核心解説
この問題は、
下垂体 (Pituitary Gland) の解剖生理、特に
前葉と後葉で分泌されるホルモンの違い を問う基礎的な知識問題です。下垂体は「内分泌の司令塔」と呼ばれ、前葉と後葉で機能が全く異なります。後葉はホルモンを合成せず、
視床下部 (Hypothalamus) で作られたホルモンを貯蔵し、必要に応じて放出する役割を持っています。
正解の根拠 (Answer Rationale):
抗利尿ホルモン (ADH: Antidiuretic Hormone) は視床下部の視索上核と室傍核で合成され、下垂体後葉に軸索輸送され貯蔵されます。体内の水分量が減少したり、血漿浸透圧が上昇すると、後葉から分泌され、腎臓の集合管における水の再吸収を促進し、体液を濃縮して保持します。このため、
ADHは下垂体後葉ホルモン であると覚えましょう。もう一つの後葉ホルモンは
オキシトシン (Oxtocin) で、分娩時の子宮収縮と乳汁射出反射に関与します。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①副腎皮質刺激ホルモン (ACTH)、②プロラクチン (PRL)、④甲状腺刺激ホルモン (TSH)、⑤成長ホルモン (GH) は、全て
下垂体前葉 (Adenohypophysis) から分泌されるホルモンです。前葉は視床下部から分泌される放出ホルモン(RH: Releasing Hormone)や抑制ホルモン(IH: Inhibiting Hormone)の指令を受けて、これらのホルモンを自ら合成・分泌します。問題文にある「後葉から分泌される」という条件に合致しません。
関連概念の整理 (Related Concepts): 下垂体ホルモンの分類は、国試で頻出の基本です。後葉ホルモンは「ADH(バソプレシン)」と「オキシトシン」の2つだけと覚え、前葉ホルモンは「ACTH, TSH, GH, PRL, FSH, LH, MSH」と多く存在することを対比して整理しましょう。また、ADH分泌異常の疾患である
尿崩症 (Diabetes Insipidus) と
SIADH (抗利尿ホルモン不適合分泌症候群) の病態も併せて学習すると、理解が深まります。
概念整理:
下垂体 (Pituitary Gland)
-
前葉 (Adenohypophysis): ホルモンを合成・分泌(ACTH, TSH, GH, PRL, FSH, LH, MSH)
-
後葉 (Neurohypophysis): 視床下部で合成されたホルモンを貯蔵・分泌(
ADH,
オキシトシン)
一目で比較!:
| 区分 | 分泌部位 | 代表ホルモン |
|---|
| 前葉ホルモン | 下垂体前葉(自ら合成) | ACTH, TSH, GH, PRL, FSH, LH |
| 後葉ホルモン | 下垂体後葉(貯蔵・放出のみ) | ADH, オキシトシン |
看護過程ポイント:
ADH分泌異常 の患者をケアする際、
尿量と尿比重、血清Na値、意識レベルの観察 が必須です。尿崩症では多尿・口渇、SIADHでは尿量減少・低Na血症による意識障害に注意が必要です。
暗記のコツ: 「後ろ(後葉)は2つだけ!」と覚えましょう。後葉ホルモンは「ADH(おしっこを止める)」と「オキシトシン(お産を進める)」の2つです。前葉は「A(ACTH)・T(TSH)・G(GH)・P(PRL)」と覚えるか、有名な語呂合わせ「前葉のホルモンは『あ・た・が・ぷ・る・えふ・えす・えいち・えむ』(ACTH, TSH, GH, PRL, FSH, LH, MSH)」で覚えましょう。
国試頻出ポイント: 下垂体ホルモンの分類は、ほぼ毎年何らかの形で出題されます。単純な「どちらから分泌されるか」だけでなく、
分泌異常による疾患(先端巨大症、クッシング病、尿崩症など)と症状 を組み合わせた問題が出やすいです。