核心解説
この問題は、精神看護学における重要な心理社会的介入である
社会生活技能訓練 (Social Skills Training: SST)の本質を理解しているかを問うています。SSTは、対人関係や社会生活に必要なスキルを獲得するための訓練であり、その理論的背景と実践方法を正しく把握することが鍵となります。
核心概念の分析 (Key Concept)
社会生活技能訓練 (SST)は、統合失調症 (Schizophrenia) をはじめとする精神疾患を持つ患者の社会機能の向上を目的とした、
認知行動療法 (Cognitive Behavioral Therapy: CBT)の理論に基づく心理社会的介入です。具体的な対人場面を想定した
ロールプレイ (Role-play) やモデリング (Modeling) を通じて、実際の生活で役立つ具体的なスキル(例:あいさつ、依頼、断り方)を段階的に学習します。
正解の根拠 (Answer Rationale)
① 認知行動療法の1つである。
正解です! SSTは、認知行動療法の理論を基盤としています。特に、行動理論における
社会的学習理論 (Social Learning Theory)(観察学習やモデリング)と、認知療法の考え方(状況の捉え方や考え方の修正)を統合し、練習と強化を通じて行動変容を促します。この点をしっかりと押さえましょう。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
② 生活リズムの改善が目的である。
混同注意! 生活リズムの改善は、主に
生活療法 (Life Therapy) や
日常生活技能訓練 (Life Skills Training) の目的です。SSTの主目的は、対人関係や社会生活を円滑にするための具体的な「スキル」の習得であり、睡眠・覚醒リズムや食事の習慣といった生活パターンそのものの改善を直接の目的とはしません。
③ レクリエーション活動を中心に行う。
混同注意! レクリエーション活動は、患者同士の交流や気分転換、集団への参加を促す目的で行われますが、SSTの中心的な手法は
ロールプレイ を用いたスキル訓練です。レクリエーションは精神科デイケアなどで実施されますが、SSTとは目的と手法が異なります。
④ アウトリーチによる支援が原則である。
混同注意! アウトリーチ (Outreach) は、訪問看護や訪問支援のように、支援が必要な患者の自宅などに出向いて行う支援形態です。SSTは、主に病棟やデイケアなどの
施設内 で、グループまたは個別に実施されることが一般的であり、アウトリーチが原則ではありません。
概念整理 社会生活技能訓練 (SST)は、認知行動療法に基づき、
ロールプレイを用いて対人スキルを訓練する心理社会的介入である。
一目で比較!
| 介入法 | 主な目的 | 主な手法 |
| 社会生活技能訓練 (SST) | 対人スキルの習得と向上 | ロールプレイ、モデリング |
| 生活療法 | 生活リズムの改善、基本的生活習慣の確立 | 行動スケジュール表、規則正しい生活 |
| レクリエーション療法 | 気分転換、交流促進、活動性向上 | ゲーム、スポーツ、創作活動 |
| アウトリーチ支援 | 地域生活の継続支援、孤立防止 | 訪問による相談、生活指導 |
看護過程ポイント
-
アセスメント: 患者の対人関係の困難さ、具体的な場面での苦手なスキルをアセスメントする(例:買い物で店員に話しかけられない、電話をかけられない)。
-
看護診断:
社会的相互作用の障害 (Impaired Social Interaction)、
役割遂行の障害 (Ineffective Role Performance) などが考えられる。
-
計画・実施: 患者の目標に合わせた具体的な場面を設定し、モデリング、ロールプレイ、フィードバック、ホームワークを段階的に行う。
-
評価: 実際の生活場面で習得したスキルが活用できているか、自己効力感が向上しているかを評価する。
暗記のコツ
SSTの「S」は「Social(社会的)」な「Skill(技能)」の「Training(訓練)」です。「対人スキルを練習する」と覚え、「認知行動療法」の理論に基づくことをセットで記憶しましょう。「ロールプレイ(役割演技)」というキーワードも必ずセットで。
国試頻出ポイント
- 「SSTの目的は?」→「対人スキルの向上」
- 「SSTの理論的基盤は?」→「認知行動療法(特に社会的学習理論)」
- 「SSTの手法は?」→「ロールプレイ」
- 上記のポイントは、他の精神科リハビリテーション(作業療法、レクリエーション、生活療法など)と混同しないように、各介入の「目的」と「手法」を比較して整理しておくことが合格への近道です。
出題パターン注意!
近年の国試では、SSTの目的や手法を直接問う知識問題に加え、「統合失調症患者の退院後の生活を見据えた看護計画」といった状況設定問題の中で、「退院後の社会生活を見据え、対人スキル向上のためにSSTを計画する」という形で出題されることもあります。看護過程と連動して学習しておきましょう。