受診に同行していた母親からは「Aから『私の代わりに鍵が閉まっているか見てきてほしい』といった要望が多い。それに従わないと… | MyMerci
一般・状況設定問題
問題

受診に同行していた母親からは「Aから『私の代わりに鍵が閉まっているか見てきてほしい』といった要望が多い。それに従わないと『どうして私のつらさを分かってくれないの』と大きな声を出す。どのように関わればよいか分からない」と看護師に相談があった。母親への看護師の対応で適切なのはどれか。

Aさん(24歳、女性)は大学卒業後、一般企業に就職したが、何度も自宅の鍵を閉めたかどうかを確認するため、遅刻を繰り返した。連絡せずに複数回の遅刻があったことを上司のBさんから強く注意され、うつ状態となったため精神科外来を受診したところ、強迫性障害と診断され、選択的セロトニン再取り込み阻害薬〈SSRI〉が処方された。
解説
強迫性障害の患者が、家族に確認行為を肩代わりさせることを「巻き込み」といいます。家族が要望に応じ続けると症状を悪化させる原因になります。まずは母親が強迫性障害という「疾患や巻き込みについてどう理解しているかを確認」し、その上で適切な対応方法を心理教育していくことが重要です。

詳細解説

核心解説 この問題は、強迫性障害 (Obsessive-Compulsive Disorder, OCD) における家族の「巻き込み (Family Accommodation)」への看護介入を問うています。Aさんの母親は、娘の強迫行為(鍵の確認)を肩代わりさせられ、対応に苦慮しています。看護師は、まず母親が 疾患(強迫性障害)と巻き込み行動の悪循環 をどの程度理解しているかを評価することが、適切な心理教育と支援の第一歩となります。 1. 核心概念の分析 (Key Concept): 強迫性障害 (OCD) は、不合理と分かっていながらも繰り返し浮かぶ思考(強迫観念)と、その不安を打ち消すために繰り返さずにはいられない行為(強迫行為)を特徴とします。Aさんの場合、「鍵が閉まっているか」という強迫観念に対し、「確認する」という強迫行為を行っています。母親に確認を依頼するのは「巻き込み」と呼ばれ、家族がこれに応じることで一時的に患者の不安は軽減しますが、長期的には強迫症状を悪化・固定化させるため、治療の妨げになります。 2. 正解の根拠 (Answer Rationale): 最重要! 介入の優先順位は、まず「母親の疾患理解度のアセスメント」です。母親が強迫性障害の病態や、自身の「巻き込み」行動が症状に与える悪影響を全く理解していない可能性があります。③「母親が疾患をどのように理解しているか確認する」ことで、現状の知識レベルを把握し、その後の具体的な対応方法(心理教育、曝露反応妨害法〈ERP〉の基本的な考え方、家族の負担軽減策など)を段階的に指導する基盤ができます。 3. 誤答の分析 (Distractor Analysis): 混同注意! ①要望に応じ続けると、母親の負担増大と症状の慢性化を招き、逆効果です。治療の基本は「巻き込み」を減らすことです。 ②SSRIの効果発現には通常2~4週間かかり、それまで何もしないのではなく、早期からの心理社会的介入(家族指導を含む)が重要です。「待つ」だけでは母親のストレスは増大します。 ④Aさんが大声を出しても「無視」することは、患者の不安を増強させ、行動をエスカレートさせる可能性があります。反応しないのではなく、落ち着いた口調で「今はできません」と伝え、代替行動(例:リラクセーション法)を促すなど、一貫性のある対応が必要です。 4. 関連概念の整理 (Related Concepts): - 曝露反応妨害法 (Exposure and Response Prevention, ERP): 強迫性障害の認知行動療法の中心技法。あえて強迫観念に曝露し、強迫行為をしないことを練習します。 - 心理教育 (Psychoeducation): 患者と家族に疾患の病態、治療法、再発予防について正しい知識を提供すること。 - 強迫性障害の治療: 薬物療法(SSRI)と精神療法(ERP)の併用が第一選択。 概念整理: 強迫性障害 (OCD)家族の巻き込み (Family Accommodation)。家族が強迫行為に加担することで、患者の一時的な不安は減るが、症状は悪化する。家族への 心理教育ERPの導入支援 が重要。 一目で比較!:
状態家族の対応(不適切)家族の対応(適切)
巻き込み(例:確認要求)要求に応じて確認する(症状を強化)「お母さんはしないね」と伝え、一緒にERPを行う
大声・怒り無視する / 逆上する(不安・混乱を増大)落ち着いた口調で「今はできません」と伝え、気をそらす
看護過程ポイント: - アセスメント: 患者の強迫観念と強迫行為の内容、頻度、トリガー。家族の巻き込みの程度と家族のストレス度。家族の疾患理解度。 - 看護診断: 非効果的対処 (Ineffective Coping)(患者・家族双方)、家族プロセスの変調(症状による)など。 - 計画・実施: 患者と家族への心理教育。巻き込みを減らすための具体的な行動計画の立案。必要に応じて認知行動療法(ERP)の導入支援。 - 評価: 強迫症状の変化、家族の負担感の軽減、巻き込み行動の減少。 暗記のコツ: 「巻き込みは症状の肥料」。家族が強迫行為に協力すると、症状がより大きく育ってしまうイメージで覚えましょう。 国試頻出ポイント: 強迫性障害では、「家族への心理教育」「曝露反応妨害法」の知識が頻出です。特に、家族がどのように症状に巻き込まれているかをアセスメントし、適切な介入を選択できるかが問われます。 出題パターン注意!: 単純な「巻き込みを防ぐ対応」を問うだけでなく、本例のように「まずは家族の理解度を確認する」という看護過程のアセスメント段階を問う問題が増えています。

