核心解説
この問題は、
膵臓 (Pancreas) の内分泌機能、特に
ランゲルハンス島 (Islets of Langerhans) の各細胞が分泌するホルモンの作用を問う、基礎医学の頻出テーマです。血糖値の調節機構を理解する上で、どのホルモンが血糖を上昇/低下させるのか、そしてどの細胞から分泌されるのかを正確に覚えることが求められます。
最重要! 血糖値を低下させる唯一のホルモンは
インスリン (Insulin) です。これはランゲルハンス島の
β細胞 (Beta Cells) から分泌され、末梢組織(骨格筋、脂肪組織)でのグルコース取り込みを促進し、肝臓での糖新生を抑制することで、血糖値を下げます。
逆に、血糖値を上昇させるホルモン(
グルカゴン (Glucagon)、コルチゾール、アドレナリン、成長ホルモンなど)と混同しないように注意が必要です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
選択肢②
インスリン が正解です。
β細胞から分泌され、血糖値を低下させるという2つの条件を完全に満たしています。インスリン分泌が低下する
1型糖尿病 (Type 1 Diabetes Mellitus) や、インスリン作用が低下する
2型糖尿病 (Type 2 Diabetes Mellitus) では、高血糖状態が続くことを理解しておきましょう。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 各ホルモンの分泌細胞と作用を整理しましょう。
①
膵ポリペプチド (Pancreatic Polypeptide, PP) はランゲルハンス島のPP細胞(F細胞)から分泌され、消化管運動や膵液分泌を調節しますが、血糖値への直接的な作用は主ではありません。
③
グルカゴン (Glucagon) はα細胞から分泌され、肝臓でのグリコーゲン分解と糖新生を促進して血糖値を上昇させるため、インスリンと対になるホルモンです。低血糖時に分泌が亢進します。
④
グレリン (Ghrelin) は主に胃で産生されるホルモンで、食欲を促進し成長ホルモン分泌を刺激します。血糖値調節が主作用ではありません。
⑤
ソマトスタチン (Somatostatin) はδ細胞から分泌され、インスリンやグルカゴン、成長ホルモンなどの分泌を抑制するパラクリン作用を持ちますが、それ自体が直接血糖値を低下させる主要ホルモンではありません。
関連概念の整理 (Related Concepts)
血糖調節に関わるホルモンは、インスリン(唯一の血糖降下ホルモン)と、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモン(全て血糖上昇ホルモン)の拮抗的な作用によって成り立っています。このバランスが崩れると糖尿病や低血糖症を発症します。また、インスリンとグルカゴンの分泌がソマトスタチンによって局所的に調節されていることも、膵臓の微小循環を考える上で重要です。
概念整理
| 細胞 | 分泌ホルモン | 主な作用 |
|---|
| α細胞 (A細胞) | グルカゴン (Glucagon) | 血糖上昇(グリコーゲン分解・糖新生促進) |
| β細胞 (B細胞) | インスリン (Insulin) | 血糖低下(糖取り込み促進・糖新生抑制) |
| δ細胞 (D細胞) | ソマトスタチン (Somatostatin) | インスリン・グルカゴン分泌抑制(パラクリン) |
| PP細胞 (F細胞) | 膵ポリペプチド (Pancreatic Polypeptide) | 消化管運動・膵液分泌調節 |
一目で比較!
| ホルモン | 血糖への影響 | 分泌細胞 |
|---|
| インスリン | 低下 | β細胞 |
| グルカゴン | 上昇 | α細胞 |
| アドレナリン | 上昇 | 副腎髄質 |
| コルチゾール | 上昇 | 副腎皮質 |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 糖尿病患者の血糖コントロール状態を評価する際、このインスリンと拮抗ホルモンの関係を理解していると、
低血糖症状(冷汗、振戦、意識障害)や
高血糖症状(口渇、多飲、多尿)の出現メカニズムを患者に説明できます。
-
看護介入: インスリン投与時は、低血糖発現のリスクを常に考慮し、血糖測定と症状観察を徹底します。
暗記のコツ
- 「
インスリンは血糖を下げる」と覚えましょう。インスリン(Insulin)の語感から「In(中に) sugar(糖)をin(入れる)」とイメージすると、末梢細胞への糖取り込み促進を思い出せます。
- グルカゴン(Glucagon)は「血糖を上げる」ホルモンです。「glucose(ブドウ糖)を上げる(go up)」と関連付けると良いでしょう。
国試頻出ポイント
- 「
血糖値を下げるホルモンはどれか」という直接的な問題。
- 「
ランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるホルモンはどれか」という分泌細胞とホルモンの組合せ問題。
- 状況設定問題では、
糖尿病患者の低血糖発作時に、グルカゴンとインスリンのどちらを投与するべきか(グルカゴンが正解)という応用問題としても出題されます。
出題パターン注意!
単純な知識問題としてだけでなく、「インスリン分泌が低下した際に、相対的に優位になるホルモンはどれか?」のように、糖尿病の病態生理と絡めた問題も頻出です。ホルモンの作用を「上げる」「下げる」の方向性で整理しておきましょう。