核心解説
この問題は、
脊髄 (Spinal Cord) の各高位における
反射弓 (Reflex Arc) の知識を問うています。特に、
深部腱反射 (Deep Tendon Reflex, DTR) は、特定の脊髄高位を評価するための重要な神経学的診察法です。選択肢の中で、
膝蓋腱反射 (Patellar Tendon Reflex) の反射中枢は
第2〜第4腰髄 (L2〜L4) であるため、この部位の障害を把握するために確認します。正解は③番です。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! 膝蓋腱反射は、膝蓋腱をハンマーで叩打することで、大腿四頭筋の収縮による下腿の伸展を引き起こす反射です。その求心路および遠心路は
L2〜L4 レベル の脊髄を通過します。この反射の低下や消失は、同高位の脊髄障害、末梢神経障害(大腿神経など)、または上位運動ニューロン障害による痙性麻痺(この場合は亢進)を示唆します。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 輻輳反射(Convergence Reflex)は、近くのものを見る際に両眼が内側に寄る反応で、
中脳 (Midbrain) レベルの機能を評価します。脊髄障害の評価には用いません。
② 腹壁反射(Abdominal Reflex)は、皮膚反射の一種で、その反射中枢は
胸髄 (T7〜T12) です。L2〜L4の評価には該当しません。
④
混同注意! Trousseau徴候(Trousseau's Sign)は、低カルシウム血症(Hypocalcemia)によりテタニーが誘発される徴候で、
カルシウム代謝異常 の評価に用います。脊髄レベルの評価ではありません。
⑤ Blumberg徴候(Blumberg's Sign)は、
腹膜刺激症状 (Peritoneal Irritation Sign) の一つで、虫垂炎などの腹部疾患の診断に用います。脊髄障害の評価とは無関係です。
関連概念の整理 (Related Concepts):
脊髄高位と主な深部腱反射の対応を整理しておきましょう。
| 反射名 | 反射中枢 (脊髄高位) | 評価する神経根 |
| 膝蓋腱反射 (Patellar Reflex) | L2〜L4 | 大腿神経 (Femoral Nerve) |
| アキレス腱反射 (Achilles Reflex) | S1〜S2 | 脛骨神経 (Tibial Nerve) |
| 上腕二頭筋反射 (Biceps Reflex) | C5〜C6 | 筋皮神経 (Musculocutaneous Nerve) |
| 上腕三頭筋反射 (Triceps Reflex) | C7〜C8 | 橈骨神経 (Radial Nerve) |
概念整理:
深部腱反射 (DTR) は、特定の脊髄セグメントの機能を反映する重要な神経学的指標です。反射の亢進は上位運動ニューロン障害(痙性麻痺)を、減弱・消失は下位運動ニューロン障害(弛緩性麻痺)や末梢神経障害を示唆します。
一目で比較!:
混同注意! 表在反射 (Superficial Reflex) である腹壁反射(T7〜T12)・精巣挙筋反射(L1〜L2)・肛門反射(S4〜S5)と、
深部反射 (DTR) である膝蓋腱反射(L2〜L4)・アキレス腱反射(S1〜S2)の反射中枢レベルは必ず区別してください。
看護過程ポイント: 神経学的アセスメントでは、
意識レベル(JCS/GCS)・瞳孔・運動機能・感覚機能・反射 を系統的に評価します。反射の評価は、特に脊髄損傷や脳血管障害の患者において、障害レベルの特定と経過観察に不可欠です。
暗記のコツ: 「膝を叩く(Patellar)→ 膝が伸びる → L2〜L4」と覚えましょう。「アキレス腱(Achilles)→ 足首が曲がる → S1〜S2」も同様です。数字の順番(L2 < L4 < S1 < S2)も意識すると整理しやすいです。
国試頻出ポイント: 深部腱反射の反射中枢レベルは、毎年必ずと言っていいほど出題される基礎知識です。単独での出題だけでなく、「脊髄損傷(頚髄・胸髄・腰髄)の患者の看護」といった事例問題の中で、障害高位を推定するために用いられることも多いです。