Aさんは膀胱全摘出術および回腸導管造設術を受けることになった。Aさんへの術前の説明で正しいのはどれか。 | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

Aさんは膀胱全摘出術および回腸導管造設術を受けることになった。Aさんへの術前の説明で正しいのはどれか。

Aさん(57歳、男性)は、芳香族アミンを扱う化学工場に39年勤務している。現病歴:ここ数か月で次第に尿の色が濃くなった。いきまないと排尿できなくなり、泌尿器科を受診し、採血および尿検査を受けた。既往歴:特記すべき点なし。生活歴:喫煙40本/日を36年間、焼酎120mLの飲酒をほぼ毎日、20年間続けている。身体所見:顔面、四肢に浮腫なし、黒色便なし、血便なし。検査所見:赤血球308万/µL、Hb9.9g/dL、血清アルブミン4.2g/dL、血清総ビリルビン0.2mg/dL、血糖102mg/dL、ヘモグロビンA1c〈HbA1c〉5.4%。
解説
膀胱全摘出術により尿を溜める膀胱と尿意を感じる神経が失われるため、術後は「尿意は感じなくなります」。回腸導管は腹壁にストーマ(尿路ストーマ)を造設して尿を持続的に排泄するものであり、装具をつけて入浴可能です。水分制限は通常不要で、肛門から尿が出るのは尿管S状結腸吻合術などの場合です。

