核心解説
この問題は、
急性期の生体反応 (Acute Phase Biological Response)、特に手術や外傷などの侵襲(ストレス)に対する
神経内分泌反応 (Neuroendocrine Response)を問うています。生体は恒常性を維持するために、侵襲に対して防御反応を示します。これを理解することが鍵となります。
正解の根拠 (Answer Rationale)
急性期の侵襲時には、交感神経-副腎髄質系が活性化されます。これにより、
カテコールアミン (Catecholamine)(アドレナリン、ノルアドレナリン)の分泌が亢進します。
最重要! これにより心拍数増加、血圧上昇、気管支拡張、血糖上昇などの「闘争・逃走反応」が引き起こされ、生体のエネルギー動員と生命維持が図られます。
誤答の分析 (Distractor Analysis)
①番「エネルギー代謝が低下する」:
混同注意! カテコールアミンと糖質コルチコイド(コルチゾール)の作用により、エネルギー代謝はむしろ
亢進します。
②番「蛋白質の同化が異化を上回る」:急性期は異化(Catabolism)が亢進し、筋タンパク質が分解されてアミノ酸が糖新生に利用されます。同化(Anabolism)が異化を上回るのは回復期です。
④番「抗利尿ホルモン〈ADH〉の分泌が低下する」:侵襲時にはADH(バソプレシン)分泌が亢進し、尿量が減少します。これは循環血液量の維持に重要な反応です。
関連概念の整理 (Related Concepts)
急性期の生体反応は、大きく分けて「交感神経-副腎髄質系」と「視床下部-下垂体-副腎皮質系 (HPA axis)」の2つが関与します。前者はカテコールアミン、後者はコルチゾール分泌を促します。また、ADHやアルドステロンも水分・電解質バランス維持に重要な役割を果たします。
概念整理:
侵襲に対する生体反応(急性期)
| 項目 | 反応 | 主なホルモン/神経 |
| 心拍数・血圧 | 上昇 | カテコールアミン |
| エネルギー代謝 | 亢進(血糖上昇) | カテコールアミン、コルチゾール、グルカゴン |
| 蛋白質代謝 | 異化亢進(筋分解) | コルチゾール |
| 体液量 | 維持(尿量減少) | ADH、アルドステロン |
| 免疫反応 | 炎症反応(サイトカイン放出) | プロスタグランジン、インターロイキン |
一目で比較!:
| 時期 | 代謝の特徴 | 看護のポイント |
| 急性期(侵襲直後) | 異化優位、エネルギー消費大 | バイタルサイン安定化、安静、栄養補給(経静脈)の準備 |
| 回復期 | 同化優位、組織修復 | 経口摂取促進、リハビリ開始、創傷治癒促進 |
看護過程ポイント:
アセスメント:術後や外傷後の患者では、バイタルサイン(特に血圧・心拍数)の変動、尿量減少、高血糖、創部の炎症所見を観察します。侵襲に対する反応が過剰か、正常範囲かを判断します。
看護診断:「非効果的組織灌流」「体液量不足リスク」「感染リスク」などが優先されます。
介入:輸液療法 (Fluid Therapy)、疼痛管理、バイタルサインの頻回測定、安静の確保、感染予防策を実施します。
暗記のコツ: 「急性期=
カテコールアミン↑」と覚えましょう。そして「急性期は
戦う・逃げるモード」とイメージすると、エネルギー代謝亢進やADH分泌亢進(水分貯留)も連想しやすくなります。ストレス時は「すべてが
亢進・上昇・増加」と考えると、誤答である「低下」や「減る」という選択肢は除外できます。
国試頻出ポイント: 急性期の生体反応は、術後看護、外傷看護、ショック状態の理解など、さまざまな分野に応用される基礎知識です。カテコールアミン、コルチゾール、ADHの3つのホルモンとその作用は必ず押さえてください。また、この反応が遷延すると「消耗期」に移行し、筋萎縮や免疫力低下を招くことも覚えておきましょう。
出題パターン注意!: 単純知識問題に加えて、「術後3日目の患者のデータから、侵襲反応の遷延(消耗期への移行)を判断する」といった状況設定問題への発展が予想されます。例えば「低アルブミン血症、遷延する高血糖、体重減少」などがあれば消耗期を疑う、といった応用力が求められます。