核心解説
この問題は、
冠動脈バイパス術〈CABG〉 後の患者における
離床の中止基準 を問うています。術後の離床(早期離床)は、廃用症候群の予防や呼吸機能・循環動態の改善に有効ですが、患者の状態が不安定な場合には中止しなければなりません。重要なのは、「離床によって患者に悪影響を及ぼすリスクが高い状態」を見極めることです。特に
心拍出量の低下 や
不整脈の出現 は、離床によってさらに状態が悪化する可能性が高いため、中止の明確な指標となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
正解は
④ 新たな不整脈(心房細動)が発生している と
⑤ 時間尿量0.5mL/kg/時が3時間持続している です。
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最重要! ④:術後の
心房細動 (Atrial Fibrillation) は、心拍出量を著しく低下させ、血圧低下や心不全を誘発する危険な不整脈です。この状態で離床を進めると、心臓にさらなる負荷がかかり、ショックや心停止に至る可能性があります。離床は
直ちに中止 し、医師へ報告して治療(薬物療法や電気的除細動など)を優先します。
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最重要! ⑤:時間尿量
0.5mL/kg/時以下 が持続する状態は
乏尿 (Oliguria) と呼ばれ、腎臓への血流が不十分であることを示します。これは、
心拍出量 (Cardiac Output) の低下 や
循環血液量の減少 を反映しており、離床によって血圧が変動すると、さらに腎血流が低下し、急性腎障害 (AKI) に陥るリスクが高まります。離床を中止し、循環動態の安定化を優先します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
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混同注意! ①番「ドレーンが留置中である」:ドレーン(心嚢ドレーン、胸腔ドレーン)が留置されていることは、離床の絶対的な禁忌ではありません。ドレーン類はバッグやボトルに接続されており、歩行時や離床時にはスタッフが管理しながら移動を支援します。ドレーンがあるから離床できない、という誤解は臨床でもよくあるので注意しましょう。
- ②番「安静時の呼吸数が20/分である」:呼吸数20/分は、成人の正常範囲(通常12~20回/分)の上限ですが、異常な頻呼吸とは言えません。この程度の呼吸数であれば離床は可能です。ただし、離床中に呼吸数が増加し、呼吸困難が出現した場合は中止を検討します。
- ③番「安静時の心拍数が100/分である」:心拍数100/分は軽度の頻脈(洞性頻脈)ですが、これ単独では離床の中止基準にはなりません。術後は発熱や疼痛、循環動態の変化で心拍数が上昇することはよくあります。ただし、120/分以上の頻脈や新たな不整脈を伴う場合は中止すべきです。
関連概念の整理 (Related Concepts)
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離床中止基準 (Ambulation Termination Criteria):循環動態の悪化(新たな不整脈、血圧低下、頻脈)、呼吸状態の悪化(SpO2低下、呼吸困難)、意識レベルの低下、重度の疼痛、出血の兆候などが含まれます。
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乏尿と心拍出量:心拍出量が低下すると、腎臓への血流が減少し、尿量が減少します。術後の乏尿は、循環不全の早期発見に重要な指標です。一方、時間尿量が十分(1mL/kg/時以上)であれば、循環動態が安定している可能性が高いと言えます。
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混同注意! CABG術後の心房細動:CABG術後には、炎症やカテコラミン、電解質異常などにより、約30%の患者に新たな心房細動が発生します。これは離床を遅らせるだけでなく、血栓塞栓症のリスクも高めるため、抗不整脈薬や抗凝固療法が必要となる場合があります。
概念整理: 術後離床中止の核心は「患者の予備能を超えたストレスがかかることの回避」。特に循環動態の不安定性(不整脈、乏尿、血圧低下)は離床中止の絶対的指標。ドレーン類は管理可能な因子であり、中止理由にはならない。
一目で比較!:
| 状態 | 離床可否 | 根拠 |
|---|
| 新たな心房細動 | 中止 | 心拍出量低下・血圧不安定のリスク大 |
| 乏尿 (0.5mL/kg/時以下) | 中止 | 循環不全・腎血流低下を示唆 |
| ドレーン留置中 | 可能 | 管理・移動補助で対応可能 |
| 呼吸数20/分 | 可能 | 正常範囲内の軽度上昇 |
看護過程ポイント:
アセスメント:離床前後でのバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2)、心電図モニター、尿量の変化を評価。特に不整脈の出現と尿量減少に注意。
看護診断 (Nursing Diagnosis):「活動耐受力低下 (Decreased Activity Tolerance)」または「心拍出量減少 (Decreased Cardiac Output) のリスク状態」。
計画・実施:中止後は医師へSBAR(Situation, Background, Assessment, Recommendation)で報告。必要に応じて酸素投与、薬剤投与(抗不整脈薬、利尿薬など)の準備。
評価:中止により状態が改善したか、再度離床が可能になるタイミングを医師と検討。
暗記のコツ: 離床中止基準は「
サーキットの異常」で覚えましょう。「サーキット(循環:Circulation)」の異常として、
不整脈(サーキットの電気的異常)、
乏尿(サーキットのポンプ不全による腎血流低下)。ドレーンや軽度の頻脈・頻呼吸は「管理可能なサーキットの付属品」とイメージしてください。
国試頻出ポイント: 術後看護、特に心臓外科術後(CABG、弁膜症手術)の急性期管理は国試の頻出テーマです。離床の可否だけでなく、離床の段階(ベッド上端坐位 → 端座位 → 立位 → 歩行)や、離床のメリット(廃用予防、呼吸機能改善、深部静脈血栓症予防)とデメリット(転倒、循環動態悪化)も併せて学習しておきましょう。
出題パターン注意!: 単純な「離床中止の指標はどれか」という知識問題から、「患者のバイタルサインが○○になった場合、看護師として適切な対応はどれか」という状況設定問題(事例問題)に発展します。必ず「なぜその指標が中止なのか」を病態生理と結びつけて理解しておきましょう。