一般・状況設定問題
問題
このとき、訪問看護師が転倒予防のために収集する情報として最も適切なのはどれか。
Aさん(73歳、女性)は1人で暮らしており、脳梗塞で入院した。Aさんは左半身に麻痺があり、認知機能障害はない。4点杖を使用して歩行が可能となり、住宅改修をして自宅に退院した。退院後は、降圧薬と抗血栓薬が処方され、服薬管理と健康管理の目的で訪問看護を週1回、調理と買い物代行の目的で訪問介護を週1回利用している。Aさんは「昨日、退院して初めて1人で買い物に行ったら転びそうになって、横にいた人に支えてもらったんです」と訪問看護師に話した。
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1
服薬の状況
✓ 正解
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2
食事の摂取量
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3
右上下肢の筋力
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4
他者との交流の頻度
解説
Aさんは降圧薬を内服しており、外出時のふらつきや転倒の要因として薬剤性低血圧(起立性低血圧など)の可能性があるため、まずは服薬状況と体調の変化を確認することが重要です。
詳細解説
核心解説
この問題は、脳梗塞後遺症で左半身麻痺があり、在宅で生活する高齢者の転倒予防アセスメントを問うています。特に、退院後初めての外出で「転びそうになった」というエピソードを手がかりに、転倒のリスク因子を特定し、優先的に収集すべき情報を選択する能力が求められています。転倒予防は、高齢者の在宅療養を継続する上で最も重要な看護介入の一つです。最重要! 転倒の原因は多因子ですが、特に本症例では服薬状況の確認が最優先となります。
1. 核心概念の分析 (Key Concept): 転倒 (Fall) は、内的要因(加齢による筋力低下、バランス障害、疾患、薬剤の影響)と外的要因(環境、履物、照明)が複合的に作用して発生します。本症例では、降圧薬と抗血栓薬の内服、左半身麻痺、退院後の生活環境変化という複数のリスク因子が存在します。退院後初めての外出での「転びそうになった」という情報は、見過ごせない重大なサインであり、緊急性の高いアセスメントが必要です。
2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 正解は①番「服薬の状況」です。Aさんは降圧薬を服用しており、薬剤性低血圧 (Drug-induced Hypotension) や起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension)を起こしやすい状態です。特に、退院後は自宅での活動量が増え、それまで病院で看護師が確認していた服薬後の血圧変動を自己管理する必要があります。転倒の原因として最も疑わしいのは、降圧薬の影響による血圧低下であり、まずは「いつ、どの程度の量を内服しているか」「内服後にめまいやふらつきはないか」を確認することが最優先です。
3. 誤答の分析 (Distractor Analysis):
混同注意! ②番「食事の摂取量」は栄養状態や低血糖のリスク評価には重要ですが、転倒の直接的な原因として、今回のエピソードの直後では優先度は高くありません。③番「右上下肢の筋力」は、麻痺側(左側)ではなく健側の筋力評価ですが、転倒エピソードの原因が薬剤性低血圧である可能性が高い現状では、筋力評価よりも先に服薬状況を確認すべきです。④番「他者との交流の頻度」は社会的孤立の評価には有用ですが、転倒予防の観点からは、今回のエピソードの原因究明には直接結びつきません。
4. 関連概念の整理 (Related Concepts): 転倒予防アセスメントの優先順位は、「即時対応が必要な原因の特定」が第一です。薬剤(特に降圧薬、睡眠薬、抗うつ薬)の影響は最も一般的で修正可能なリスク因子です。次に、バイタルサイン(座位・立位血圧)の測定、歩行状態の観察、環境アセスメントへと展開します。本症例のように「転びそうになった」という報告があった場合、看護師は直ちに原因を特定し、医師への報告(SBAR)と介入(服薬時間の調整指導、転倒予防策の強化)を行う必要があります。
概念整理: 転倒予防 (Fall Prevention) のアセスメントでは、内的要因(薬剤、疾患、身体機能)と外的要因(環境)を系統的に評価します。特に服薬管理は、看護師が直接介入できる重要な項目です。
