核心解説
この問題は、
甲状腺ホルモン (Thyroid Hormones) の種類とその生理作用を正確に理解しているかを問うています。甲状腺から分泌される主要なホルモンは、
トリヨードサイロニン (T3 / Triiodothyronine)、
サイロキシン (T4 / Thyroxine)、および
カルシトニン (Calcitonin) です。それぞれの作用を混同しやすいため、丁寧に整理しましょう。
1.
核心概念の分析 (Key Concept):
この問題の核心は、甲状腺ホルモンの作用を「代謝」「心血管系」「神経系」に分けて理解することです。
-
T3 と T4(特に活性の高いT3)は、全身の
基礎代謝率 (Basal Metabolic Rate) を上昇 させます。これにより、酸素消費量と熱産生が増加します。
- 心血管系には
心拍数増加 (Tachycardia)、心収縮力増強として作用します。
- 神経系には
神経興奮性の亢進 をもたらし、振戦 (Tremor) や不眠、イライラ感を引き起こします。
- 代謝面では、
タンパク質異化 (Protein Catabolism) を促進 し、筋肉の萎縮や体重減少を来します。これは「タンパク質同化」と混同しないように注意が必要です。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale):
正解は
② トリヨードサイロニン(T3) - タンパク質異化の促進 です。
最重要! T3はT4より生物学的活性が約3~5倍強く、標的細胞の核内受容体に結合して遺伝子発現を調節します。その結果、タンパク質の分解(異化)が促進され、筋肉量が減少します(甲状腺機能亢進症で見られる筋力低下や体重減少の原因)。この作用は、成長ホルモンやインスリンによる「タンパク質同化(合成促進)」とは真逆の方向性です。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
⚠️ この内容は必ず (qn_ai_explain) 内に記述すること!(qn_wrong_c) は選択肢UI用の1行コメント専用なので、誤答分析を入れるとUIが崩れます。絶対に混同しないこと!
①
トリヨードサイロニン(T3) - 神経興奮性の低下
混同注意! T3は神経興奮性を「低下」させるのではなく「亢進」させます。甲状腺機能亢進症では、振戦、頻脈、発汗、興奮状態が見られます。逆に、甲状腺機能低下症では無気力、動作緩慢、反射低下(神経興奮性低下)が特徴です。
③
サイロキシン(T4) - 心拍数の減少
T4(およびT3)は心拍数を「減少」させるのではなく「増加」させます。甲状腺ホルモンは心筋のβ受容体感受性を高め、洞結節の自動能を亢進させるため、頻脈 (Tachycardia) を引き起こします。これは心不全の代償不全や心房細動の誘因にもなります。
④
カルシトニン - 血中カルシウム濃度の上昇
混同注意! カルシトニンは、骨吸収(破骨細胞の働き)を抑制し、腎臓でのカルシウム再吸収を抑制することで、
血中カルシウム濃度を低下させる ホルモンです。「血中カルシウム上昇」は
副甲状腺ホルモン (PTH / Parathyroid Hormone) の作用です。ここが頻出の混同ポイントです。
⑤
サイロキシン(T4) - 基礎代謝率の低下
T4は基礎代謝率を「低下」させるのではなく「上昇」させます。甲状腺機能亢進症では基礎代謝率が +30~+60% に上昇し、発熱、発汗、体重減少を来します。低下するのは甲状腺機能低下症です。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts):
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甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism / バセドウ病 Graves' Disease):T3, T4 過剰分泌 → 代謝亢進、頻脈、体重減少、眼球突出
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甲状腺機能低下症 (Hypothyroidism):T3, T4 低下 → 代謝低下、徐脈、体重増加、粘液水腫 (Myxedema)
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カルシトニン vs PTH:カルシトニンは「骨にカルシウムを入れ、血中カルシウムを下げる」、PTHは「骨からカルシウムを出し、血中カルシウムを上げる」と覚えましょう。この拮抗作用は、副甲状腺と甲状腺の関係で頻出です。
| ホルモン | 分泌部位 | 主要作用 | 血中Caへの影響 |
|---|
| カルシトニン | 甲状腺傍濾胞細胞 (C細胞) | 骨吸収抑制、腎Ca再吸収抑制 | 低下 |
| PTH | 副甲状腺 | 骨吸収促進、腎Ca再吸収促進、ビタミンD活性化 | 上昇 |
概念整理: 甲状腺ホルモン (T3, T4) の作用は「代謝亢進」で統一。神経興奮性亢進、心拍数増加、タンパク質異化促進、基礎代謝率上昇。
一目で比較!: カルシトニン(Ca低下) vs PTH(Ca上昇)は対にして覚える。また、T3は活性型、T4は貯蔵型・前駆体で、末梢組織でT4からT3への変換が行われる点も重要です。
看護過程ポイント: 甲状腺機能亢進症の患者では、代謝亢進による栄養不足、頻脈による心負荷、興奮による睡眠障害をアセスメント。看護診断としては「非効果的健康維持」「活動不耐容」「不眠」などが優先されます。
暗記のコツ: 「T3とT4は『元気いっぱいホルモン』!」→ 代謝UP、心拍UP、神経UP、タンパク質は分解(異化)する。「カルシトニンは『カルシウムをトニン(沈める)』」と語呂合わせで覚えましょう。
国試頻出ポイント: T3/T4の作用と、カルシトニン/PTHの対比は毎年必出。特に「血中Ca濃度を上昇/下降させるホルモン」は正答率が分かれる問題です。事例問題では、バセドウ病の症状(頻脈、発汗、体重減少、眼球突出)と、甲状腺機能低下症の症状(徐脈、体重増加、動作緩慢、便秘)を対比して出題されます。
出題パターン注意!: 単純な知識問題(ホルモンと作用の組み合わせ)から、事例問題へ発展。「30代女性、動悸、発汗、体重減少、手指振戦あり。この患者に最も関連するホルモンは?」という形で出題されます。また、甲状腺全摘後の患者の看護として「カルシトニン低下による高カルシウム血症(誤り)」という選択肢もよく出ます(実際は副甲状腺損傷による低カルシウム血症に注意)。