52歳の男性。起床時に突然、右肩から上腕にかけての激しい痛みと右肩関節の自動運動困難を訴えて来院した。他動的には肩関節は… | MyMerci
運動機能の障害
問題

52歳の男性。起床時に突然、右肩から上腕にかけての激しい痛みと右肩関節の自動運動困難を訴えて来院した。他動的には肩関節はほぼ全方向に可動する。考えられる疾患はどれか。

解説
石灰沈着性腱板炎は、腱板に石灰が沈着し、急激な炎症反応により激痛と可動域制限を生じる疾患である。特徴的なのは、自動運動は困難だが他動運動は比較的良好に保たれる点であり、本症例に合致する。肩関節周囲炎(五十肩)は徐々に進行し、他動運動も制限される。

詳細解説

核心解説 この問題は、急性肩関節痛の原因鑑別と、特徴的な身体所見(自動運動障害 vs 他動運動良好)の解釈を問うています。特に、石灰沈着性腱板炎 (Calcific Tendinitis of the Rotator Cuff) の病態生理を正確に理解しているかが鍵となります。

正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 本症例のポイントは、「自動運動は困難だが、他動運動はほぼ全方向に可動する」という点です。これは、筋自体の炎症や疼痛による反射的な筋収縮抑制(自動運動の障害)がある一方で、関節構造そのものや腱の器質的な癒着・断裂がないため、他動的には動かせることを示しています。
石灰沈着性腱板炎 は、腱板にリン酸カルシウム結晶が沈着し、これが急激に滑液包内に破綻することで、激しい炎症反応(急性石灰性腱周囲炎)を引き起こします。この炎症による激痛のため、患者は自動的には肩を挙上できませんが、腱板自体の断裂や関節包の癒着がないため、他動的には動かすことができます。この臨床像が本症例に完全に合致します。

誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意!
- ①番の 腱板断裂 (Rotator Cuff Tear):自動運動も他動運動も障害されます。断裂した腱が筋の収縮力を伝達できないため、自動挙上は不可能ですが、他動的に挙上しようとしても、断裂部の痛みと筋力低下により、検査者が腕を支えても患者はその位置を保持できません(drop arm sign)。
- ③番の 肩関節脱臼 (Shoulder Dislocation):関節の適合性が失われているため、自動運動・他動運動ともに強く制限され、かつ上腕骨頭の逸脱による「肩峰下の陥凹(Hill-Sachs deformity)」などの外見上の変形を伴います。
- ④番の 上腕骨頭骨折 (Fracture of the Humeral Head):骨折による骨片の不安定性と激痛のため、自動運動・他動運動ともに制限されます。腫脹や皮下出血、圧痛も顕著です。
- ⑤番の 肩関節周囲炎(五十肩)(Frozen Shoulder / Adhesive Capsulitis):徐々に進行する関節包の癒着と拘縮が特徴で、自動運動だけでなく他動運動も著しく制限されます(global restriction)。

関連概念の整理 (Related Concepts):
- 急性肩痛の鑑別では、「自動運動の可否」と「他動運動の可否」の組み合わせが極めて重要です。本症例のような「自動×、他動○」のパターンは、石灰沈着性腱板炎の他に、痛風発作や偽痛風が肩に生じた場合も類似の所見を示すことがあります。
- 石灰沈着はエックス線検査 (X-ray) で、腱板上(特に棘上筋腱)に高吸収域として描出されるため、確定診断に有用です。

概念整理: 急性肩関節痛の鑑別キーは「自動運動 vs 他動運動」の解離。解離があれば「腱板実質の器質的断裂・癒着がない炎症性疾患(石灰沈着性腱板炎など)」を疑う。解離がなければ器質的障害(断裂・脱臼・骨折・癒着)を考慮する。

一目で比較!:
疾患発症様式自動運動他動運動特徴
石灰沈着性腱板炎急性(突然発症)困難良好石灰の滑液包内破綻による炎症
腱板断裂外傷後が多い困難困難(drop arm sign)腱の断裂、筋力低下
肩関節周囲炎(五十肩)慢性(徐々に進行)制限制限(全方向性)関節包の癒着と拘縮
肩関節脱臼外傷直後不能不能(変形あり)関節適合性の喪失
上腕骨頭骨折外傷直後不能不能(腫脹・圧痛)骨片の不安定性、激痛


看護過程ポイント: アセスメントでは、疼痛の部位・性状(灼熱痛か)、発症時刻・誘因(外傷の有無)、他動的可動域の程度を正確に評価する。看護診断としては「急性疼痛 (Acute Pain)」が優先される。介入では、安静保持、三角巾での患肢固定、NSAIDsなどの消炎鎮痛薬の内服または外用、冷却療法(急性期)の実施が中心となる。患者教育として、急性期の安静の重要性と、症状が落ち着いた後の段階的なリハビリテーションの必要性を説明する。

