核心解説
この問題は、
高次脳機能障害 (Higher Brain Dysfunction) における症状のひとつである
失行 (Apraxia) の正しい理解を問うています。失行とは、運動麻痺や筋力低下、感覚障害がないにもかかわらず、意図した目的のある動作ができなくなる状態です。
最重要! 失行は「
動作の手順や道具の使い方に関する記憶・プログラム」の障害であり、例として「箸で食事ができない」「歯ブラシの使い方がわからない」「服の着方がわからない」などが挙げられます。
選択肢②「買い物かごの使い方が分からない」は、買い物かごという道具の使用方法が想起できず、目的動作(かごを持つ、商品を入れる)を実行できない状態であり、失行の典型例です。
正解の根拠 (Answer Rationale)
最重要! 失行は
観念運動失行 (Ideomotor Apraxia) や
観念失行 (Ideational Apraxia) などに分類されます。選択肢②の「買い物かごの使い方が分からない」は、道具の用途や動作の順序がわからなくなる
観念失行の特徴に合致します。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
混同注意! ①番「何を買いに来たのか忘れる」は
記憶障害 (Memory Impairment)、特に
前向性健忘 (Anterograde Amnesia) の症状です。新しい情報を記憶できない状態であり、失行とは異なります。
混同注意! ③番「献立に合わせた買い物ができない」は
遂行機能障害 (Dysexecutive Syndrome) に該当します。計画立案、優先順位づけ、柔軟な思考が障害される状態であり、前頭葉機能の低下を示します。
混同注意! ④番「スーパーと自宅の往復で道に迷う」は
空間認知障害 (Spatial Cognition Disorder) または
半側空間無視 (Unilateral Spatial Neglect) の症状である可能性が高いです。特に、見当識障害や地誌的見当識障害(Geographic Disorientation)が疑われます。
関連概念の整理 (Related Concepts)
| 症状 | 定義 | 具体例 |
|---|
| 失行 (Apraxia) | 運動障害なしに目的動作ができない | 「靴下の履き方がわからない」「コップの使い方がわからない」 |
| 失認 (Agnosia) | 感覚障害なしに対象を認識できない | 「時計を見せられてもそれが時計だとわからない」 |
| 失語 (Aphasia) | 言語機能の障害 | 「言葉が出てこない」「相手の言うことが理解できない」 |
概念整理: 失行は「
運動のプランニング」が障害される症状です。患者は筋力も動きの可動域も正常ですが、動作を構成する手順の想起や、道具の用途が理解できなくなります。
一目で比較!:
混同注意! 失行 (Apraxia) vs 失調 (Ataxia):失調は小脳障害による協調運動障害で、手足の震えやふらつきが生じます。失行は意図の障害、失調は動きの調整障害です。
看護過程ポイント: アセスメントでは、患者の動作を観察し、どの段階でつまずくかを分析(道具を取る動作、使用開始、順序、終了動作)。看護診断としては「
非効果的健康維持 (Ineffective Health Maintenance)」や「
セルフケア不足症候群 (Self-Care Deficit Syndrome)」が該当。看護介入では、動作を細かく分解した口頭指示や、手を添えたガイド(手がかり)が有効です。
暗記のコツ: 「失行=行いを失う」→「やり方がわからない」と覚えましょう。動作の「やり方(プログラム)」が消失するイメージです。「失認=認められない」→「何かはわかるけどそれが何かわからない」と対比して覚えると効果的です。
国試頻出ポイント: 高次脳機能障害の各症状(失語、失行、失認、記憶障害、遂行機能障害)を具体的な患者行動と結びつけて問う問題が頻出です。特に、日常生活動作 (ADL) の場面(更衣、食事、買い物、入浴)での具体的な失敗例が選択肢として出題されます。