臨床シナリオ

臨床実践ガイド 臨床シナリオ (Clinical Scenario): 精神科デイケアに通う強迫性障害の患者さん。自宅では母親に確認行為を強要し、母親が拒否すると「わかってくれない」と泣き叫ぶことがある。母親は「どう対応すればいいのか分からない。もう疲れた」と看護師に相談に来ました。 看護介入と判断戦略 (Nursing Intervention & Clinical Judgment): 1. 観察とアセスメント: まず、母親の表情や口調から疲労度と困惑度を評価します。「どのような状況で一番困っていますか?」とオープンクエスチョンで話を聴き、疾患の理解度と具体的な巻き込みの内容を把握します。 2. 報告と介入: 医師や心理士と情報共有し、一貫した対応方針を決定します。母親に対しては、「巻き込み」の悪循環を優しく説明します(例:「娘さんが不安を感じていることは事実ですが、お母さんが代わりに確認してしまうと、娘さんは『やっぱり確認しないとダメなんだ』と学習してしまい、症状が良くなりにくくなります」)。そして、具体的な代替行動(例:「確認を求められたら『お母さんはしないよ。一緒にリラックスする練習をしようか』と提案してみてください」)を伝えます。 3. 評価と継続支援: 母親の負担が軽減されたか、患者の症状に変化があるかを定期的に評価します。母親自身のストレスケア(カウンセリングやレスパイトケア)も重要です。 患者安全・注意事項 (Patient Safety & Precautions): 強迫行為を急に止めさせると、患者の不安が激増し、パニック発作や希死念慮のリスクが高まることがあります。家族には 「無理に止めさせない」「穏やかに、段階的に」 が鉄則であることを伝えましょう。 看護プロトコル: 観察項目(患者の不安レベル、強迫行為の頻度、家族の対応パターン)、報告基準(患者の症状悪化や家族の疲弊が顕著な場合)、記録のポイント(介入内容と患者・家族の反応、巻き込み行動の変化)。 先輩看護師の一言: 「強迫性障害の患者さんとその家族は、『症状の悪循環』と『対応への無力感』でとても苦しんでいます。看護師がまずすべきは、その苦しみを共感的に理解し、『なぜ今の対応が症状を悪くするのか』を根拠をもって伝えることです。焦らず、一歩ずつ。心理教育は決して『指導』ではなく、家族と一緒に考える『協働作業』だと思って接してください。」

重要概念

MyMerciで看護師国家試験を完全対策

過去問と詳しい解説を無料で。弱点を分析し、進捗を管理してより効率的に学習しましょう。

無料で始める

学習参考用です。実際の臨床は最新のガイドラインと所属機関のプロトコルに従ってください。