暗記のコツ: 「石灰沈着性腱板炎=自動運動×(痛くて上がらない)、他動運動○(関節は壊れてないから動く)」と覚えましょう。「炎」は「炎症」=「腫れて痛いけど、構造は保たれている」とイメージすると良いです。

国試頻出ポイント: 肩関節疾患の鑑別は頻出。特に「自動運動と他動運動の解離」に着目した問題は、国試で必ずと言って良いほど出題されます。事例問題では「患者が自分で腕を挙げられないが、看護師が動かすと動く」という状況設定で出題され、その原因を問われます。

出題パターン注意!: 単純な知識問題だけでなく、「50代男性、夜間に突然肩の激痛で目が覚めた。自分で腕を上げようとすると激痛が走る。受診時の所見:自動運動不能、他動運動は全方向に可能。最も考えられるのは?」という状況設定問題(事例問題)に発展して出題されます。このパターンをマスターしておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario):
あなたは整形外科病棟の看護師です。52歳の男性患者が、今朝起床時に突然、右肩に「刺すような」激痛を感じ、救急外来を受診しました。医師の診察では、自動的な肩関節の挙上(active ROM)は疼痛のため全くできませんが、あなたが他動的に動かす(passive ROM)と、患者は「痛い」と訴えるものの、ほぼ全方向に可動することが確認できました。エックス線検査の結果、右棘上筋腱付着部に高吸収域(石灰沈着)を認め、石灰沈着性腱板炎 (Calcific Tendinitis) と診断され、入院となりました。

看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察 (Observation): 疼痛の部位・性状(VASスケールで評価)、腫脹・発赤の有無、皮膚温、バイタルサイン(特に疼痛時の血圧上昇・脈拍増加に注意)。
2. アセスメント (Assessment): 急性炎症期にあるため、安静の確保と疼痛コントロールが最優先課題であると判断します。他動運動が可能であることを確認し、関節拘縮予防のためのリハビリ開始時期を医師と相談します。
3. 報告 (SBAR):
- S (Situation): 「52歳男性、石灰沈着性腱板炎の患者様が、VAS 8/10の激痛を訴えています。」
- B (Background): 「本日、入院。右肩の自動運動は困難ですが、他動運動は可能です。」
- A (Assessment): 「炎症が強く、安静が保てていない可能性があります。」
- R (Recommendation): 「NSAIDsの追加投与と、患肢の安静保持のための指示を確認したいです。」
4. 介入 (Intervention): 最重要! 急性期の安静保持のため、三角巾 (Sling) で患肢を固定し、肘を身体に密着させるよう指導します。冷却療法(アイシング)を15分おきに行い、腫脹と疼痛を軽減します。医師の指示に基づき、NSAIDs(例:ロキソプロフェン)の内服または坐剤を投与します。
5. 評価 (Evaluation): 疼痛がVAS 3/10以下に軽減し、患者が安静を保てていることを確認します。炎症が落ち着いた後(通常2~3日)、他動的な関節可動域訓練(CPMなど)を開始し、拘縮予防と機能回復を図ります。

患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions):
- 禁忌:急性期に無理な自動運動やマッサージ、温熱療法(ホットパック)を行うと、炎症を増悪させ、石灰の破綻範囲が拡大する危険があります。
- 注意:三角巾固定中は、腋窩の皮膚トラブル(発赤、ただれ)や、肘関節の拘縮予防のため、定期的に固定を解除して腋窩の清潔保持と軽度の肘関節運動を行う必要があります。
- 転倒・転落予防:患肢固定によりバランスを崩しやすいため、歩行時は杖の使用を指導し、病室の環境整備を行います。

看護プロトコル:
- 観察項目: 疼痛VAS、腫脹の程度(周径測定)、皮膚温、自他動運動の制限パターン(自動のみ制限か、他動も制限か)、発熱の有無、炎症反応(CRP、WBC)。
- 報告基準 (SBAR): 上記参照。
- 記録のポイント: 疼痛の性質(刺すような、灼けるような)、自動運動と他動運動の可動域(度数)、使用した鎮痛薬とその効果、患者の安楽の程度を具体的に記載する。
- 家族への説明の留意点: 「石灰沈着が原因の炎症で、急性期の安静が何より大切です。看護師が指示した範囲内で、無理のない日常生活動作を支援してください。リハビリは症状が落ち着いてから、医師の指示に従って開始します。」

先輩看護師の一言: 「この問題で大事なのは、『自動運動ができなくても他動運動ができる』という所見を見逃さないこと。現場で『患者さんが腕を上げられない』と言われたら、まず『自分で上げられないのか、それとも動かそうとしても動かないのか』を確認するクセをつけましょう。それが、石灰沈着性腱板炎か、腱板断裂か、五十肩かの最初の一歩になります!」

重要概念

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