが、検査方法と陽性所見が異なります。
①
ケルニッヒ徴候 (Kernig Sign): 髄膜刺激徴候の一つ。仰臥位で股関節・膝関節を90度屈曲した状態から、膝を他動的に伸展した時に頸部痛や抵抗が生じる。
混同注意! くも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage)や髄膜炎(Meningitis)の診察に用いられ、腰椎疾患の評価ではありません。
②
パトリック徴候 (Patrick Sign / FABER Test): 股関節の病変(変形性股関節症、股関節唇損傷など)を評価する。仰臥位で患側の足関節を反対側の膝上に置き、膝を外側に倒す(屈曲・外転・外旋)ことで鼠径部に痛みが出現するか確認します。
③
ガワーズ徴候 (Gowers Sign): 進行性筋ジストロフィー(Duchenne型など)に特徴的な徴候。床から立ち上がる際に、両手で自分の下肢を這うようにして立ち上がる動作を指します。
④
ブラガード徴候 (Bragard Sign): ラセーグ徴候の変法です。ラセーグ徴候で痛みが出現した角度から、下肢を少し下げて痛みが消失した後、足関節を背屈(Dorsiflexion)して痛みが再現されれば陽性。
混同注意! ラセーグ徴候よりも坐骨神経の伸展を強めるため、より鋭敏な検査とされますが、本問題の記述(単に60度で痛みが再現)はラセーグ徴候そのものです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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ラセーグ徴候 vs ブラガード徴候: 両者とも坐骨神経の伸展テストですが、ブラガードはラセーグ陽性後の追加テストです。ラセーグが陰性でもブラガードが陽性になることがあるため、併用が推奨されます。
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腰椎椎間板ヘルニアの好発高位: L4/5(L5神経根障害)とL5/S1(S1神経根障害)が大部分を占めます。それぞれに応じて放散痛の分布(足背/足底)や筋力低下、反射の消失(膝蓋腱反射/アキレス腱反射)が異なることを理解しておきましょう。
概念整理: ラセーグ徴候は腰椎椎間板ヘルニアの代表的な神経学的徴候であり、神経根の圧迫と炎症が痛みの原因です。検査の手順は「仰臥位 → 膝伸展位で下肢他動的挙上」であり、痛みの出現角度(通常70度未満で陽性)を評価します。
一目で比較!:
| 徴候名 | 検査方法 | 陽性所見 | 主な適応疾患 |
|---|
| ラセーグ徴候 | 仰臥位、膝伸展位で下肢挙上 | 下肢後面への放散痛(70度未満) | 腰椎椎間板ヘルニア |
| ブラガード徴候 | ラセーグ陽性時、足関節背屈 | 痛みの増強または再現 | 腰椎椎間板ヘルニア(より鋭敏) |
| ケルニッヒ徴候 | 仰臥位、股・膝90度屈曲から膝伸展 | 頸部痛・抵抗 | 髄膜炎、くも膜下出血 |
| パトリック徴候 | 仰臥位、患側足を反対膝上に置き膝外側へ | 鼠径部痛 | 股関節疾患 |
| ガワーズ徴候 | 床からの立ち上がり動作観察 | 両手で下肢を這うようにして起立 | 筋ジストロフィー |
看護過程ポイント: アセスメント段階では、患者の動作歴(重量物挙上)と疼痛の性状(放散痛の有無、分布)を詳細に聴取します。看護計画では、安静の保持(特に前屈動作の制限)、鎮痛薬の確実な投与と効果判定、そして神経症状(筋力低下、感覚障害、膀胱直腸障害)の観察が優先されます。実施では、ベッド上安静時のポジショニング(膝軽度屈曲位が楽)やADL介助が重要です。
暗記のコツ: 「ラセーグ=足を挙げる(Raise Leg)」と覚えましょう。「ラ(Raise)セーグ(Leg)」と語呂合わせで。陽性所見は「足の裏側(後面)がビリッと痛い(放散痛)」とイメージすると記憶に残りやすいです。ブラガードは「ラセーグに足首をブラ(Bra)ブラ(gard)する(背屈)」と覚えると良いでしょう。
国試頻出ポイント: 腰椎椎間板ヘルニアの診断と看護は頻出です。本問のような「症状+身体所見+検査名」の組み合わせ問題は定番。さらに、急性期の安静管理(コルセット装着)、手術(ヘルニア摘出術)後の合併症予防(神経根浮腫、創部感染、深部静脈血栓症)も合わせて学習しておくと、状況設定問題に応用が効きます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(どの徴候か)に加え、「ラセーグ徴候陽性の患者への看護で正しいのはどれか」という応用問題や、「術後の神経症状悪化をアセスメントするための観察項目」を選ばせる問題に発展します。