核心解説
この問題は、
深部静脈血栓症 (Deep Vein Thrombosis: DVT)の身体診察で用いられる
ホーマンズ徴候 (Homans Sign) について問うています。高齢者の
大腿骨頸部骨折 (Femoral Neck Fracture)術後は、下肢の不動・安静による静脈還流低下からDVTのリスクが非常に高くなります。この徴候は、膝を伸展した状態で足関節を他動的に背屈させた際に、下腿後面(腓腹部)に疼痛が生じることを確認するものです。病態生理学的には、DVTにより炎症を起こした腓腹部の静脈が、足関節背屈に伴うアキレス腱の伸展で圧迫・牽引されることで痛みが誘発されます。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 問題文の「右下肢を伸ばした状態(膝伸展位)」「足関節を背屈」「下腿後面に痛み」という3条件が揃うのは、
ホーマンズ徴候 (Homans Sign) です。術後患者ではDVT予防の観察項目として必須であり、この徴候が陽性であれば、DVTの可能性を疑い、医師へ報告し、エコーやDダイマー検査の実施を検討します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意!
①番:
トンプソン徴候 (Thompson Test) はアキレス腱断裂の診断に用います。下腿後面を握り、足関節の底屈(足が下に向く動き)が起こるか確認するもので、背屈の操作とは異なります。
③番:
ラセーグ徴候 (Lasègue Sign) は下肢伸展挙上試験(SLRテスト)のことで、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛の評価に用います。背臥位で下肢を伸展させたまま挙上する動作です。
④番:
パトリック徴候 (Patrick Test/FABER Test) は股関節疾患(変形性股関節症など)の評価で、足関節を反対側の膝に乗せ、外旋・外転させる操作です。
⑤番:
トレンデレンブルグ徴候 (Trendelenburg Sign) は股関節外転筋(中殿筋など)の筋力低下を評価するもので、片脚起立時に骨盤が反対側に落下するかを見ます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
DVTの他の徴候としては、下腿の腫脹(周径差)、発赤、熱感、表在静脈の怒張(プラット徴候)があります。また、DVTが進行すると肺血栓塞栓症 (Pulmonary Embolism: PE) を引き起こし、
突然の胸痛、呼吸困難、SpO2低下などの重篤症状を呈します。術後はDVT予防として、弾性ストッキング (Elastic Stockings) や間欠的空気圧迫法 (IPC)、早期離床、フットポンプ運動の指導が重要です。
概念整理: ホーマンズ徴候はDVTのスクリーニング検査であり、膝伸展位での足関節他動的背屈による下腿後面痛。偽陽性(腓腹部の筋痙攣など)にも注意が必要。
一目で比較!:
| 徴候名 | 対象疾患 | 検査操作 |
|---|
| ホーマンズ徴候 | 深部静脈血栓症 (DVT) | 膝伸展位での足関節背屈 |
| トンプソン徴候 | アキレス腱断裂 | 下腿後面を握った時の足関節底屈 |
| ラセーグ徴候 | 腰椎椎間板ヘルニア | 下肢伸展挙上時の下肢後面痛 |
| パトリック徴候 | 股関節疾患 | 足関節を反対膝に乗せ外旋外転 |
| トレンデレンブルグ徴候 | 股関節外転筋力低下 | 片脚起立時の骨盤落下 |
看護過程ポイント: 【アセスメント】術後患者の下肢の腫脹・疼痛・色調変化の観察。ホーマンズ徴候の実施時は、患者の痛みの表情に注意し、強く押しすぎないようにする。【計画】DVT予防策(弾性ストッキング装着、IPC装着、フットポンプ運動の指導)を立案。【実施】バイタルサイン測定と共に徴候チェック。徴候陽性時は絶対にマッサージせず(血栓遊離のリスク)、医師報告。【評価】徴候の有無、Dダイマー値、下肢エコー結果。
暗記のコツ: 「ホーマンズはホ(腫れた)マン(マッサージ禁止)ズ(ずっとベッド上安静)」→ DVTの患者にマッサージは禁忌!という注意とセットで覚える。また、「膝を伸ばして足首をぐっと上に曲げると、ふくらはぎが痛い」というイメージ。
国試頻出ポイント: 術後合併症としてのDVT、予防的看護介入(弾性ストッキング、IPC、早期離床)、ホーマンズ徴候陽性時の対応(マッサージ禁止、医師報告)が頻出。類似徴候との鑑別問題もよく出ます。
出題パターン注意!: 単純な「ホーマンズ徴候はどれか」という知識問題から、「術後3日目の患者にホーマンズ徴候陽性。まず行う看護はどれか」のような状況設定問題に発展します。その場合、
下肢のマッサージは禁忌(血栓遊離→肺塞栓のリスク)、医師への報告、安静保持が正解になります。