詳細解説

核心解説 この問題は、膀胱全摘出術 (Total Cystectomy) および 回腸導管造設術 (Ileal Conduit) を受ける患者への術前指導の正否を問うています。膀胱全摘出術では、尿を貯留する器官である膀胱が摘出されるため、尿意 (Urge to Void / Bladder Sensation) が完全に消失することが病態生理学的に最も重要なポイントです。尿意は膀胱壁の伸展受容器が刺激されることで生じる感覚であり、膀胱が存在しなくなる以上、この感覚は永久に失われます。術後の排尿方法は、尿路変向術として回腸の一部を利用して腹壁にストーマ(尿路ストーマ)を造設し、尿を持続的に体外へ排泄する方式に変わります。 正解の根拠 (Answer Rationale) 正解は「尿意は感じません」です。最重要! 膀胱は尿を貯める臓器であり、膀胱壁が伸展されることで「尿意」という感覚が発生します。膀胱を全摘出するため、この尿意を感じるメカニズムそのものが失われます。患者は尿意を感じることはなく、ストーマ装具(パウチ)に尿が持続的に流れ出る状態となります。そのため、術前から「尿意を感じなくなる」ことを丁寧に説明し、新しい排尿方法(ストーマ管理)への心理的適応を促すことが看護の重要な役割です。 誤答の分析 (Distractor Analysis) 1. 「浴槽のお湯に入ることはできません」→ 混同注意! 回腸導管造設術後は、ストーマ装具を装着した状態で入浴は可能です。装具が剥がれないように注意する必要はありますが、入浴自体は禁止されません(術後早期の創部が完全に治癒した後)。完全に入浴禁止になるわけではないため、この選択肢は誤りです。 2. 「水分の摂り過ぎに注意が必要です」→ 回腸導管では尿路が腸管粘膜で覆われているため、水分や電解質の再吸収がわずかに起こりますが、通常は水分制限は必要ありません。むしろ、尿路感染予防や腎機能保護のために十分な水分摂取(1日1500〜2000mL程度)が推奨されることが多いです。「水分の摂り過ぎに注意」という指導は不適切です。 3. 「肛門から尿が出ます」→ この説明は、尿路変向術の一種である 尿管S状結腸吻合術 (Ureterosigmoidostomy) など、尿を直腸に導く術式の場合に該当します。しかし、本症例で行われる回腸導管造設術は、尿を腹壁に造設したストーマから排泄する術式であり、肛門から尿が出ることはありません。 関連概念の整理 (Related Concepts) - 混同注意! 尿路変向術の種類: (1) 回腸導管 (Ileal Conduit): 回腸の一部を導管として利用、腹壁にストーマを造設。尿意なし、持続的排泄。 (2) 尿管皮膚瘻 (Ureterocutaneostomy): 尿管を直接皮膚に出したもの。 (3) 代用膀胱 (Neobladder / Orthotopic Bladder Substitution): 腸管で新たな膀胱を作り、尿道と吻合。尿意は感じにくいが、腹圧やタイミングで排尿訓練が必要。この術式では尿意は完全消失とは限らないため、問題文の「全摘出術」と「回腸導管」の組み合わせを正確に読み取ることが重要です。 - ストーマケアの基礎: ストーマの観察(色調:正常は赤色、虚血時は暗紫色に変化)、装具交換、スキンケア、食事・水分・活動の指導。 概念整理: 膀胱の機能と尿意のメカニズム
膀胱は尿を貯留する器官。膀胱壁が伸展 → 骨盤神経を介して脊髄(仙髄)→ 脳幹・大脳皮質へ伝達 → 尿意として認識。膀胱全摘出でこの経路が完全に遮断されるため、尿意は消失する。回腸導管は単なる導管(パイプ)であり、尿を貯める機能はないため、尿意は生じない。 一目で比較!
尿路変向術尿意排尿方法主な管理
回腸導管消失ストーマから持続的排泄ストーマ装具管理
代用膀胱 (Neobladder)減弱または消失腹圧+自己導尿または自然排尿訓練自己導尿・排尿日誌
尿管S状結腸吻合消失(直腸で便とともに貯留)肛門から随時排泄高アンモニア血症・電解質異常注意
看護過程ポイント
アセスメント: 膀胱癌の診断確定、手術適応、患者の心理状態(ストーマ受容への不安)。看護診断: 不安 (Anxiety) 関連因子:術後のボディイメージ変化、排尿方法の変化。計画・実施: 術前からストーマサイトマーキング(ストーマの位置決め)、ストーマ管理のパンフレットを用いた説明、同じ術式を受けた患者の体験談(ピアサポート)の紹介。評価: 患者が術後の生活変化(尿意消失、ストーマ管理)を理解し、心理的準備ができているか。 暗記のコツ
「膀胱 = 貯める臓器 = 尿意の発生源」→ 「膀胱を取る = 尿意がなくなる」と単純に覚えましょう。「回腸導管 = パイプ(導管)」→ パイプには貯める機能も感覚もない。この2つをセットでイメージすれば、「尿意は感じない」が正解だとすぐに導けます。 国試頻出ポイント
膀胱全摘出術と尿路変向術の組み合わせは、術後看護の問題として頻出です。特に「尿意の有無」「排泄経路(ストーマ or 肛門)」「入浴の可否」「水分摂取の必要性」はセットで問われやすいテーマです。混同注意! 代用膀胱(新膀胱)では尿意が完全に消失するわけではなく、排尿訓練が必要になる点と、回腸導管では尿意が完全に消失する点をしっかり区別しましょう。 出題パターン注意!
単純知識問題として「術後の尿意はどうなるか?」を問うだけでなく、事例問題として「Aさんが術後に『尿が漏れてしまうのではないか』と不安を訴えた。看護師の対応として適切なのはどれか」のような状況設定問題にも発展します。術前指導の内容と、術後の心理的適応支援を関連付けて学習しておきましょう。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario)
57歳男性、膀胱癌(浸潤性)と診断され、膀胱全摘出術+回腸導管造設術が予定されています。術前訪問で患者は「お風呂に入れなくなるのは嫌だ」「トイレに行かなくて済むようになるのは楽だが、尿が漏れるのが怖い」と看護師に話しました。ストーマサイトマーキングが予定されており、ストーマの位置や生活への影響について説明する必要があります。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment)
最重要! まず、患者の誤解を解くことが優先です。「お風呂に入れない」という誤解には、「ストーマ装具(パウチ)を付けたまま入浴できます。お風呂の時に装具がはがれないように注意が必要ですが、基本的には普段通りお風呂に入っていただけます」と具体的に説明します。次に、尿意消失については「膀胱を全部取ってしまうので、尿が溜まった感じ(尿意)はなくなります。その代わり、ストーマから尿が少しずつ出続けるので、こまめにパウチの中を確認していただくことになります」と伝えます。ストーマサイトマーキングは、患者が座位・立位・臥位になった状態で、皮膚のひだや骨の出っ張り、ベルトラインを避けた位置に、患者と一緒に決定します。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions)
- ストーマの位置決め: 患者自身が日常的に見え、ケアしやすい位置(通常は腹直筋上)を選ぶことが重要。位置が悪いと装具の密着不良 → 漏れ → スキントラブル(皮膚障害 (Peristomal Skin Complications))の原因となる。 - 術前の腸管処置: 回腸導管に使用する回腸を清潔に保つため、術前に洗腸や絶食、抗生物質投与が行われる。患者のコンプライアンス(指示遵守)が重要。 - 脱水予防: 回腸導管では腸管粘膜からの水分・電解質喪失がわずかに増加するため、術後は十分な水分摂取(1日2000mL程度を目標)を指導する。 看護プロトコル
観察項目: 術前(膀胱癌の進展度、腎機能(Cre、eGFR)、全身状態)、術後(ストーマの色調・大きさ・出血・浮腫、尿量・尿の性状、排ガス・排便の再開、創部の状態)。報告基準(SBAR): S(状況)「Aさん、膀胱全摘出術後3日目、ストーマの色調が暗紫色に変化」 B(背景)「バイタルサイン安定、尿量は50mL/h」 A(アセスメント)「ストーマの血行障害が疑われます」 R(推奨)「医師の診察を依頼します」。記録のポイント: ストーマの色調、尿量、装具の交換状況、スキンケアの状態、患者の心理面(ストーマ受容の程度)。 先輩看護師の一言
「膀胱全摘とストーマ造設は、患者さんにとっては『尿意を失う』『排泄の形が変わる』という大きなライフイベントです。術前の説明で大切なのは、『できないこと』を強調するのではなく、『できること』を具体的に伝えることです!『お風呂に入れます』『旅行もできます』『仕事も続けられます』と前向きな情報を伝え、患者さんの不安を軽減してあげてください。国試ではこの術式の基礎知識が問われますが、現場では『術後ストーマサイトマーキングの重要性』『ストーマ装具の選択と交換技術』『患者の心理的サポート』が看護師の腕の見せどころです!」

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