核心解説
この問題は、
脳血管障害 (Cerebrovascular Disease) による
右片麻痺 (Right Hemiplegia) 患者の
車椅子座位 (Wheelchair Sitting Position) における食事動作の安定化を問うています。
最重要! 患者さんは体幹の筋力低下とバランス障害により、時間経過とともに上体が右側(麻痺側)に傾いてしまいます。安定した座位を確保するための看護援助のポイントは、
骨盤の前傾を促し、体幹を生理的前弯位に導くことです。これにより、重心が安定し、頸部の前屈姿勢が取れることで、
誤嚥 (Aspiration) の予防にもつながります。
正解の根拠 (Answer Rationale):
最重要! ③「背部にタオルを入れ軽く前傾姿勢にする」が正解です。車椅子座位で体幹が傾く原因は、多くの場合
骨盤後傾 (Posterior Pelvic Tilt) にあります。骨盤が後傾すると背中が丸まり、重心が後方に移動し、麻痺側への傾きが強まります。背部(特に骨盤の後方)にタオルを入れることで骨盤の前傾を促し、体幹を伸展させます。これにより頸部が軽度前屈し、
咽頭 (Pharynx) の通り道が確保され、嚥下がしやすくなります。
誤答の分析 (Distractor Analysis):
①
混同注意! 「座位時間を徐々に短縮する」は誤りです。問題文では「時間が経過すると上体が右側に傾く」とありますが、これは筋持久力の問題です。座位時間を短縮するのではなく、適切なポジショニングで安定性を高めるべきです。また、離床と座位耐久性の向上はリハビリテーションの目標であり、短縮はかえって廃用症候群を促進します。
② 「テーブルの高さを高くする」は誤りです。テーブルが高すぎると、患者は肩をすくめたり、体幹を過度に伸展させてしまい、かえって不安定になります。適切な高さは、肘が90度に曲がり、前腕がテーブルに置ける高さです。
④ 「Aさん自身で左側に重心を傾けるよう指導する」は誤りです。
混同注意! 患者さんの
左側 (非麻痺側) は、
注意障害 (Unilateral Neglect) のリスクは低いものの、無理に非麻痺側へ重心を移動させる指示は、バランスを崩す原因となります。正しいアプローチは、麻痺側を適切に支持し、正中位でバランスを取ることです。
関連概念の整理 (Related Concepts):
・
混同注意! 片麻痺患者の車椅子座位 と
高齢者の椅子座位 の違い:片麻痺患者では麻痺側の肩甲骨・骨盤の後退と非麻痺側への重心偏位が問題。高齢者一般では脊柱後弯による骨盤後傾が主問題。
・
誤嚥予防 (Aspiration Prevention) の基本姿勢:頸部前屈(軽度うつむき位)が最も安全。頸部伸展(あごを上げる)は気道を開くが、誤嚥リスクが高まる。
概念整理: 安定した車椅子座位に必要な3要素:(1)
骨盤の前傾 (Anterior Pelvic Tilt)、(2)
体幹の伸展 (Trunk Extension)、(3)
頸部の軽度前屈 (Mild Neck Flexion)。これらが揃うことで、重心が安定し、上肢が自由に動かせるようになります。
一目で比較!:
| 介入方法 | 効果 | リスク/注意点 |
|---|
| 背部にタオル(骨盤後方) | 骨盤前傾を促し体幹安定 | 入れすぎると過伸展に注意 |
| 麻痺側(右側)にクッション | 側方への傾きを物理的に防止 | 単独では骨盤後傾が改善されない |
| テーブル高を調整 | 上肢の支持面を提供 | 高すぎ/低すぎは逆効果 |
看護過程ポイント:
アセスメント:座位時の骨盤の位置(後傾していないか)、仙骨部の皮膚状態、頸部の角度(前屈・伸展どちらか)、麻痺側の肩甲骨の後退の有無を観察。
計画:適切なポジショニンググッズ(クッション、タオル、座位保持用ベルト)の選択と使用。
実施:患者さんの疲労度に応じて休憩を挟みながら、30分程度の座位から開始し、徐々に延長。
評価:食事中のむせ込みの有無、食事摂取量、患者さんの「食べやすい」という主観的評価。
暗記のコツ: 「骨盤が後ろに倒れると、背中が丸まり、あごが上がる(頸部伸展)→ 誤嚥リスクUP!」逆に「骨盤を前傾にすると、背筋が伸び、あごが引ける(頸部前屈)→ 誤嚥予防&安定座位」。この因果関係を覚えましょう。
国試頻出ポイント: 脳卒中後の片麻痺患者の
食事援助 (Feeding Assistance) と
ポジショニング (Positioning) は、
最重要! 看護師国家試験で頻出です。特に「座位が不安定」「時間経過で傾く」という状況設定で、どのようにポジショニングを調整するかが問われます。また、
誤嚥予防の観点から、頸部前屈の重要性も併せて出題されやすいです。
出題パターン注意!: 単純な「片麻痺患者の車椅子座位で正しいのはどれか」から、「この事例のAさんに適切な食事時のポジショニングはどれか」といった事例問題に発展。さらに「座位が30分で傾いてしまう。看護師の対応として適切なのはどれか」と、時間経過による変化への対応を問う問題にも対応できるようにしておきましょう。