一目で比較!: 転倒の原因としての「混同注意! 低血圧(降圧薬起因)」vs 「筋力低下(廃用性)」vs 「環境要因(段差・照明)」を鑑別し、それぞれに応じた介入戦略が異なります。
看護過程ポイント:
- アセスメント: 「いつ、どのような状況で転びそうになったか」を具体的に聴取。服薬(種類、用量、タイミング)と症状(めまい、ふらつき、動悸)の関連性を評価。血圧(座位・立位)を測定し、起立性低血圧の有無を確認。
- 看護診断: 「転倒リスク状態 (Risk for Falls)」、関連因子として「降圧薬の副作用(起立性低血圧)」「片側性身体機能障害(左半身麻痺)」
- 計画・介入: 医師へ状況を報告し、降圧薬の調整(内服時間の変更、減量)を相談。患者・家族への転倒予防教育(動作はゆっくりと、手すりの使用、転倒時の連絡方法)。
暗記のコツ: 「転んだら、まずはクスリ!」と覚えましょう。高齢者の転倒では、まず薬の影響(特に降圧薬・睡眠薬)を疑うのが鉄則です。
国試頻出ポイント: 在宅看護論の転倒予防問題では、「退院直後」「初めての外出」「降圧薬内服」「めまい・ふらつき」というキーワードが頻出です。事例からリスク因子を特定し、優先すべき情報を選べるようにしておきましょう。
臨床シナリオ
臨床実践ガイド
臨床シナリオ (Clinical Scenario): あなたは訪問看護師です。本症例のAさんを訪問し、転倒エピソードを聞きました。Aさんは「朝食後に血圧の薬を飲んで、すぐに買い物に行ったんです。お店に着いたら急に目の前が暗くなって…」と話しました。
看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment):
1. 観察: バイタルサイン(血圧、脈拍)を座位と立位で測定。座位血圧132/78mmHg、立位血圧98/62mmHgと立位で有意な低下を確認。最重要! 起立性低血圧と判断。
2. アセスメント: 降圧薬の内服後、急な動作(立ち上がり、歩行)で血圧が低下したと考えられる。
3. 報告(SBAR): 医師へ「S: 退院後初めての外出で転びそうになった。S: 起立性低血圧が疑われる。B: 内服後に収縮期血圧34mmHg低下。A: 服薬時間の変更や減量の検討を依頼。」
4. 介入: 医師の指示に基づき、服薬時間を就寝前に変更。患者教育として「服薬後は30分~1時間は安静にし、立ち上がる時はゆっくりと、手すりや杖を必ず使用する」ことを指導。訪問介護職員にも情報共有し、外出時の付き添いを依頼。
患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 降圧薬内服中の患者には、起立性低血圧のリスクを必ず説明し、内服後の行動制限を指導。転倒による骨折(特に大腿骨頸部骨折)は寝たきりの原因となるため、予防が最優先。
看護プロトコル: 転倒エピソードを聞いたら、まず服薬状況(種類、用量、内服時間)、バイタルサイン(座位・立位血圧)、症状(めまい、眼前暗黒感)を記録。SBARで医師に報告し、指示を仰ぐ。訪問看護記録には、指導内容と患者の反応を具体的に記載。
先輩看護師の一言: 「この問題、まさに在宅看護の現場でよくある事例です!患者さんが『転びそうになった』と話してくれたのは、信頼関係がある証拠。その一言を聞き逃さずに、まずは『お薬の影響かな?』と考えるのが、プロの看護師です。国試の勉強でも、『なぜこの情報が必要か』を常に考えてくださいね!」
重要概念
- 転倒 — 高齢者が転倒し、骨折などにより寝たきりになるリスクが高まるため、予防が最重要課題の一つ。
- 起立性低血圧 (Orthostatic Hypotension) — 座位から立位への姿勢変化に伴い、収縮期血圧が20mmHg以上低下する状態。降圧薬の副作用で起こりやすい。
- 薬剤性低血圧 (Drug-induced Hypotension) — 降圧薬などの薬剤の作用によって引き起こされる低血圧。特に高齢者では感受性が高く注意が必要。
- 転倒リスク状態 (Risk for Falls) — NANDA-I看護診断の一つ。転倒しやすくなる状態で、予防的介入が必要であることを示す診断ラベル。
- SBAR — 医療現場で用いられる情報伝達ツール。Situation(状況)、Background(背景)、Assessment(アセスメント)、Recommendation(提案/指示)の頭文字を取ったもの。
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