核心解説
この問題は、
視床下部-下垂体-性腺系 (Hypothalamic-Pituitary-Gonadal Axis, HPG Axis) の基礎を問うものです。看護師国家試験では、ホルモンの「上位中枢 → 下垂体 → 標的臓器」という階層的な調節機構を理解しているかが頻出ポイントです。この問題の核心は、
卵胞刺激ホルモン (FSH) と
黄体形成ホルモン (LH) という2つの下垂体前葉ホルモンの分泌を促す、視床下部の放出ホルモンを特定することです。
最重要! 視床下部は、様々な刺激(ストレス、日内リズム、血中ホルモン濃度など)を感知し、下垂体前葉に指令を送るための「放出ホルモン (Releasing Hormones)」または「抑制ホルモン (Inhibiting Hormones)」を分泌します。このカスケードを正確に覚えることが、内分泌系の問題を解く鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は
ゴナドトロピン放出ホルモン (GnRH) です。GnRHは視床下部の弓状核で産生され、下垂体門脈系を介して下垂体前葉に到達します。下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞(Gonadotrophs)に作用し、
FSHとLHの両方の合成と分泌を促進します。FSHは主に卵胞発育、LHは排卵と黄体形成を誘導します。このように、GnRHは生殖機能の司令塔として極めて重要なホルモンです。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! 視床下部ホルモンは、それぞれが特定の下垂体ホルモンの分泌を調節しています。名前と作用の対応をしっかり整理しましょう。
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① プロラクチン放出因子 (PRF): プロラクチン (PRL) の分泌を促進します。PRLは主に乳汁分泌を促進します。PRFの存在は確認されていますが、主な調節はドーパミンによる抑制(PIF)である点も併せて覚えておきましょう。
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② 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン (CRH): 下垂体前葉に作用し、副腎皮質刺激ホルモン (ACTH) の分泌を促進します。ACTHは副腎皮質を刺激し、コルチゾールを分泌させます(ストレス反応)。
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③ 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH): 下垂体前葉に作用し、甲状腺刺激ホルモン (TSH) の分泌を促進します。TSHは甲状腺を刺激し、T3・T4を分泌させます。
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⑤ 成長ホルモン放出ホルモン (GHRH): 下垂体前葉に作用し、成長ホルモン (GH) の分泌を促進します。GHは身体の成長や代謝に重要な役割を果たします。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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フィードバック機構: GnRHの分泌は、性腺から分泌される性ステロイドホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン)や、インヒビンによって正・負のフィードバック調節を受けます。この複雑な調節が、月経周期や精子形成のリズムを作り出しています。
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GnRHアゴニスト/アンタゴニスト: 臨床では、GnRHの持続的投与(アゴニスト)は逆説的に下垂体のGnRH受容体をダウンレギュレーションし、FSH・LH分泌を抑制します。これは前立腺癌や子宮内膜症、思春期早発症などの治療に利用されます。
概念整理
| 視床下部ホルモン | 標的(下垂体前葉) | 下垂体ホルモン | 標的臓器 |
|---|
| GnRH | 性腺刺激ホルモン産生細胞 | FSH / LH | 卵巣 / 精巣 |
| CRH | 副腎皮質刺激ホルモン産生細胞 | ACTH | 副腎皮質 |
| TRH | 甲状腺刺激ホルモン産生細胞 | TSH | 甲状腺 |
| GHRH | 成長ホルモン産生細胞 | GH | 全身(骨・肝臓など) |
| PRF(主に抑制:ドーパミン=PIF) | 乳汁分泌ホルモン産生細胞 | PRL | 乳腺 |
一目で比較!
| ホルモン名 | 視床下部 | 下垂体前葉 | 標的臓器ホルモン |
|---|
| 甲状腺系 | TRH | TSH | T3, T4(甲状腺) |
| 副腎系 | CRH | ACTH | コルチゾール(副腎皮質) |
| 生殖系 | GnRH | FSH, LH | エストロゲン, プロゲステロン, テストステロン(性腺) |
| 成長系 | GHRH | GH | IGF-1(肝臓など) |
看護過程ポイント
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アセスメント: 不妊症、思春期発来の異常(早発症/遅発症)、性機能低下症などの患者において、GnRH負荷試験が行われることがあります。検査の目的(視床下部性か下垂体性かの鑑別)と、患者への説明(採血回数、副作用など)を理解しておきましょう。
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看護介入: GnRHアゴニスト(例:リュープリン®)投与中の患者では、初期に一過性のFSH・LH上昇(フレアアップ現象)による症状(骨盤痛、不正出血など)がみられることがあるため、観察と説明が必要です。
暗記のコツ
「
Goナルド(男性)と
release(放出)」→
GnRH → 性腺刺激ホルモン(FSH, LH)を放出! と覚えましょう。または、「Gonad(生殖腺)」に効くReleasing HormoneだからGnRH、と語源から理解するのも効果的です。
国試頻出ポイント
- 視床下部-下垂体-標的臓器のホルモンカスケードは、毎年のように何らかの形で出題されます。必ず一覧表で暗記しましょう。
- GnRHの分泌様式(パルス状分泌)と、これが月経周期に与える影響(特にLHサージの誘発)も、より深い問題で問われる可能性があります。