核心解説
この問題は、
腹腔鏡下胆嚢摘出術 (Laparoscopic Cholecystectomy) における
気腹法 (Pneumoperitoneum) の生理学的影響を問うています。
最重要! 気腹法では、手術の視野を確保するために炭酸ガス(CO₂)を腹腔内に注入します。この操作が体内に及ぼす影響を正しく理解することが、術中看護の根幹となります。
1.
核心概念の分析 (Key Concept): 気腹により腹腔内圧が上昇します。すると、
横隔膜が頭側へ圧排され、肺の拡張が制限されます(換気制限)。さらに、注入されたCO₂が腹膜から血中に吸収されるため、
高二酸化炭素血症 (Hypercapnia) をきたしやすくなります。
2.
正解の根拠 (Answer Rationale): 選択肢④が正解です。CO₂の吸収と換気量の低下により、
動脈血二酸化炭素分圧 (PaCO₂) の上昇が最も生じやすい生理学的変化です。そのため、術中は分時換気量を増やすなどの呼吸管理が必要となります。
3.
誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ①体温の上昇: 腹腔鏡手術は開腹手術に比べて低侵襲であり、術中に体温が上昇することは稀です。むしろ、麻酔やクールなCO₂ガスの注入により
低体温 (Hypothermia) をきたすリスクがあります。②心拍出量の上昇: 気腹による腹腔内圧上昇と頭低位(トレンデレンブルグ体位)は、
静脈還流量を減少させ、結果として心拍出量はむしろ低下傾向を示します。③腹腔内圧の低下: 気腹法では腹腔内圧を約8~12mmHgに維持するため、腹腔内圧は「低下」ではなく「上昇」します。
4.
関連概念の整理 (Related Concepts): 気腹による影響は呼吸器系だけではありません。腹腔内圧上昇は
下肢静脈還流の阻害による深部静脈血栓症(DVT)リスクや、迷走神経反射による徐脈(腹腔鏡手術中の不整脈)にも注意が必要です。
概念整理: 気腹法(Pneumoperitoneum)は、炭酸ガス(CO₂)注入により①横隔膜を圧排(換気制限)し、②CO₂を腹膜から吸収させる。この2つのメカニズムが
高二酸化炭素血症(PaCO₂上昇) を引き起こす。
一目で比較!:
| 項目 | 腹腔鏡手術(気腹法) | 開腹手術 |
|---|
| 呼吸への影響 | 横隔膜圧排 + CO₂吸収 → PaCO₂上昇 | 術後創部痛による呼吸制限が主 |
| 循環への影響 | 腹腔内圧上昇 → 静脈還流低下 → 心拍出量低下 | 麻酔による血管拡張、出血による循環変動 |
| 体温 | 低体温リスク(クールガス注入) | 術野露出による低体温リスク |
看護過程ポイント: 術中の看護師は、
パルスオキシメーター(SpO₂) と
カプノグラフィ(EtCO₂) をモニタリング。EtCO₂の上昇はPaCO₂上昇の早期発見に有用です。異常な上昇時は、医師に報告し、換気回数増加や気腹圧の低下を検討します。
暗記のコツ: 「気腹(きふく)」→「腹に気(CO₂)を入れる」→「横隔膜が押されて息がしにくい」+「CO₂が血に溶けてPaCO₂が上がる」とストーリーで覚えましょう。
国試頻出ポイント: 腹腔鏡下手術の合併症として、
最重要! 皮下気腫、ガス塞栓、高二酸化炭素血症、不整脈が頻出です。特に本問のように「気腹法の生理的影響」は毎年必ずと言っていいほど出題されます。